日産が新型投入計画発表…その目的と意味を探る

日産チーフパフォーマンスオフィサーのギョーム・カルティエ氏
日産チーフパフォーマンスオフィサーのギョーム・カルティエ氏全 12 枚

日産自動車は3月25日、各国の報道陣や関係者を集めたプレスカンファレンスを開催した。4月から新社長に就任するイヴァン・エスピノーサ氏が登場し、北米、日本、欧州、中東、南米、豪州での2025年から26年にかけて仕込んでいる「隠し玉」を披露した。その目的や意味を考えてみたい。


開発中の車両も見せるためテクニカルセンターで開催

日産は2月13日に、ターンアラウンドの進捗状況についてプレスカンファレンスを開いている。そこでは、固定費3000億円の削減、変動費1000憶円の削減、そして売り上げの成長を実行するとしていた。今回のプレスカンファレンスは、ターンアラウンド計画のうち、売り上げ拡大への具体的な取り組みを内外に示すために設定された。

日産の経営危機については、その原因として複数のメディアが商品ラインナップの不足、新型車が出ないといった状況を、現場の声として報じている。ニューモデルや新型が少ないという点は、今回のプレスカンファレンスでエスピノーサ氏も認めていた。これまで新型の投入が滞っていた理由として、開発リソースとマーケティングリソースのそれぞれ配分が一致していなかったと原因を分析。そしてその解決にも着手すると述べた。

日産次期社長のイヴァン・エスピノーサ氏

もちろん、それまでも日産社内では各種の新型車プロジェクトが進められていたはずだ。しかし、開発期間の長さと戦略とリソースのミスマッチにより、市場投入に時間がかかっていた。新型車の開発や商品企画をただ怠っていたわけではない。このことを示すため、各国の報道陣らが、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)に集められたわけだ。

プレスカンファレンスの会場が、横浜のグローバル本社ではなく、デザインや開発の拠点である厚木のテクニカルセンターとなったのは、正式発表前の車両を開発現場の近いところで感じてもらうためではないかと予想する。今後2年程度でグローバル展開される開発中の車両の一部は、実物やプロトタイプなどが会場に展示されていた。その数は軽く10を超える。未公開車両のこの台数をみなとみらい(本社)に運ぶのは現実的ではない。

北米で一気に進むマルチパワートレイン戦略

どのような新型が発表されたのかは、既報の「日産が新商品と新技術の導入計画を発表…新型『リーフ』や新型『マイクラ』で活性化を参考にしてほしい。ここでは、今後2年程度で各リージョンに投入される新モデルについて、戦略的な意味合いと特徴を整理する。

北米では、ついに「e-POWER」が投入される。e-POWERは高速燃費が課題とされ、北米投入は見送られていた。第3世代のe-POWERでは、その高速燃費が改善されたという。ピックアップトラックや先進的なEVが好まれる北米市場で、ハイブリッドのニーズは未知数だったが、『プリウス』以外のハイブリッドが北米でも動き初めており、日本でヒットしたe-POWERの投入に期待がかかる。

日産、北米市場向け新製品ティザー

EVについては、北米仕様の新型EVも開発中であるという。このEVプラットフォームはインフィニティブランドのSUVにも採用される予定だ。

EV以外のプラグインでも動きがあった。アメリカでは、マツダ『CX-90』、ジープ『ラングラー』やボルボなどでPHEVも売れ始めている。この市場に対して、『ローグ』のプラグインハイブリッドモデルも投入される予定がある。北米ではEVかICE(内燃機関)の展開だったものが一気に全方位となる。

欧州戦略のポイントは市場ポジションの確立

欧州では『マイクラEV』、『ジュークEV』のほか、第3世代e-POWERを搭載する『キャシュカイ』について言及があった。


《中尾真二》

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