【スズキ SV650 試乗】ネオクラでもストファイでもないSVが、ロングセラーであり続ける理由…伊丹孝裕

スズキ SV650
スズキ SV650全 44 枚

645ccのVツインを搭載したスズキのロングセラー『SV650』に、あらためて試乗。エンジンがもたらすほどよい鼓動感とナチュラルなハンドリングが堪能できるミドルスポーツの秀作である。

詳細画像:スズキ SV650

◆「4行」に凝縮されたSV650の本質

スズキ SV650スズキ SV650

SV650の初代モデルが国内へ導入されたのは、1999年のことだ。2003年に2代目(海外展開のみ)へ進化し、2009年に『グラディウス650』へと名称を変更。そして、2016年に刷新を受け、以来、多少の仕様変更や派生モデルの追加(SV650X)がありつつも、基本的にそのまま今に至る。

SV650のカタログを手にすると、そこには「HEARTBEAT SV」のキャッチコピーが躍っている。こうした配布物には、当然その製品の魅力が散りばめられているわけだが、その次に続く文言がこうだ。

「不等間隔爆発がもたらすVツインエンジンの鼓動感。路面を蹴り出すように力強く加速する高揚感。スリムで軽量コンパクトな車体が生む一体感。軽く素直なハンドリングで意のままに操る爽快感。」

という4行で、いつもこれに感心する。我々のようなライターやテスターを介さずとも、エンジンとハンドリングの美点がわかりやすく表現され、ほとんど完結しているからだ。乗ると実際その通りで、相対的に比較するなら、もっと「軽量」、もしくは、より「軽く」と評価できるモデルはあるものの、SV650の本質がそこにギュッと圧縮されている。

◆扱いやすさ抜群!乗り手にやさしいポジション

スズキ SV650スズキ SV650

そんなSV650は、走り出す前から間口が広いというか、優しい。シート高が785mmと低く、座面の前端がかなり絞られているため、このクラスのモデルとしては足つき性が抜群によい。足の上げ下げのしやすさ、ひっかかりのなさは250ccや400ccの印象に近く、プレッシャーは皆無だ。

また、高く、手前にセットされたハンドルのおかげもあって、取り回しやUターンは極めて容易だ。さらに絶妙なのが、狭めに設定されたハンドル幅で、街中でも持て余すような場面がない。これらを言い換えると、シートに関しては内包材が少ない、ハンドルに関しては腕や上体がタイトという評価にもなり、長距離&長時間走行時の快適性を優先するなら、他のモデルが候補になる。

もっとも、ミドルクラスのネイキッドであることを踏まえると、多くのユーザーにとって、それは最初から織り込み済みだろう。日常性やスポーティさに重きを置いたユーザーに選ばれるに違いなく、そうした要望に対する裏切りはない。

◆厳かで重厚なフィーリング、迫力のVツインエンジン

スズキ『SV650』のVツインエンジンスズキ『SV650』のVツインエンジン

それにしても、つくづく心地いいエンジンである。645ccの水冷4ストロークVツインは、挟み角90度のシリンダーを持ち、不等間隔で爆発。これは270度位相クランクを持つ、同社の『GSX-8S』やヤマハ『MT-07』、ホンダ『NC750X』、あるいはトライアンフやBMWの多くのモデルも採用するパラレルツインと同じ爆発間隔でもある。

とはいえ、SV650のVツインは、それらのパラレルツインよりも、中身がみっちりと詰まった精密さを感じさせながら回る。爆発のパルス感がより明瞭で、軽々というよりどこか厳かだ。排ガス規制に対応するため、2022年型からは最高出力が低下し(76.1ps/8500rpm→72ps/8500rpm)、最大トルクの発生回転数も大きく引き下げられたのだが(64Nm/8100rpm→63Nm/6800rpm)、結果的にこれが低回転域の重厚さにつながっている。

既述の通り、またがった時のサイズ感は250ccや400ccを思わせるにもかかわらず、スロットル開度小さめの時は、ワンクラス上の「ドォォォ~」という押し出し感で車速が上昇。幅広い回転域の中で、まったりと走らせることも鋭いダッシュをきかせることもできる。

◆すっきりと、軽々と、安定感あるハンドリング

スズキ SV650スズキ SV650

ハンドリングもフレキシビリティに富み、入力に対して間髪入れずに反応しながらも軽すぎない。ひらひらと動きつつも前後のタイヤが均等に路面を捉え、高い安定性も感じることができる。左右のスリムさと前後方向の長さ(ホイールベースは1450mm)がバランスし、終始ニュートラルな旋回力がくずれない。

純正装着タイヤは、ダンロップの「スポーツマックス・ロードスマートIII」ゆえ、ハンドリングの印象には、まだ伸びしろがありそうだ。というのも、このタイヤが登場したのは2015年2月のことで、後継モデルの「ロードスマートIV」ですら、発売は2020年3月のこと。SV650の車体側に大きな変更がないとはいえ、リプレイスする時は一考の価値がある。

SV650に終日乗って抱くのは、すっきりとしたモデルだな、という印象だ。ライディングをアシストする電子デバイスの類は、ABSの除けば、ローRPMアシスト(発進時にクラッチを繋ぐ際、エンジン回転の落ち込みを抑制してくれる機能)くらいで、操作系や装備に複雑さはなにもない。

スズキ SV650スズキ SV650

Vツインエンジンの造形、それを懸架するフレームのパイプワーク、丸目ヘッドライトから細身のテールエンドに至るシンプルなラインなど、奇をてらった部分がなにひとつなく、デザインはクリーンそのもの。ネオクラシックほど意図的でなく、ストリートファイターほど攻撃的でない、その中間に位置しながらロングセラーであり続ける稀有な存在が、SV650というモデルだ。

GSX-8Sや『GSX-8R』など、パラレルツインの新世代モデルが続々と拡充されている昨今ではあるが、SV650ならではの旨味とたたずまいの美しさは、まだまだ健在である。

スズキ SV650スズキ SV650

■5つ星評価
パワーソース ★★★★
ハンドリング ★★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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