ジオテクノロジーズ八剱新社長が経営方針を発表、事業の柱を4本に…「SD Map+」の提供やマーケティング分野強化

ジオテクノロジーズ 代表取締役社長 CEO 八剱洋一郎氏
ジオテクノロジーズ 代表取締役社長 CEO 八剱洋一郎氏全 8 枚

ジオテクノロジーズは経営方針戦略説明会を7月5日に都内で実施した。4月に代表取締役社長CEOが八剱洋一郎氏に交代して以来、初の開催となる。

八剱社長は1978年のIBM入社以降AT&T、日本テレコム、SAPジャパンなど日本のICT(Information and Communication Technology)業界で長く経験を積んできたが、ジオテクノロジーズに投資するポラリス・キャピタル・グループ(以下ポラリス)との縁があってジオテクノロジーズの2代目社長を引き受けた。

社長就任にあたり新たに戦略を設定。まず同社の主要事業を「企業や自治体を顧客とするオートモーティブソリューション」「位置情報(GIS)プラットフォーム」「マーケティングソリューション」「消費者に直接提供するコンシューマーサービス」の4本柱とすることを定めた。オートモーティブソリューションでは、完全自動運転よりも安全運転支援に注力し、そのための地図データ「SD Map+」の提供を目指す。また、同社独自の人流データ収集・分析力を活かし、マーケティングビジネスを強化。さらにコンシューマーサービスでは新たなキーワードとして「今この瞬間のインサイト」を設定し、インサイトを捉えるためのソリューションを提供。顧客接点を増やしデータの重層化による価値向上を図る。

方針説明会では、それぞれの事業について八剱社長が詳細を説明した。

“自動運転のため”から“安全運転のため”の地図作りへ

オートモーティブソリューションに関して、ジオテクノロジーズは自動運転のための地図作りから安全運転のための地図作りへと舵を切る。従来の地図は人間が見るために情報を整理したものだ。しかしここ数年、自動運転の研究開発も進む中で、自動車そのものが地図を理解できないと安全な運転が不可能であるということに行き着いた。車が理解し得る地図情報というものは、通常の人間が見る地図より高精度でかつ別の要素、例えば交差点で自車の進行方向に対応した信号はどれか、どのレーンにいれば右折できるか、などの情報が入っていないと安全な自動運転に役に立たないことも分かってきた。ジオテクノロジーズとして、そういった情報を付加しながら安全運転のための地図を作り、オートモーティブソリューションを通じて多くの自動車メーカーへ貢献をしていくことを一つ目の柱とした。

完全自動運転のレベル5をゴールとする開発が進められていたが、一般道での自動運転の難しさが理解され、今オートモーティブ業界は一斉に「安全運転」に方向転換している。今までは業界を上げて自動運転に必要な高精度地図HD Map(ハイディフィニションマップ)を作ってきた。自動運転車がカメラやセンサーで自分の位置を認識し、かつ次にどちらに進めばいいか判断するためにはHD Mapが必要とされている。

HD Mapとは道路の形状、停止線や縁石、信号機や標識などの位置が数10cm程度の誤差で記録された、ほぼ現実世界を映した非常に精度の高い地図であり、計測や作成に多大なコストを必要とする。しかし自動運転を目指すのではなく、自動ブレーキやレーンキープ、車間キープ機能などいわゆるADAS機能の高度化により安全なクルマを目指すのであれば、HD Mapがなくとも従来カーナビなどで使われてきたSD Map(スタンダードマップ)に最小限の情報を加えたSD Map+(プラス)があれば実現できそうだと考えるようになってきている。SD Mapの道路はただの“線”であり、路線変更という概念はない。一方HD Mapの道路にはレーン情報があり、それぞれのレーンにどちらに曲がれるか、車線変更できるかどうかの情報も入っている。SD Map+の場合は、安全な車両の移動を実現するため交差点のところはかなり丁寧に情報を追加するが、まっすぐ走るだけの交差点間の道路情報は簡素化されている。車載カメラやセンサーでは認識できない「交差点を曲がった先がどうなっているか」の情報をSD Mapに付加することで、より安全な運転ができるシステムに貢献していく。

「トリマ」のデータ活用、マーケティングをさらに強化

マーケティングビジネスとしてはポイ活アプリ「トリマ」からの動態情報を利用する。ジオテクノロジーズの人流データにおける最大の特徴はその細かさであり、400万人のアクティブユーザーから10~20秒毎に位置情報が取得できる。またユーザーに対して位置情報と関連付けたインタビューも可能だ。これらの情報を活用してオートモーティブ、GIS、コンシューマーサービスに次ぐマーケティングソリューションという4本目の柱を作っていく。

例えば、自社の人流データを使って北陸新幹線が延伸したあとのゴールデンウィーク中の「敦賀」の人流を調査したが、移動のスピードなどから新幹線に乗っているかクルマで移動しているかの判別が可能であり、分析の結果、新幹線で来た人とクルマで来た人で訪問する観光スポットの傾向が異なることが分かった。この情報を使えば、新幹線で来た人とクルマで来た人、それぞれに対してどのように対応すれば効果的にマーケティングできるか、適切な判断ができるようになる。


《TECHNOCO 山本幸裕》

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