アステモは、インホイール式EV向けに新たに12インチサイズの空冷ダイレクト駆動システムを開発したと発表した。本システムは軽自動車などの小型車に搭載可能であり、新たな空冷構造により連続定格5.5kWという高出力を実現している。
インホイール式EVのダイレクト駆動システムは、モーターをホイール内部に内蔵し、駆動力を直接車輪に伝達する方式である。これにより車両性能の向上や車室空間の拡大が可能となり、次世代モビリティの中核技術として世界的に注目されている。
アステモはこれまで、日立製作所の研究開発グループと共同で、16インチおよび19インチの油冷式ダイレクト駆動システムを開発してきた。しかし、小型車や二輪車への搭載に際しては、油冷方式で必要となる冷却配管や補機類の追加が課題であった。一方、空冷方式を採用するには、小型ホイールの放熱面積の制約という技術的障壁が存在した。
今回開発された12インチシステムでは、モーターの回転部外周全体に放熱フィンを配置した「ロータリーフィン構造」を採用。これにより放熱性能を大幅に向上させ、同サイズ帯ではトップクラスとなる連続定格出力5.5kW、最大出力13kWを達成した。これを4輪に搭載することで、電動軽自動車に求められる駆動性能を十分に満たすことが可能である。
この新たな空冷構造は、日立の研究開発グループとの共同開発によって実現されたものであり、冷却機構の簡素化によりレイアウトの自由度向上とコスト削減にも貢献している。
また、本システムには、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーンイノベーション基金事業/次世代モーター開発支援を受けて開発された「易解体集中巻コイル」を採用。このコイルは高占積率を実現しつつ、分解性・リサイクル性にも優れており、資源循環型設計に適している。なお、この技術は16インチおよび19インチモデルにも適用されており、今回12インチモデルの追加により、小型車からSUVまでの多様な電動モビリティへの対応が可能となった。
この12インチ空冷ダイレクト駆動システムは、2025年5月21日からパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2025」にて展示される予定である。
アステモは、インホイール式EV向けのダイレクト駆動システムをはじめとする先進技術の開発と提供を通じ、持続可能な社会と人々の豊かな生活の実現に寄与していくとしている。同社は2030年頃の実用化を目指しており、今後の電動モビリティの進化において重要な役割を果たすことが期待される。