【VW ゴルフヴァリアント 新型試乗】仕上がりと進化はさすが、ただ残る疑問点は…諸星陽一

VW ゴルフヴァリアント eTSI スタイル
VW ゴルフヴァリアント eTSI スタイル全 17 枚

2025年1月、マイナーチェンジされたフォルクスワーゲン『ゴルフ』の日本での販売が開始された。都内臨海部で開催された試乗会で乗った2車種のうち、ガソリンのステーションワゴン「ヴァリアント」のフィーリングをお届けする。

2019年に日本に導入された際にはマイルドハイブリッド・ガソリンエンジンには3気筒・1リットルと4気筒・1.5リットルの2種が用意されていたが、今回のマイナーチェンジで1リットルエンジンは廃止、4気筒1.5リットルのみとなった。その代わりに1.5リットルには116馬力仕様と150馬力仕様の2タイプが設定。このうち116馬力仕様が従来の1リットルの役目であるエントリークラスを担うことになった。いずれもベルトドライブ式(BSG)のマイルドハイブリッドシステムを採用している。試乗車は150馬力エンジンを積む「ゴルフ・ヴァリアント eTSI スタイル」。

◆さらに緻密さを増した気筒休止システム

VW ゴルフヴァリアント eTSI スタイルVW ゴルフヴァリアント eTSI スタイル

従来、エンジンの始動はセルモーターが担っていたが、今回のマイナーチェンジからエンジンの始動もBSGが担当するようになった。あまり気にしていなかったがそういえば「キュルキュル」といわないでエンジンが始動していたような記憶がある。BSGは耐久性をアップするために水冷式に変更、出力も従来の16psから19psにアップされている。

モータートルクを利用するというのは走り出しのスムーズさに大きく貢献している。ゴルフのミッションはDSGと呼ばれる機械式7段変速機が組み合わされている。簡単にいうと7段のマニュアルミッションを自動で変速させるシステム。一般的なマニュアルミッションとは違って、偶数段と奇数段に分かれているミッションを同期して使うことでスムーズな変速を可能にしている。今回のマイナーチェンジでは変速時にDSGが介入することでさらにそのスムーズさを向上。走行中も一般的なATで走っているのと大きく違いを感じることはない。

ゴルフには気筒休止システムが採用されている。これはマイチェン前から採用されているもので、4気筒で走行するパターン、2気筒で走行するパターン、すべての気筒を停止するパターンと大きく3種のパターンでエンジンが制御される。マイチェン前も2気筒になったことはほぼわからなかったが、新型はさらに緻密。2気筒作動時は2気筒作動に適したカムプロフィールが変更されるという制御が加わった。マイチェン前も2気筒走行を見極めるのは難しかったが、今回はそれが不可能になったという印象だ。

◆世界的にも希少な存在となった小型ワゴン

VW ゴルフヴァリアント eTSI スタイルVW ゴルフヴァリアント eTSI スタイル

全般を通して乗り心地は良好。フラットで安定していて、コーナリング時のしっかり感も不満はない。以前のゴルフはいかにもドイツ車らしい質実剛健さにあふれていたが、そうした質実剛健さを内側にしっかりと持ち、それでいて乗用車に求められる快適さも十分に得ているという印象だ。

ラゲッジルーム容量は定員乗車時で611リットル、後席をすべて倒した際には1642リットルまで拡大可能。ラゲッジルームはフロアサイドともにフラットで仕立てがよくしっかりと荷物が積めそうだ。このクラスのステーションワゴンは世界的にも希少な存在となっているだけに、今後も作り続けてほしいと感じる。

ラゲッジルーム両側倒しフルラゲッジラゲッジルーム両側倒しフルラゲッジ

◆仕上がりと進化はさすが、ただ残る疑問点は

今回のマイナーチェンジでは、ステアリングスポークに採用されていたタッチスイッチを物理スイッチに戻すなど本当の使いやすさを追求したところが大きな進化。タッチスイッチのほうが先進性を感じられるが、結局のところ物理スイッチのほうが使いやすい。それを素直に認めて、戻すという行為に踏み切れるのは熟成したブランドならではのなせるワザと感じる。

で、ありながらちょっと疑問が残る点があった。今回のゴルフでは12.9インチの大型タッチスクリーンを使ったインフォテイメントシステムのMIB4を採用した。このMIB4にはAID(アイーダ)という音声認識システムが採用されている。エアコンなどの操作はこのAIDを使って音声操作可能なのだが、もっとも使いたいナビはAIDではなくナビの音声認識を使うことになる。これはちょっと残念であった。とはいうものの、全体としての仕上がりと進化の素晴らしさはさすがゴルフといった感じだ。

VW ゴルフヴァリアント eTSI スタイルVW ゴルフヴァリアント eTSI スタイル

ただどうなのだろう? 可変カムプロフィールの追加などは確かに進化なのだが、構造を複雑化しているのは間違いない。部品点数が増えればトラブルの可能性は上がる。究極を追求していくより、頑丈さを追求するのもこのクラスには大切なことだと思う。もちろん可変カムが壊れると言っているワケではないことは強調しておく。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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