路線バス勉強会---作り方が乗用車とは大きく異なる

BEV大型路線バス:エルガEV
BEV大型路線バス:エルガEV全 12 枚

ピンポン、次止まります……。路線バスは仕様がバス事業者ごとに異なり、注文後に個別設計・部品手配で生産する受注生産制だ。作り置きのないことが乗用車とは大きく異なる。いすゞ自動車が「路線バス勉強会」を開催、そこで説明された路線バスの製造について紹介しよう。

【画像全12枚】


●バスの基礎組織

まずバスの用途は、自治体や企業などが使用する「自家用バス」、身近な「一般路線バス」、都市間をつなぐ「高速路線バス」、遠足などで使われる「貸切観光バス」などに分けられる。

大きさの分類では、いすゞにおいては、「大型バス」は全幅2.5m×長さ9m以上~12m未満、「中型バス」は全幅2.3m×長さ7m以上~9m未満、「小型マイクロバス」は全幅約2.0m×長さ7m未満と定義している。エンジン搭載位置は、大型・中型バスが後部、マイクロバスは運転席下となる。

●バスの新車市場

バスの新車市場は、いすゞ自動車によると(日本自動車工業会資料からの孫引き)、2024年度の大型・中型バス新車登録台数は3985台で、そのうち38%が大型路線バス、62%が観光バスや中型バスだ。2019年は4876台だったが、2021~22年はコロナ禍で急減している。

国内のバス事業者数は5953社あり、うち路線バス事業者2397社、観光バス事業者3556社となっている(国交省の資料)。また路線バス事業者は、交通局系、電鉄系、地元資本系の3タイプに大別できる。

製造の流れ製造の流れ

●作り置きはない

「中型・大型バスはすべて受注生産なのが特徴だ。バス事業者から注文を受けてから製造を開始するので、在庫は存在しない」。勉強会で、いすゞ自動車フリート営業第二部バス営業グループの平野賢治グループリーダーはそう語った。

在庫を用意できない理由は、車両の仕様がバス事業者ごとに異なるため、汎用車両を用意できないからだ。大型路線バスは、乗客がどの扉で乗り降りするかによって、二つのタイプがある。大都市に多い均一料金の「前乗り中降り」方式と、それ以外のほとんどのバス事業者における距離制運賃の「中乗り前降り方式」の2種類だ。距離制運賃の整理券発行機の位置や、吊り革の形状なども、バス事業者によって違う。

平野グループリーダーは「簡単な部品で言うと、車内の吊り革。丸いリングが標準だが、バス事業者によっては四角だったり、リングをベルト1本じゃなくて2本で止めたりする」と例を挙げた。

各事業者とも、乗客が倒れないようにと、安全に対する意識は同じだ。平野グループリーダーは「各事業者が口を揃えて言うのは、うちのやり方がいちばん安全に配慮している、と。どこがいちばん安全なのか答えはないが、仕様の統一がなかなかできない」と現状を説明する。

●J-BUS

いすゞのバスは、バス製造メーカーのJ-BUS(ジェイ・バス)で製造する。J-BUSはいすゞ50%・日野自動車50%出資の合弁会社だ。いすゞと日野はシャシー部品を搬入し、J-BUSが車両を組み立てる。路線バス系は栃木県の宇都宮市工場で、貸切・中型観光バス系は石川県の小松市工場で生産する。

なお、いすゞの100%子会社であるUDトラックスは、現在はバスを製造していない。また三菱ふそうトラック・バスのバスは、三菱ふそうバス製造で作られる。日本の商用車メーカーは、いずれもバスを自社で製造しておらず、バス製造メーカーは2社に集約されている。ちなみにJ-BUSはいすゞバス製造と日野車体工業、三菱ふそうバス製造は呉羽自動車工業がそれぞれ前身だ。

製造過程製造過程

●バス製造は注文建築

バスはバス事業者によって仕様が違うことが、製造においても特徴となっている。平野グループリーダーは「乗用車は建売りの住宅。いっぽうバスは、玄関はどうしましょう、というように一点ずつ部品の仕様を決めて作る、注文建築だ」と例える。

バス事業者からバスの発注があると、バス事業者と打ち合わせながら50枚、60枚ぐらいになる製作仕様書を作る。次に仕様書をJ-BUSに送って設計図を起こし、それから部品を発注して、車体を組み立てる。発注からバスが出来上がるまで、3か月から4か月のリードタイムがあるのだ。

シートや降車ボタン、LED行先表示、料金箱、整理券発行機などの部品は専門メーカー製で、こういった部品をクライアントから支給されて、あるいはいすゞで購入して車体に取り付ける。取り付ける部品や配線仕様も事業者ごとに異なる。

シートは天龍工業という会社があり、日本のバスのシートは全てそこで作っている。降車ボタンはいろいろなメーカーあって、レシップやオージが代表的なところだ。ボディカラーは工場内でクライアント指定色に塗装する。平野グループリーダーは、バスに関わっていちばんびっくりしたことが塗装だと明かす。「白いバスがメーカーの工場から出ていって、バス事業者で色を塗ると思っていた」という。

《高木啓》

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