【BMW M135 新型試乗】かつての「タイプR」を思わせる“硬さ”も愉しめる人なら…中村孝仁

BMW M135
BMW M135全 39 枚

よく「終のクルマ」の話を聞く。最近はフェイスブックでその話題が頻繁に出て来る。そうしたクルマの多くがかなり硬派なスポーツカーだったり、スーパーカーだったりするのは少々驚きである。

【画像全39枚】

まあ、こうしたクルマを終のクルマとする人は、たぶんまだ壮年期以前の人なのだと思う。何故なら、十分に体が機能して、反射神経が優れ、動体視力も優れているからなのだと思う。

ところが現実はそう甘くなくて、「終のクルマ」ということは、それこそ免許返納一歩手前で乗るクルマとなるかも知れないわけで、その頃は硬派なスポーツカーや超が付く性能を誇るスーパーカーなど、とても扱える代物ではない。

もちろん、のんびり走るから大丈夫と言うならそれも良いだろうが、旧いランボルギーニだったりフェラーリだったりは死ぬほどクラッチが重く、それこそ渋滞など遭遇したら、足は悲鳴を上げ、場合によってはつってしまうことだって十分に考えられるから、そうしたクルマは終の一つ前かそれよりさらに前にした方がいい。

◆かつてのシビックタイプRを思わせるハードな足

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前置きが長くなったが、新しいBMW『M135』はもし手に入れて乗ろうと考えている人は、終のだいぶ前に乗ることをお勧めする。もちろんこのクルマには重いクラッチも無いし、ステアリングは指で回るレベルの軽さ(パワステのない私の旧車は死ぬほど重い)だから、そうした心配は無用である。しかし、歳が行ったドライバーには結構深刻なほど腰を痛める危険が潜む乗り心地を持つ。

まあ、手っ取り早く言えば、とにかく足のセッティングがハードなのである。かつて同じような思いをしたのはホンダ『シビック タイプR』で、記憶では4ドアモデルだったので2007年にデビューしたモデルだと思うが、まだ壮年期だった筆者でもその足の硬さには閉口したものだ。今回のM135はそれに近いといったら少し言い過ぎかもしれないが、まあ、その方向性のチューニングが施されたセッティングと言えよう。

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とにかく路面の凹凸は見事に拾うし、その突き上げ感は相当なものだ。だから、やはり心して乗るクルマだと思う。M135をお借りする以前に乗った『120』も、乗り出しではかなり引き締まった足回りだと感じたが、あれは慣れてしまえばとても心地よく、特に高速に乗ってからのフラットライドには感銘を受けるレベルだった。ところが、M135の場合は、高速の目地を拾ってもガツンと来るレベルだから、正直な話心地よさはどこまで行ってもなかった。

一方で端から少し飛ばしてワィンディング気持ち良く走り抜けたいと、覚悟してクルマと対峙すれば、これはとても面白い。大体そうした時は、いつもよりも強めにシートベルトを手繰り上げて体をシートに一体化させるし、ステアリング操作とシフト操作に神経が行くので、路面の突き上げなどによる方向性の乱れをステアリングでコントロールするのに忙しいから、乗り心地など気にしない。しかし、残念ながらいつもそうとは限らないわけで、正直な話オールラウンダーなクルマではない。

◆初採用の7速DCTに備わるブーストモード

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エンジンはかけた瞬間から、その気にさせるドスの効いたエクゾーストサンドを撒き散らす。最近の高性能車に在りがちな、エンジンをかけた瞬間にボワンと周囲に響き渡るサウンドを響かせるそれに似て、一瞬エンジン音が大きくなるがすぐにミュートがかかるので、さほど近所迷惑にはならない。

トランスミッションは今回から7速DCTが採用されている。要するにミニと同じメカニカルトレーンになった。これ、パーツ共有によるコストダウンとみるか、より直感的にシフトできるDCTのスポーティーさを優先したことによるものと解釈するか、考え方は色々あると思うが、個人的には後者であると思いたい。

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その証拠というわけではないが、パドルシフトのマイナス側、つまりダウンシフト側を長押しならぬ長引すると、ブーストモードという瞬間的にターボブーストを上げる機構が備わる。

基本的にはアクセル開度85%以上で本来の機能を作動させるようだが、街中でこのマイナスを長引すると、ダウンシフトされるのは当たり前だが、その瞬間に明らかにパワフルになった加速感を示してくれる。その後パドルを使ってマニュアルシフトをすると、明確にクルマの動きが異なるが、どうも時限装置のようなものらしい。

◆「Mコンパウンドブレーキ」の鋭さに感動

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感動したのはブレーキである。試乗車には「Mコンパウンドブレーキ」というオプションのブレーキが装備されていた。通常のブレーキよりも軽量で、ドリルドローターでスポーティーな印象を見た目で与えるのだが、感動するのはその効き味の鋭さである。ある程度踏力を加えて行った時の制動力は明らかに並みではない。因みにこのクルマを返却した後、他メーカーのクルマに試乗して帰宅したが、帰り際そのブレーキ制動力の差をいやというほど思い知らされた。やはり加速もいいが、止まってくれる安心感は絶大である。

腰を悪くするかと思ったほどの乗り心地だったが、これを思いっきり愉しみたいと、あるいは愉しめると感じた人には是非乗っていただきたい、硬派で楽しいクルマである。残念ながら世代間ギャップを感じさせるモデルでもある。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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