【BYD シール RWD 新型試乗】気がつけばワインディングを攻めている自分がいた…中村孝仁

BYD シール RWD
BYD シール RWD全 33 枚

日本にやってくる3モデル目のBYD『シール』。今度は過去2台とは異なり、セダンである。セダンの市場がシュリンク(縮小)している今、一体どのような展開を見せるか楽しみなモデルでもある。

それにしてもBYDの本気度は相当なもので、販売店100店舗を目指す戦略は着実にその目標に向かっており、2025年にはBEVのみならずPHEVも導入する計画だという。また、ついにTVCMも始め、キャラクターに長澤まさみを起用。その効果もあったのか、新しいシールの売れ行きは好調だという。

BYD シール RWDBYD シール RWD

シールにはRWD仕様とAWD仕様があるのだが、今回試乗したのは前者、即ちRWD仕様の方で、時間も限られていたのでいわゆるショート・インプレに終始する。軽くそのスペックを紹介すると、最高出力312ps、最大トルク360Nmというもので、バッテリーは82.56kwhを搭載。実はこのバッテリーがブレードバッテリーと呼ばれるもので、何もBYDの専売特許ではないけれど、これをシャシー側と一体化した構造を取ることで、剛性を高めているという。

しかも使用しているのはリン酸鉄系だから、三元系よりも安全性が高い。一般的にはリン酸鉄系はエネルギー密度が低いと言われるが、それでも82.56kwhも搭載しているうえ、WLTCモードで640kmも走ってくれればまあ十分である。御存知の通り、BYDは元々電池メーカーからスタートしているので、ある意味電池に関しては知り尽くしていると言っても過言ではないし、それゆえにクルマの価格を安くできるともいえるわけだ。

◆気がつけばワインディングを攻めている自分がいた

BYD シールBYD シール

そんなわけで、初めて乗るシールについて多少のコックピットドリルを受けていざ出発。以前乗った『ドルフィン』や『ATTO3』と違って、いわゆる周囲に対する警告音は、果たしてそれを消音モードにしていたのか、あるいはそもそもないのかは定かではないが、何の音もせずに静々と走り始めたので、以前と比べて大いに評価できると思った。

走りそのものはやはりBEV独特ではなく、その加速感などもICEのモデル的で尖がったところはない。シートのサポート性もとりあえず満足のいくレベルだし、見た目の内装は質的にも作り的にも何の問題もなし。15.6インチという巨大なセンターディスプレイは、これもスイッチ一つで縦にも横にもできるのは、以前に乗ったBYDモデル同様で、なかなか便利そうである。乗り出し当初は静かでそれなりに快適だから、ゴルフ族には打ってつけ(走行距離的にも十分だし)の旦那仕様かと思っていた。

BYD シール RWDBYD シール RWD

確かにそんなところもあるし、のんびり走れば何の文句もない。いつも使う試乗コースには、タイトなワインディングロードが存在するのだが、まあそれは普通に通過すればよいと思っていたのだが、自分でも不思議なことに、いつの間にやらその狭いワインディングを攻めている自分がいたのである。そして、このクルマはそんな走り方にドライバーを誘う不思議な魅力も秘めていることが分かった。

ドライブモードはコンフォートだったから、アクセルの踏み込み量に対して加速力はまぁまぁのレベルだったのだが、これをスポーツモードに切り替えると走りは一変する。流石にBEVの加速力は伊達じゃないことをドライバーに知らしめるには、十分なポテンシャルを示す。ステアリングは決してシャープではないけれど、そんなクルマでも攻めるモードにいつの間にか引きずり込まれてしまうということは、スポーツセダンとしてそれなりのポテンシャルを持っているということだと思うわけである。

◆このサイズのBEVとしては超バーゲンプライス

BYD シール RWDBYD シール RWD

フルスロットルに出来る(一瞬だけれど)高速道路上に行くと、その加速に多少の不満が露呈した。フルスロットル時ではないものの、素早い加速を持続すると、フロントがリフトして、ステアリングに落ち着きが無くなることが分かった。リアサスペンションが柔らかいのか、空力的な(そんなスピードは出ていない)問題かは別として、とにかく高速上での加速時のステアリングフィールは褒められたものではない。ネガだと感じた点はこれが唯一。要望的には、スポーツセダンとしてはもう少しシャキッとシャープな味付けのステアフィールが欲しいところである。

一応リアシートにも座ってみた。ドライバーがいないから静止した状態だが、リアの座面は少し掘り込まれていて、バックレストも割と寝た状態だから、くつろぐには最高である。おまけにルーフは総ガラス張り(半透明)だから、そこに広がる景色を眺めるには持って来いであるのだが、いざ降車となると若い人ならいざ知らず、結構「どっこいしょ」という掛け声で降りる必要に迫られる。

いずれにしてもメーカー希望小売価格528万円。1000台限定ながら(もう売れてしまったか?)、導入記念キャンペーン価格は495万円で、これに残クレを使うと月々の支払いは2万円以下の1万9800円だというから、それだけでグラッとくるユーザーは確実にいると思う(ただし頭金127万円を用意する必要はあるが)。補助金を使えばもっと安くなるのかもしれないし、この性能とこのサイズのBEVとしては超バーゲンプライスと言えよう。

BYD シール RWDBYD シール RWD

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  2. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  3. トヨタの顧客は1億5000万台…バリューチェーンで財務基盤強化
  4. ホンダ株主総会で三部社長「完全否定ではない」日産との経営統合に“未練”[新聞ウォッチ]
  5. トヨタ『プリウスPHEV』、黒が冴える「ナイトシェード」設定
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. 中国EV「XPENG」、電動SUV2車種を改良…新電池は12分で80%充電可能
  4. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
  5. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
ランキングをもっと見る