【ジープ アベンジャー】ファミリーの末っ子は正義の味方だっ…その理由はたくさんある

ジープ アベンジャー
ジープ アベンジャー全 11 枚

ステランティスジャパンはジープブランド初となるBEVとなる『アベンジャー』を発表した。そのデザインにはこれまでのジープを彷彿とさせるモチーフなどが用いられている。

◆レネゲードよりもさらにコンパクト

そもそもジープブランドのラインナップを俯瞰すると大きく2つの流れがある。そのひとつは「“おじさん”の『ラングラー』率いるスクエアなフォルムが特徴的なモデルたち。もうひとつは“お父さん”の『グランドチェロキー』を軸としたグループ」と説明するのは、ステランティスジャパンでジーププロダクトジェネラルマネージャーを務める渡邊由紀さんだ。

ジープブランドのラインナップジープブランドのラインナップ

今回導入するアベンジャーは、グランドチェロキーなどのグループに属し、「ジープブランドのエントリーとして誕生」。アベンジャーという名前は、「不正や悪事を行った人に報復する人、つまりジープファミリーの末っ子は正義の味方、“アベンジャー”として誕生した」と述べる。

そのサイズはこれまでのエントリーモデル、『レネゲード』よりもさらにコンパクトで、全長4.1mとレネゲードよりも15cmほど短いことなどから、「より女性に多くアピールできると確信している」と話す。

ステランティスジャパンでジーププロダクトジェネラルマネージャーを務める渡邊由紀さんステランティスジャパンでジーププロダクトジェネラルマネージャーを務める渡邊由紀さん

アベンジャーは2023年1月より欧州向けに生産・販売が開始されており、欧州カーオブザイヤー2023を受賞するとともに、受注は、「10万台を超える(BEV、MHEV、ガソリン車含む)非常に好調な販売を記録」するなど好調であることをアピールした。

◆デザインからも感じるジープらしさ

ステランティスグループHead of Global Product, Jeep Brandのマット・ナイクイストさんは、ジープのブランド戦略について、「コアを守り、リーチを広げるというもの」とコメントする。コア、つまり核にあるのは1941年のオリジナルからほぼ変わらない2ドアのラングラーと位置付ける。「走破性に優れ、まさにアイコンとなったラングラーは、ジープラインナップに加わる全ての新機種に影響をもたらし続ける」という。

ステランティスグループHead of Global Product, Jeep Brandのマット・ナイクイストさんステランティスグループHead of Global Product, Jeep Brandのマット・ナイクイストさん

そしてリーチを広げるために、「より多くのお客様にジープの新しいモデル、パワートレイン、電動化技術を新しい地域や市場にもお届けする」と述べる。これが成長に繋がるのだ。さらにジープブランドが標榜する“フリーダムオブチョイス”と呼ばれているマルチエネルギー戦略を挙げ、「お客様が多くのパワートレインの選択肢から、自身のニーズや要望、ライフスタイルに基づいて選ぶことが可能となる。内燃機関からハイブリッド、プラグインハイブリッド、そして最終的には四輪駆動も可能とするBEVまで多種対応となっている」とした。

そうした戦略の中でBEVのアベンジャーが登場したわけだが、前述のコア部分はどう反映されているのか。そのひとつはデザインだ。「ボディがコンパクトとなり、同時にオーバーハングも短くなっている。この結果、オフロードでも都市部でも取り回ししやすくなっている」という。また、大径タイヤを装備し地上高も高くされ、さらにデパーチャーアングルやアプローチアングルなども十分に確保することで、「タフで難しい悪路から街中での駐車場からのアプローチなども安心して走れるようにしている」と話す。

ジープ アベンジャージープ アベンジャー

そしてサイドからアベンジャーを見ると、「オリジナルのジープを思わせる非常に強いラインがある」とマットさん。「ホイールアーチを台形にすることでタイヤとのクリアランスを最大化するとともに、ジープらしいデザイン要素を組み込んでいる」と説明。例えばフロントフェンダーのラインはオリジナルのジープを彷彿とさせ、それは、ボディ中央からリアでキックアップしながら抜けるラインもジープのキャビンからリアへ抜けるラインをイメージさせている。

ジープ アベンジャージープ アベンジャー

同時に、「フローティングCピラーもこれまでの伝統的なジープモデル(グランドチェロキーやグランドワゴニアなど)のデザイン要素を踏襲している」。

ジープ アベンジャージープ アベンジャー

当然セブンスロットグリルも採用。今回は、「より洗練されたテック感を持たせた形に進化させ、折り曲げ形状を持たせている」とマットさん。また、「1980年代から90年代に人気があったヘッドライトとウインカーなどが一体化されたものをイメージして採用している」と説明した。

ジープ アベンジャージープ アベンジャー

◆本物であることが大切

ではこのアベンジャーを開発するにあたり、最も重視されたことは何だろう。マットさんは、「ジープブランドとして何をおいても“本物(ジープらしく見えることや性能)”であるということ。そして他のSUVとは違うものを作る必要があった」という。それは、「ジープらしい悪路走破性能を持ちながらも、パワーや航続距離などお客さまが求めるこれらのバランスを両立することで、アベンジャーは良いバランスで仕上がった」とコメント。

また、欧州において非常に好調な要因について問うてみると、「特にイタリア国内でBセグSUV市場No.1だ」としたうえで、その要因のひとつにプラットフォームを挙げる。これはeCMP2と呼ばれるもので旧PSAのCMPをステランティス発足後に発展させたもの。さらに今回アベンジャーのためにコンポーネントの60%以上が専用にチューニングされた。「非常に効率的で、軽量なもの。結果としてとても効率のいいBEVを作ることが出来た」とマットさん。そこに加えて「ジープらしい、いかつさも感じさせる外観や7スロットグリルなどを採用することで、人々が見るとこれはジープだと間違いなくわかる。つまり、ジープらしい本物さとともに、最新のプラットフォームで性能などを高い次元で組み合わされたことが成功に至った要因」とコメントした。

現在の駆動方式は前輪駆動だが、その点についてマットさんは、「ジープを開発するときには性能ありきだ。アベンジャーも前輪駆動でありつつも、4x4らしさも持っている。それは最低地上高や様々なアングルの設定、ジープらしいデザインなど」と述べる一方、「欧州市場では四輪駆動も検討しているので、今後は適切なタイミングで全ての地域での展開も考えている」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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