【スズキ スペーシアギア 新型】ユーザーから自然発生した「無骨かわいい」をデザインテーマにしたわけ

スズキ スペーシアギア 新型
スズキ スペーシアギア 新型全 11 枚

スズキは9月20日、『スペーシア』シリーズの第3となるモデル、『スペーシアギア』をモデルチェンジし販売を開始した。スーパーハイトワゴンならではの空間を活かし、SUV風のデザインをまとうことで人気モデルとなったスペーシアギア。新型はどのように進化したのか、開発責任者に聞いた。

スズキ スペーシアギア 新型

◆標準モデルとカスタムだけでは勝負にならなかった

先代となる2代目スペーシアがデビューしたのは2017年12月。そこから遅れること1年後の2018年12月に初代となるスペースギアがラインアップに加わった。開発責任者の鈴木猛介さん(スズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括)はスペーシアギアの立ち位置について、「スペーシアを真ん中にすると、カスタムはモノとしての上質さという価値を持っています。一方、ギアはライフスタイル的な価値を持たせたい。モノというよりはコトに近いような使われ方を意識しています」という。つまり、「アウトドア寄りのライフスタイルを求めている方たちに向けたクルマをしっかりと出したかった」ということだ。

実は2代目スペーシアの企画時点では、これまでと同様に標準モデルとカスタムしかなかったという。しかし、「初代の台数を見ると競合の半分以下ぐらいで、そこに初代と同様に2つ出したところで勝負ならないという大きな判断があった」。さらに台数を伸ばすために「全く周りがやっていないものを出そう」という案から企画がスタートし、2代目登場の1年後に追加されることになった。

新型スペーシアギアとスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括の鈴木猛介さん新型スペーシアギアとスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括の鈴木猛介さん

新型では、登場時期こそ遅れたものの、開発自体は3モデル同時進行だったという。そこでの作りわけは、基本的には先代の“底上げ”だった。特にギアの場合は、SUV風というだけでなく、アウトドアで使うことを考慮して、シートの撥水などをはじめ、機能面で他と差別化をおこなっている。

またリアシートにマルチユースフラップを追加。これを使うことでシートに置いた荷物が下に落ちないようにしたり、シート自体をよりフラットにすることも。これによりアウトドア道具も水平に載せることができる。「段差はある程度あってもいいけど、斜めなのは使いにくいという声から生まれました」とギア独特の装備だと説明した。

◆自然発生的に生まれた「無骨かわいい」

スズキ スペーシアギア 新型スズキ スペーシアギア 新型

こうした機能面のアップデートをおこないながらも、「新型の肝」だったのはデザインだった。「先代は今までにないタイプで出せてはいるものの、もっと表現する方法があったんじゃないかなという思いもあった。どういうお題をデザイナーに渡せるかが今回の肝だった」と鈴木さんは語る。

そのお題のキーワードとなったのが「武骨かわいい」。これはスズキが発信したわけではなく、先代スペーシアギアを見たユーザーから自然発生的に生まれたワードだった。「僕らが表現しきれなかったところをうまく表していただいた」と鈴木さんは話す。そこでデザインについては「武骨かわいいをもっと武骨かわいくする」という方向性が決まったが、デザイナーに対しては「あまり制限はしなかった」という。「作り手が楽しく作らないと楽しいクルマにならないですから。このキーワード(武骨かわいい)だけはあるんですが、あとは比較的フリーでした」。

デザイナーからも多くの提案があった。普通に考えればコストがかかるためNGなものでも、スペーシアギアの商品力を高めるためのアイデアがいくつも盛り込まれたという。フロントとリアバンパー下にあるスキッドプレートやサイドのGEARと書かれたエンブレムなどがそれだ。「必要なものは、それを成立させるためにコストは企画で考える」と決意し進めた。その結果、「デザイン側からこれの方がギアとして良いでしょうという説得をしてくれた。これはお題に対する良い反応だったと思っています」。

スズキ スペーシアギア 新型スズキ スペーシアギア 新型

反対に、スペーシアギアとして「変えてはいけないところ」は無骨かわいいの最大の特徴である丸目ヘッドライトだった。丸目を生かしたデザイン案にはグリルが黒くないものもあったが、それだと「ギアではなくなってしまう」。ブラックアウトされた中に丸目があり、メッキが入ることで「無骨かわいい」スズキのクルマを表現した。

鈴木さんがギアのデザインにここまでこだわったのはユーザーからの反応からだった。「インスタグラムなどにアップされているスペーシアの写真は、カスタムとギアを見比べると、カスタムはクルマとして(主人公のように)写されていて、ギアは大きなアウトドアシーンの中に道具のひとつとして写されている。大事な道具のひとつとしてポジションを持っているんです。存在感はあるけど、それだけが中心にならないというところが立ち位置であり、お客様が求めていたものだった。そこに(スペーシアギアが)はまったのでしょう。『映える』というのはこういうことなのか、とデザイナーたちと受け止めました」と語る。

スズキ スペーシアシリーズ。中央が新型スペーシアギアスズキ スペーシアシリーズ。中央が新型スペーシアギア

◆スズキにはジムニーがある

「スズキの顔」といえばスズキには『ジムニー』という本格四駆がある。SUVライクな軽としても『ハスラー』があり、アクティブな軽の選択肢が多いのがスズキのラインアップの特徴だ。だからこそスペーシアギアのポジションもわかりやすい。

「本当に山へ入りたければジムニーがありますので、そこは任せればいい。(スズキは)そういう選択肢を持っていますので、(スペーシアギアは)そこまで行かないけれどもアウトドアシーンでは自由に使えるかなというイメージですね。ですから無理に走破性を高める必要もなく、そういうところもよかったと思います」

そんなスペーシアギアは車体色や色表現についても「遊び」が盛り込まれたそうだ。「全部新色ではないんですが、多くのレパートリーの中からいろんな表現をして、お客様に提案できるように作っているのもギアなりの面白みです」と鈴木さんは話す。

「スペーシアやカスタムは人気色がありますが、ギアは均等に色が分散するんです。自分のライフスタイルに合う色を自らチョイスしていただけていると思っています。ですからマイナーチェンジするときにやめる色を選ぶのに困るんですよ。不人気色がないんです」と打ち明けた。

スズキ スペーシアギア 新型スズキ スペーシアギア 新型

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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