クルマの未来はロボットが握る…Autowareも使うROSが描く“ポスト自動運転”の世界[インタビュー]

クルマの未来はロボットが握る…Autowareも使うROSが描く“ポスト自動運転”の世界[インタビュー]
クルマの未来はロボットが握る…Autowareも使うROSが描く“ポスト自動運転”の世界[インタビュー]全 6 枚

来たる5月13日、オンラインセミナー「2035年クルマとロボットが表裏一体になる~ Autowareも使用しているROSの未来~」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社アールティ 代表取締役の中川友紀子氏。

今回のセミナーは以下のテーマで進められる。

1.工場の自動化のPoCが始まった!
2.ロボット開発のトレンド、ROS
3.工場自動化で期待されるROS・AIの基礎知識
4.協働ロボットの未来
5. 対談・質疑応答

講演の後には、本セミナーのモデレーターであるスズキマンジ事務所 代表の鈴木万治氏を交えて、今後拡大するであろう小型モビリティや自動運転とロボット、AIとROSの関係などについて議論し、参加者からの質疑応答の時間が用意されている。

このセミナーの見どころを中川氏に聞いた。

10年早かったAI×ロボティクス創業

「最初に会社を立ち上げたときは、“そんなことができるわけがない”って、身近な人にも言われ続けました」

そう振り返るのは、株式会社アールティ代表取締役の中川友紀子氏。日本におけるロボティクス×AIのパイオニアであり、ROS(Robot Operating System)の国際的な団体である米Open Roboticsの理事を務め、その日本の活動拠点でもあるー般社団法人ROSConJPでも理事を務める人物だ。

中川氏は東京工業大学(現:東京科学大学)でAIとロボティクスを専門とする研究者だった。「そのまま大学に残る選択肢もありましたが、私は“社会の現場にロボットを導入する側”になりたかったんです」

2005年、ITバブルの余韻が残る中で起業。「IT(インフォメーションテクノロジー)に対して、我々はロボットテクノロジー、RTだろうということで、社名を“アールティ”にしました」と明かす。

当時は、パソコンとつなげられるロボットすら存在しない状況だった。「大学の研究者が自作でつくる時代。サービスロボットなんて夢のまた夢。“これは商売にならん”と早々に悟って、教育分野に舵を切りました。高専や大学、企業の開発部門向けに教材ロボットを提供する、高度人材育成に10年ほど注力しました。私はAIとロボットの融合が、必ず社会を変えると思っていました。でも、時代が早すぎた。10年以上は早かったですね」

それでも中川氏は自分の直感を信じ、実直に事業を展開してきた。「マイクロマウスという、迷路を解く小型ロボットの競技があるんですが、あれがまさにAIとマイコンを実世界に応用する象徴なんです。私はその大会の理事もしていて、今でも車業界や学生の間で熱い競技なんですよ」

中川氏は「マイクロマウス」競技を主催する公益財団法人ニューテクノロジー振興財団の理事でもある。同氏が「物理法則を超えたかのように曲がる」と称するマイクロマウスは、AIとマイコン技術の実践応用であり、近年では自動運転やモビリティ分野にも人材を輩出する育成の場となっている。

創業から10年ほどが経過した2015年、中川氏は「第2の創業」を決意する。「当時、5~6人の小さな会社でしたが、ロボットの会社で働きたいという若手エンジニアが育ってきた。“そういう人たちの受け皿になろう”と覚悟を決めて、経営も学び、投資を受けて、2017年に第2の創業をしました」

その際に掲げたのが、三品産業(食品・化粧品・薬品)へのロボット導入だった。「人間の目と手で行う軽作業が多く、産業ロボットの導入が難しい領域。スペースも狭く、多品種小ロット。だから大手はなかなか入ってこられない。我々のような小さな企業でも戦える場所だったんです」

Foodlyと“ラストワンハンド”の挑戦

アールティが開発した人型ロボット「Foodly」は、まさにそうした“人間がやっている最後の作業”を代替する存在だ。

「工場の最後、製品を並べる、梱包する、検品する…そういう“ラストワンハンド”をロボットに置き換える。今でも『早い』とは思いますが、この分野で10年後、20年後を見据えた実証を始めています」

「人型ロボットの最大のメリットは、“人と同じ場所で作業できる”こと。既存設備に合わせられる。カメラもセンサーもアームも移動機構も備えていて、オールインワン。これはスペースが限られる工場において、非常に大きな利点です」

ROS…ロボットの世界標準を担う存在

中川氏は、日本でROSの普及をリードする立場にもある。「ROSは、“ロボット界のLinux”と言われるミドルウェアです。現在のバージョンはROS2で、複数のロボットやAIとの連携、上位システムとの接続など、生産現場の課題を解決できるプラットフォームになっています」

ROS2は産業ロボットや自動運転システムにおける通信や制御の標準化を進める上で、世界中の企業や研究機関から支持を集めている。

「従来の製造現場は、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)などで構成され、各装置が独立して動作していました。しかし、ROSを活用すれば、AIや上位システムとの連携が可能になります」と中川氏は語る。BMWやシーメンスも既にROSによる統合管理に取り組み始めており、グローバルでは“ROS化”の流れが加速している。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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