法令遵守体制は? 日産東京販売が取り組む「中古車販売」事業…担当部長に聞く

旧BMの不正請求問題をキッカケに、メーカー系ディーラーや大手中古車販売店、中古車販売を行う事業者は、顧客への信頼性向上に向けて組織体制を見直し、法令遵守の対応を強化する取り組みを行なっていることだろう。

そこで編集部は、東京全域にわたって日産自動車とルノ…

日産東京販売が取り組む「中古車販売」事業とは?…法令遵守体制も含めて 広報・IR部の吉田担当部長に聞く
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2023年7月に発覚した旧ビッグモーター(旧BM)の不正請求問題をキッカケに、カーオーナーは中古車販売を行う幅広い自動車アフターマーケット事業者に対して不安や不信感を抱くこととなり、その警戒感は今でも拭えていない。

だからこそメーカー系ディーラーや大手中古車販売店、中古車販売を行う幅広い事業者は、顧客への信頼性向上に向けて、中古車販売事業のみならず自社の組織体制を見直して法令遵守の対応を強化する取り組みを行なっていることだろう。

そういった観点のもと当編集部は、東京全域にわたって日産とルノーブランドの新車・中古車販売事業に注力する日産東京販売の持ち株会社である日産東京販売ホールディングス(東京都品川区・竹林彰代表取締役社長)に取材を依頼。同社の広報担当者に話を聞いた。

取材にご協力頂いた、日産東京販売ホールディングス 広報・IR部 吉田明生担当部長

2021年7月に三販社統合、新車販売101店・中古車販売18店

日産東京販売は、1942年11月に発足した東京府自動車配給株式会社をルーツとする。それから69年後の2011年に三販社(東京日産自動車販売株式会社、日産プリンス東京販売株式会社、日産プリンス西東京販売株式会社)を束ねる日産東京販売ホールディングスが誕生した。2021年7月には三販社(東京日産、日産プリンス東京、日産プリンス西東京)を統合した日産東京販売株式会社が設立され日産系最大級のディーラーとなった。なお、日産東京販売ホールディングスは現在、東京証券取引所スタンダード市場に上場している。

2025年4月現在、日産東京販売ホールディングス傘下にはモビリティ事業を展開する8社(日産東京販売株式会社・ルノーNT販売※日産東京販売株式会社内ルノー販売事業部・エヌティオートサービス株式会社・株式会社車検館・エースビジネスサービス株式会社・エヌティ陸送株式会社・株式会社日産ピーズフィールドクラフト・葵交通株式会社)を擁し、その内日産とルノーの車両販売を行う日産東京販売では東京都内に新車販売ディーラーを101店舗、中古車販売18店舗を展開している。

東京都品川区西五反田に本社を構える日産東京販売ホールディングス本社(左)と、同敷地内にある日産東京「新車のひろば目黒店」(右)

自社の内部監査と日産自動車の監査で「法令遵守」を徹底

東証スタンダード市場に上場している日産東京販売ホールディングスは、法令遵守の対応強化は必須だったと思われる。

吉田担当部長は『上場しているうえでは厳しいガバナンス体制を構築している』と話す。法令遵守の組織運営を行うべく内部監査部門として執行部門から独立した「内部監査室」を設置し、自社および子会社の各部・各拠点に対する定期監査・臨時監査を実施。すべての監査結果は代表取締役を含む常勤の取締役、執行役員及び常勤監査役をメンバーとする内部監査報告会を原則毎月開催して報告し、取締役会に対しても定期的に報告しているという。

また吉田担当部長は『日産自動車主導による整備部門の監査も受けており、コンプライアンス体制には自信があります。内部監査で課題が見つかった場合にはすぐに社内共有し、課題解決に向けたブラッシュアップを行っています』と述べた。

日産東京販売ホールディングスのWebサイト内ではコーポレートガバナンス体制や統合報告書が公開されており、体制図の中に“コンプライアンス賞罰委員会”が設けられている

日産東京販売ホールディングスではコンプライアンス賞罰委員会を設置。同社グループにおけるコンプライアンス事案の分析、賞罰案・再発防止策などの検討を行っているという。またグループ社員が遵守すべきコンプライアンスの根幹となる倫理規程や行動指針のもと、グループ全体への啓蒙教育や水平・垂直展開を推進することでコンプライアンスの浸透、定着を図っている。このほかグループ社員からの内部通報・提案窓口と外部の第三者機関の窓口もそれぞれ設置されているようだ。

良質な中古車を「個人向けリース」で作り出す

中古車販売事業としては、東京都内で中古車販売専門店を18拠点(ピーズステージ、レッドステーション、U-Carひろばの各店舗名称)展開し、最大総展示台数は約1,600台。日産ディーラーネットワークで運営されている中古車買取・中古車査定「日産カウゾー」には現在加盟していない。中古車販売台数はコロナ禍時期と比較して、新車の供給不足や他メーカーの出荷停止等による下取車(中古車販売車両)の減少などにより、直近では2割強程度減少傾向だが、中古車価格の相場が上がり、逆に2割程度収益が向上しているという。

中古車販売ビジネスで重要となる在庫確保について尋ねたところ、『グループ内の約35万件の顧客基盤を活かして新車ディーラー販売車両の下取率は6割程度を維持しています。これに加え、1997年に自社開発した個人向けリース「P.O.P」の3年乗り換え特約を利用するユーザーを増やすことで、良質な中古車を確保する体制を構築しています。2011年に三販社体制となり、2021年からは三社が統合され、より一層ノウハウと情報共有が強化されたことで個人向けリース販売が伸び続けています』と吉田担当部長は述べる。

同社の個人向けリースは、頭金ゼロ円で車両代、税金、登録諸費用などクルマの維持に必要なメンテナンス代がすべて含まれた、いわゆる “月額定額コミコミ”のサブスクリプションタイプであり、2023年度の同社新車個人向けリース販売は前年比170%の5,200台となり、新車個人向けリースの保有台数は1.3万台を超え順調に増加している。

個人向けリース「P.O.P」は6プランがあり、契約期間や乗り換え可能時期を比較できる一覧表がWebサイトで公開中

さらに注目なのは、シニア向けの個人リースプランを早くから提供している点だ。近年、高齢ドライバーによる痛ましい事故が増加していることを背景に、運転免許の自主返納の機運が高まっていることに着目。65歳以上を対象とした免許返納解約特約を設けて、通常5年契約のところ2年経過後の免許返納時に契約を終了できるシニア向けプラン「S-P.O.P」を開発し、2022年からは契約対象年齢を60歳に引き下げて提供している。1997年から取り組んできたリース事業のノウハウに加え、2021年の三社統合により各社の強みを掛け合わせることで、現代のニーズに即したリース商材をスピーディに開発できる組織へと進化していることが窺える。個人向けリース契約者の割合は増える傾向で、東京都における同社個人向けリースシェア率は約40%で、今後も更なる拡大を見込んでいるようだ。

中古車販売車両の「支払総額表示」

2023年10月から義務化された中古車販売の「支払総額表示」については、東京全域で18店舗ある中古車販売専門店の展示車両や、日産東京販売のWebサイトから確認できる在庫車両は支払総額を表示。Webサイトでは支払総額についての説明文も確認できる。

日産東京販売ホールディングスのWebサイトから確認できる中古車在庫の紹介ページ(2025年3月21日時点)

中古車販売後のアフターサービスとしては、日産自動車が設ける中古車保証を提供。最長2年間パーツ類を走行距離無制限で無料保証(消耗品・油脂類を除く。駆動系・電装系パーツなどに適用)するほか、12Vバッテリーは1年間走行距離無制限無料保証(ワイド保証ライトの場合は保証期間3ヶ月間)、納車後1ヶ月または1,000kmの無料点検、全国の日産サービス工場のどこでも点検・修理を受けられる。このほか一定の条件をクリアした中古車の場合は、有料で保証を最長2年間延長できる「ワイド保証プレミアム」も用意されている。

中古車保証制度「ワイド保証」を用意

社員の教育体制については、進化し続ける日産自動車の新型車に搭載された安全運転支援システムの知識や高度化する整備技術を身に付けられるように、eラーニングの受講や日産自動車による自動車整備士資格(マスターテクニシャンHITEQ)試験の受験を推進。また、新車や中古車販売など各事業ごとに業務フローや注意事項などを記載したルール・ブックを独自に作成して接客対応などを行っているという。

軽EV「サクラ」はリース契約も好調

日産自動車が生産した車両は様々あるが、今注目すべき車両カテゴリはやはりEVだろう。2010年に世界初となる量産EV「リーフ」を発売したことは日産自動車にとって大きな転換点と言える。リーフの技術開発で培われた技術を活かして、2022年6月に発売された軽乗用車EV「サクラ」は画期的な軽EVとして人気を獲得。サクラのXグレード(希望小売価格・税込2,599,300円)は都内在住であれば補助金や減税により最大1,265,600円の優遇を受けられる点が実に魅力的で、2023年度の国内販売台数34,083台という結果を残している。

吉田担当部長に、日産東京販売のEVを含む電動車販売比率(乗用車)を尋ねたところ、2023年度の91.5%に対し2024年上半期は93.3%と増加傾向。また、リース契約のEV比率は全体の2割強でアリアとリーフは1割を割るがサクラは3割程度との回答だった。この3割という数字は定番人気車種のセレナやルークス、デイズと同等レベルの比率であり、軽EVのサクラは、今後も伸びしろが期待できる重要な商材と言えるだろう。

個人向けリースでは、日産のEV各車も選べる

新車供給の動向や為替の変動など、様々な外部要因で影響を受ける中古車販売事業において、ディーラー独自のリース事業から良質な中古車を作り出す仕組みを確立し、日産自動車のメーカー保証とEV販売のノウハウもある日産東京販売は、今後も中古車販売事業を伸ばしていける可能性を秘める。一方で、上場企業として法令遵守の管理体制は構築されているように感じたが、中古車販売事業におけるコンプライアンス体制については現状把握やルール作りなどの点で課題が残されているように感じた。当編集部は今後も中古車販売事業を展開するメーカー系ディーラーなどの中古車販売事業者に取材を行い各社の取り組みを伝えることで、中古車購入を検討するカーオーナーへの情報提供と、中古車販売に関わる幅広い自動車アフターマーケット事業者の健全な事業活性化のヒントになる情報発信を行っていきたい。

日産東京販売が取り組む「中古車販売」事業とは?…法令遵守体制も含めて 広報・IR部の吉田担当部長に聞く

《カーケアプラス編集部》

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