音を濁す“敵”はドアの中にいる!? デッドニングで手に入れる静寂の質感[カーオーディオ・素朴な疑問…インストール編]

「デッドニング」の施工例(使用部材:フェリソニ・LDM-02)。
「デッドニング」の施工例(使用部材:フェリソニ・LDM-02)。全 3 枚

カーオーディオシステムを進化させることに興味を抱きつつも“分かりづらさ”を感じて二の足を踏んでいるのなら、当連載を参考にしてほしい。ここではクルマ用の音響システムに関する難解な用語や仕組みについて解説している。現在は「インストール」について説明している。

◆「デッドニング」とは、ドア内部を「響きにくくする」作業!?

さて、カーオーディオ機材の取り付けのことはインストールと呼ばれているのだが、その作業メニューの中には専門的な工程がいくつか含まれている。というわけでまずはスピーカーの取り付けに関する“分かりづらい”事柄について解説している。

前回は、ドアスピーカーの土台となるパーツ、「インナーバッフル」について説明したが、今回は「デッドニング」について深堀りしていく。

ちなみにデッドニングという言葉を直訳すると、「響きにくくすること」という意味となる。というのも「デッド」とは音響的なシーンでは、「響きにくいこと」を意味する。なのでデッドニングとはまさしく、ドア内部を「響きにくくする作業」だと考えても間違いではない。ちなみに「響きやすい」というニュアンスを伝えたいときには、「ライブ」という言葉が使われる。

で、「響きにくくする」作業が必要となる理由は以下のとおりだ。カー用のスピーカーはスピーカーユニットが裸の状態で売られていて、その状態ではまだスピーカーとして半完成品だ。なぜならホーム用のスピーカーはスピーカーユニットが箱に取り付けられた状態で売られている。つまりその箱もスピーカーの一部だ。

「デッドニング」の施工例(使用部材:フェリソニ・C-1)。「デッドニング」の施工例(使用部材:フェリソニ・C-1)。

◆クルマのドアの最大の弱点は、「鉄板が薄いこと」!

で、クルマにおいてはドアが「箱」の役割を果たすのだが、ドアはスピーカーボックスとしては設計されていないので音響的なコンディションがあまり良くない。なのでそこのところを改善する必要があり、なのでデッドニングが実行される。

なおクルマのドア内部の音響コンディション的な最大の弱点は、「鉄板が薄いこと」だ。ゆえに、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーによって簡単に共振してしまう。そして共振すれば異音が出て、スピーカーの表側から放たれる音を濁してしまう。

かくして、デッドニングではこの共振を止めることが主な作業内容となる。なのでドア内部の音響的コンディションを上げる作業のことが、デッドニングと呼ばれているというわけだ。

しかし作業内容は、それにとどまらない。

「デッドニング」で使われる部材の一例(フェリソニ・C-1)。「デッドニング」で使われる部材の一例(フェリソニ・C-1)。

◆デッドニングでは、スピーカーとしての完成度を上げる工程をさまざま実行!

では、デッドニングではどのような作業が行われるのかを具体的に説明していこう。まず行われるのは、「背圧の処理」だ。背圧とはスピーカーの裏側から放たれる音エネルギーのことを指すが、これが諸悪の根源となる。なので、このパワーを減衰させることが目指される。スピーカーの真裏に吸音材を貼り、それが実行されるのだ。

さらに背圧は、スピーカーの振動板に跳ね返り振動板の動きにストレスを与えることとなるので、スピーカーの裏側に拡散材が貼られることもある。そうすれば振動板に跳ね返るエネルギーを少なくできる。

また、ドアのインナーパネルに穴(サービスホール)が開けられている場合には、そこが塞がれる。そうすることでドア内部の密閉性を上げられる。このようにして、スピーカーとしての完成度が高められていく。

今回は以上だ。次回もスピーカーの取り付けに関する“分かりづらい”事柄の説明を続行する。お楽しみに。

《太田祥三》

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