【ヒョンデ インスター 新型試乗】「クルマはパッケージング」だと再認識、ただ唯一の“弱点”は…諸星陽一

ヒョンデ インスター
ヒョンデ インスター全 23 枚

ヒョンデのコンパクトEV『インスター』は、日本の道路事情とのマッチングがとてつもなくいいクルマだった。

【画像全23枚】

◆クルマはパッケージングである

私はつねづね「クルマはパッケージングである」と言い続けている。必要な人数が乗れ、必要な場所に行くための道路を通れ、一般的な駐車場に駐車できる。これらはクルマを使ううえで最低限必要な項目だ。もちろん、スポーツドライブが好きな人がエンジンのフィーリングがいいクルマ、ハンドリングがいいクルマを選ぶことは否定しないし、スポーツカーに乗るためにさまざまな制約を受けるのはしかたないし、スポーツカーはそうした制約以上の魅力にあふれている。

こうしたことがベースにあるので、必要以上にサイズの大きなボディに乗ることは、クルマの使い方としてなにかズレていると感じる。これもキャンピングカーなど、移動の際よりも駐車してからの快適性を重視しているクルマならもちろん許容できるのだが、普段使いではやはり適度なサイズというのはもっとも重要な性能だと考える。

ヒョンデ インスターヒョンデ インスター

インスターに試乗後、私がヒョンデの技術者に最初に掛けた言葉は「こんなクルマを造られたら、日本の自動車メーカーはどうすればいいんですか?」だった。日本のために設計されたのではないかと思うくらいにピッタリとマッチしているじつに扱いやすいクルマだ。なにしろサイズがいい。インスターの全長×全幅×全高は3830×1610×1615(mm)で、日本の道路幅にピッタリだ。

じつはインスターは韓国では「軽車」と呼ばれるジャンルに含まれる『キャスパー』をベースとしている。軽車は全長×全幅×全高が3600×1600×2000(mm)でエンジンは1リットル以下という規格。インスターはBEVとするために若干サイズアップを図っているが、それでもかなりコンパクト。日本では『カローラ』も『シビック』も3ナンバーとなってしまっているだけに、このサイズはうらやましい限りだ。

◆バッテリー容量そのものよりも注目したい「充電性能」

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乗ってみて、なにか安っぽさを感じるかと言えばそんなことは一切ない。日産『サクラ』や三菱『eKクロスEV』、かつての三菱『i-MiEV』もそうだったが、軽自動車などの小排気量エンジンはEV化によって多くの欠点が補われる。軽車のキャスパーには乗ったことがないがインスターのパワートレインに不満はない。

スタートでアクセルペダルを踏み込むと力強く加速する。加速時のサスペンションの動きもよく、フロントが持ち上がるような感覚などがない。中間加速も十分にトルクフルで、もたつく先行車を抜く際などもスッとスマートに抜ける。これは一般道レベルの速度域でも首都高レベルの速度域でも同じ。

回生量の調整もステアリングに装着されたパドルスイッチで3段階に可能。回生しないコースティングやワンペダルで停止まで行えるモードもあり、シーンに合わせて使い分けができる。

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試乗コースが横浜のみなとみらい周辺だったため、車幅が狭いことの優位性を試す場面はあまりなかったが、左車線を走っていて駐車車両がいる際に車線変更をせずにそのまま通過できることもしばしば。都市部ならばボディが大きく、大排気量のエンジンを積んでいるクルマよりも目的到達時間は早いだろう。

シャシー性能もいい。ボディサイズが小さいクルマはピッチングなどが多めになりがちだが、そうしたこともなく走りは安定している。ハンドリングに関しても十分なレベルが確保され、不安や不満を感じることはなかった。コーナリングに関しても意外なほどの安定感を誇る。

EVは航続距離が心配という方も多いだろうが、試乗車の「ラウンジ」と中間グレードの「ボヤージュ」は49kWhのバッテリーを積み、WLTCモードでの航続距離は458km。3分の2しか実現できなくても300kmは走る、充分ではないだろうか? しかもインスターは充電受け入れ性能も高く、150kW充電器ならば30分で10→80%の充電が可能だという。EVを選ぶ際は航続距離に直接関係してくるバッテリーの容量を気にしがちだが、もっと重要なのは充電性能だといっても過言ではない。

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◆インスター唯一の弱点は

インスターは日本の軽自動車をも驚かせるシートアレンジを備えるところも特徴的だ。4人乗りのためリヤシートは左右がそれぞれ独立して前倒し可能。ここまでは当たり前だが、さらに助手席も前倒し可能。しかしさらに驚くべきはここから。なんと運転席も前倒し可能で車内全体がフラットになる。

ラウンジの価格は357万5000円とミドルSUVにも手が届く価格なのだが、EVの場合は補助金が付く。インスターの場合は56万2000円だ。補助金を引いたラウンジの価格は301万3000円。これに自治体の補助も加わるのだからかなり魅力的である。

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さて、では心配事はないのだろうか?

じつはある。最大の心配事はディーラー網の整備状況だ。ヒョンデはオンライン販売をメインとしており、ディーラーを設置していない。メンテナンスを受ける場合はオートバックスやモータースなどが拠点となる。エンジン車のようにオイル交換が必要なわけではなく、メンテナンスも楽なEVだが、板金塗装などディーラーでも下請けに出すような作業であってもディーラーに依頼したいというのが日本人なので、日本人の気質からいえばディーラーがないのは大きな弱点だと言える。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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