新車の「不適切」な販売方法への注意喚起とは?…自動車公正取引協議会 島田事務局長に聞いた

新車の「不適切」な販売方法への注意喚起とは?…自動車公正取引協議会 島田事務局長に聞いた
新車の「不適切」な販売方法への注意喚起とは?…自動車公正取引協議会 島田事務局長に聞いた全 6 枚

自動車販売ビジネスに携わる事業者に限らず、幅広い自動車アフターマーケット事業者に対して、法令遵守の対応強化が求められている昨今。一般社団法人 自動車公正取引協議会が、新車の不適切な販売方法について注意喚起を行っていることは、意外と知られていないのではないだろうか。この注意喚起に注目した当編集部は、自動車公正取引協議会の活動目的や注意喚起の内容について、同協議会の島田明事務局長に話しを聞いた。

自動車業界における表示の適正化を目的に設立

自動車公正取引協議会は、消費者庁と公正取引委員会から認定された「自動車公正競争規約」を運用する機関として、今から54年前の1971年12月に設立(現在は「一般社団法人」)。自動車メーカー・インポーターや四輪・二輪の新車・中古車販売店等、約19,400社が会員となり、自動車公正競争規約の運用を通じ、適正な表示による「消費者の信頼確保」と「事業者間の公正な競争の促進」を図るための活動を長年行っている。

2023年10月から中古車販売時の表示の適正化を目的として「支払総額表示」の義務化を開始したのも自動車公正取引協議会の取り組みのひとつである。自動車公正取引協議会の公式Webサイトでは、以前から頻繁に警告や注意喚起情報などを数多く公開。「新着情報」ページからアクセスできる情報は誰でも自由に閲覧可能で、知っておくと役立つ重要な情報が数多く掲載されている。

自動車公正取引協議会の公式サイトTOPページにある「新着情報」をクリックすると、最近のものから過去(2021年07月12日)の発表情報まで閲覧できる

人気車種の“転売防止対策”がエスカレート

自動車公正取引協議会が2024年11月15日に公式Webサイトで公開した「新車の不適切な販売方法についての注意喚起」には、同協議会の消費者相談窓口に寄せられた主な苦情相談が記載され、法令遵守および消費者の不信を招かないための適切な販売方法も明確に提示されていた。

自動車公正取引協議会が2024年11月15日に公式Webサイトで公開した「新車の不適切な販売方法についての注意喚起」情報(前半部分)

この件について自動車公正取引協議会の島田事務局長は、「消費者相談窓口に寄せられる苦情の6割は中古車に関するもので、新車関連は3割という状況でしたが、2023年頃から、納車に時間がかかる人気新車の販売について、現金購入を希望しているにもかかわらず、転売防止のため、『販売店が所有権を留保する』、『割賦(ローン)で購入してほしい』等と販売店から言われ、同意しない場合は販売しないと言われた、等の苦情相談が消費者から寄せられるようになりました。その後『(販売店が指定する)高額なオプションを購入しないと販売しない』、『下取車がない場合は販売しない』等の条件が販売店から追加されるなど、次第にエスカレートしたことで、消費者からの苦情相談も増加しました。一部の販売店が行っていた行為ではありますが、法令違反や消費者の不信を招くおそれがあるため、『不適切な販売方法』として、広く注意喚起を行いました」と話す。

消費者に不信を招かないための「適切」な販売方法

長納期となる特定の人気車種を購入したい消費者に対して、自動車販売店がオプション購入等の条件を提示し、同意しない場合は車両を販売しない、または、同意した消費者に優先して販売するという行為が実際に行われていたようだ。

車両販売の際、消費者がオプション購入等を希望しないのに、購入を強制することは、独占禁止法に違反(不公正な取引方法“抱き合わせ販売”に該当)するおそれがあることや、現金購入の場合、所有権は当然購入者に移るべきものであり、販売店に留保することは、いかなる理由があったとしても権利侵害になるなど、法令遵守及び消費者の不信を招かないための適切な販売方法を、自動車公正取引協議会はホームページで公表している。

自動車公正取引協議会が2024年11月15日に公式Webサイトで公開した「新車の不適切な販売方法についての注意喚起」情報(後半部分)

中古車“支払総額表示”等を「動画」で注意喚起

自動車公正取引協議会の近年の取り組みとして、消費者に向けてYouTube動画による注意喚起を積極的に行っている点も注目だ。中古車選びの際に、車両価格ではなく、諸費用を加えた支払総額で比較することの重要性や、表示した支払総額では購入できない場合など、消費者側が不信感や戸惑いを感じたらその販売店で車両を購入する必要はなく、信頼できる販売店での購入を勧める動画などを自動車公正取引協議会の公式YouTubeチャンネルに数多く公開されている。

自動車公正取引協議会の公式YouTubeチャンネル

自動車公正取引協議会は、今後の取り組みとして、会員事業者に向けて適切な販売方法の周知活動、併せて、消費者向けには、上手な車の買い方等、消費者の被害やトラブルを未然に防止するための周知活動の実施を検討中とのこと。

自動車公正取引協議会が情報発信を行っている警告や注意喚起は、自動車アフターマーケット事業者だけでなく、カーオーナーの安心・安全なカーライフのためにも知っておくべき大切な情報だと感じた。自動車の購入だけでなく、車検や整備、修理、自動車保険などにおいても、何かしらの違和感を感じた際には一旦ストップして即断即決しないことでトラブルを防ぐことができるようにも思う。自動車アフターマーケット事業者もカーオーナーも、自社や個人を守るためには情報収集と冷静な判断が大事なのではないだろうか。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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