次世代モビリティの発展を支える矢崎総業が見せた、高電圧化・高速通信・環境に対応する革新的な技術や製品…人とくるまのテクノロジー展2025

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矢崎総業ブース(人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA)
矢崎総業ブース(人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA)全 48 枚

矢崎総業は、パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(会期:5月21日~23日)に出展。「つなぐ技術、未来を創る」のテーマを掲げ、電動化や自動運転などに向けた次世代モビリティ技術を披露した。

自動車産業は今、大きな変革期の真っ只中にある。それは電動化や自動運転技術、コネクテッドカーの進化だけにとどまらず、車両購入後もユーザーが機能アップできるSDV(Software Defined Vehicle)の台頭により、車両開発の考え方までも根本から変わりつつあることを示す。ここで必要とされるのが、高電圧技術や高速通信技術、環境負荷軽減技術など、次世代モビリティを支える基盤技術である。

そうした中で矢崎総業は、自動車用ワイヤーハーネスやメータで培ってきた「つなぐ技術」のノウハウを活かし、次世代モビリティの実現に向けた数々のソリューションを提供している。今回の展示会ではその集大成とも言える革新的な製品・技術を披露した。

矢崎総業の技術が一目でわかるモックアップ「YAZAKIソリューション」

「YAZAKIソリューション」「YAZAKIソリューション」

会場に向かうと真っ先に目に入ってきたのが「YAZAKIソリューション」と呼ばれるモック展示だ。これはクルマが動作する際に、電源・通信・車内外の情報が、ワイヤーハーネスやECU、センサを介して、どのように動いてどのように乗員に知らせるかを可視化したもので、ここでは2030年頃の家族がマイカーを利用するシーンを想定してアニメーション化し表現している。

このモックに盛り込まれているのは、バスバーやCCSなどの高電圧製品、高速通信線などの通信製品、ヘッドアップディスプレイや照明などのHMI製品といったラインナップだ。それぞれが将来を見据えて設計されているものの、単体では具体的にどんな役割を果たすのかはわかりにくい。このモックで展開されるアニメーションではその役割が系統立てて理解できるように展開されている。

「YAZAKIソリューション」「YAZAKIソリューション」

このアニメーションに登場する家族が、クルマで出かける際に様々なシーンに遭遇。その時クルマの中ではどんなことが起きているかが具体的に紹介されるのがポイントとなる。手前の透明有機ELディスプレイ上ではその解説映像が流れ、同時にモック上ではワイヤーハーネスを模したイルミネーションを使って電源・通信の流れが展開される。5分程度のデモではあるが、これを見ることでシステムごとの果たす役割における、矢崎総業の製品群の機能が手に取るように理解できる。つまり、このモックは出展内容の導入部のような位置づけとなっていたのだ。

「YAZAKIソリューション」のアニメーション

このモックの製作を担当した矢崎総業の技術開発室 技術統括センター グローバル技術企画部でRM推進チームリーダーを務める伊藤 健氏によれば、「過去にも社内から矢崎の技術全体が一目でわかるような展示物を求められ検討していたが、それが今回の展示でようやく実現できた」そうで、その甲斐あって来場者からも「わかりやすい」との評価が得られたという。

素晴らしいと思ったのは、アニメーションと背後で展開されるイルミネーションとのリンクが巧みであったこと。つまり、発生中の事象に対してどう対応すべきかが一目で把握できたため、そのリアルな記憶の下でブース全体の各展示の理解を深めることが可能になったのだ。その意味でも、この「YAZAKIソリューション」を見てから各展示を訪れる流れが定着していくことを期待したい。

車載バッテリーの省スペース化に貢献する「無線CCS」

「無線CCS」「無線CCS」

大容量化/高密度化が進む電動車のバッテリーに対して、省スペース化を提供するのがCCS(Cell Contacting System)である。

バッテリーの大容量化/高密度化は電動車の走行距離を延ばすために、そのニーズは着実に高まっている。その一方でバッテリーパック内の部品については統合化を進めることによる省スペース化の実現は待ったなしの状態だ。そこで今回の展示では、この要求に応えるために、すでに量産済みで柔軟性に富んだFPC(Flexible Printed Circuits)を用いたCCSと、無線回路を統合する取り組みを披露した。

この取り組みの最大のポイントとなるのが、この実現によってバッテリーパック内での高い省スペース化を実現することだ。量産は2029年を予定する。

これまでは複数のバッテリーモジュールとバッテリー監視ECUをワイヤーハーネスで接続することが欠かせず、そのために配線スペースが必要であったが、この無線化はワイヤーハーネスそのものが不要となることから、空いたスペースに電池を増設することが可能になり、走行距離の拡大への貢献が期待できる。また、ワイヤーハーネスを接続する作業の手間もかかっていたという。その接続作業の迅速化につながる上に、正確なデータ収集もリアルタイムで可能となり、効率的なエネルギー管理にも貢献する。

通信の高速化に対応する「10G/25Gbps 光通信コンポーネント」

「10G/25Gbps 光通信コンポーネント」「10G/25Gbps 光通信コンポーネント」

これは高速での通信を実現するために、従来の電気からより広帯域の光通信ケーブルへの転換を図っていくことを目的に開発が進められているものだ。すでに1Gbpsの光通信コンポーネントは開発済みで、欧州を中心とした市場での展開が始まっている。今回の出展で提案しているのは、さらに高速化を狙う「10G/25Gbps 光通信コンポーネント」。量産目標は2030年頃を想定する。

今後、自動運転が進むにつれて多くのセンサが必要となり、それと同時にクルマの中のネットワークは複雑化していくことは避けられない。特にセンサとしてカメラの役割が重要度を増していくことが予想され、その数が増えていけばそのデータ量から従来の電気による通信ケーブルでカバーするのは難しくなっていく。ワイヤーハーネスの増加による重量増も考慮しなければならないだろう。

10Gbps 光通信コンポーネントは、主としてカメラ用として使われることを想定。この高速化により高画質な映像データを瞬時に伝送できる。一方の25Gbps光通信コンポーネントは、それらのデータをECUに届ける幹線用光通信ケーブルとしてより高速化を狙う。さらに見逃せないのは、この光通信コンポーネントは複雑な配索経路にも対応できる上に、従来のワイヤーハーネスよりも軽量であること。車両の軽量化に貢献し、二酸化炭素排出削減にもつながるという。

車内空間をアップデートする「アンビエント照明システム」と「パーソナルデザインメータ」

「アンビエント照明システム」「アンビエント照明システム」

「アンビエント照明システム」は、ADAS情報の通知及び、空間演出によって快適で心地よい室内空間をもたらすものとして出展された。背景にはADASの進化や車内UX向上に伴い、そのニーズが急速に高まっていることがある。一方で、車両開発においては筐体やシステム構造の複雑化もあって、コスト増も大きな課題ともなっている。

今回出展したモックでは、ドアトリムに動きのある多彩な照明効果を展開することで、わかりやすい情報通知と多彩な室内空間演出を実現し、システム全体としてトータルコーディネイトしたことがポイントだ。

具体的には面発光部分で色の動きをアニメーション化し、ライン発光部分で光を流したり、グラデーション化し、それらを連動させた表現が可能。これにより、ADASなどの車両情報を乗員にスムーズに伝えるとともに、運転状態やオーディオなど他のシステムとの連携により人の感性に訴える照明演出につなげるのだ。

また、これらはLEDユニットで展開されるが、矢崎では照明の光源部分を共通化しているのも大きな特徴となっている。ニーズに応じた意匠レンズと組み合わせることで各部位の照明として使用でき、これは開発スピードの短縮や開発設計費、設備投資の抑制にもつながっていくというわけだ。

さらに、液晶メータを自分好みにカスタマイズ可能できる「パーソナルデザインメータ」のコンセプトも提案。スマートフォンのアプリと連動し、背景やメータのスピード表示のデザイン、文字のフォント、レイアウトなどを変更することができる。

「パーソナルデザインメータ」「パーソナルデザインメータ」

家族の写真やお気に入りの風景を背景に設定したり、気分に合わせてメータのデザインを変更することが可能で、これまでにない楽しみが広がる。

法規対応表示、速度、テルテールなどレイアウト禁止エリアはディスプレイ上下にきちんと確保されており、背景色に応じて文字のコントラストを調整し、コントラストが悪くなる色に制限をかけることで視認性を担保するなど、安全性にも配慮している。

リサイクル材料を活用しカーボンニュートラル活動を推進

矢崎総業は2050年のカーボンニュートラル達成に向け、材料開発部門のカーボンニュートラル活動を推進し様々な取り組みを展開中だ。中でもその柱となっているのは、自動車用ワイヤーハーネスを代表とするあらゆる自動車関連製品への対応。今回の出展ではその中から3つの取り組みを披露した。

「コネクタ用ケミカルリサイクルPBT樹脂の活用」は東レとの共同開発で進めているもので、科学的に分解し再重合したケミカルリサイクルPBT (ポリブチレンテレフタレート)を用い、これまで課題だった品質安定性を、現在流通しているPBT材料と同等とすることを目指している。さらに従来と同じ生産工程で成型することも可能とし、これにより材料製造時のCO2排出量は従来のPBT比で18%削減される見込みだという。開発目標は2030年搭載を目指す。

「コネクタ用ケミカルリサイクルPBT樹脂の活用」「コネクタ用ケミカルリサイクルPBT樹脂の活用」

「リサイクルポリアミド樹脂材を活用した耐熱用プロテクタ部品」は、エアバッグ製造工程で発生する基布端材「リサイクルポリアミド66樹脂」を利用したもの。材料メーカーで素原材料の受け入れ検索を実施し、そこで材料特性や環境負荷物質の有無を確認。素原材料は管理番号を付与することでトレーサビリティも容易としている。この活用で、従来比でCO2約70%削減が可能。開発目標は2030年搭載を目指す。

「リサイクルポリプロピレン樹脂材を活用した非耐熱用プロテクタ部品の開発」「リサイクルポリアミド樹脂材を活用した耐熱用プロテクタ部品」「リサイクルポリプロピレン樹脂材を活用した非耐熱用プロテクタ部品の開発」「リサイクルポリアミド樹脂材を活用した耐熱用プロテクタ部品」

「リサイクルポリプロピレン樹脂材を活用した非耐熱用プロテクタ部品の開発」では、市場から回収した洗濯機の洗濯槽の「リサイクルポリプロピレン樹脂」を部品開発に活用する。市場で使用済みの洗濯槽を再資源化したものであり、新たにポリプロピレンを製造するよりも約20%CO2削減が可能となる。ここでも材料メーカーで素原材料の受け入れ検査を実施し、管理番号によるトレーサビリティも容易。開発目標は2028年搭載を目指す。

車載使用済み電池を活用したリユース蓄電システム「B∀TTERFLY」

「リユース蓄電システム用製品『B∀TTERFLY(バタフライ)』」「リユース蓄電システム用製品『B∀TTERFLY(バタフライ)』」

環境負荷軽減技術関連製品としては「B∀TTERFLY(バタフライ)」にも注目が集まった。これは劣化状態が異なる使用済みバッテリーであっても、それらを混在して活用できる「リユース蓄電システム用製品」として開発が進められているものだ。

現在、電動車の普及が進む中で、課題となってくるのが大量に排出される車載使用済みバッテリーをどう適正処理するかだ。特に車載バッテリーは車両ごとに使用環境が異なるため劣化状態は様々で、それが再利用の難しさにつながっていたという。

「B∀TTERFLY」ではそこに独自の制御技術を投入し、劣化状態が異なるバッテリーを混在使用しても電池の能力を最大限に引き出せるようにした。つまり、最も劣化したバッテリーに性能が制約されることなく、全ての電池エネルギーを効率的に引き出し、かつ安定した電力供給を可能にしたというわけである。

さらに設置環境に応じて蓄電容量や出力が調整でき、ストリング単位での直列・並列接続にも対応するなど、家庭用から産業用まで幅広い用途に適用できる蓄電システムとしているのもポイントだ。現在は再エネ活用と持続可能な社会の実現に向けて実証実験が進められており、2030年までには事業化していく予定だという。

※B∀TTERFLYは矢崎総業株式会社の登録商標です

林業を通して地域に根付いた新規事業を展開中

“モビリティと社会をつなぐ”をテーマとし、グループ会社の「四国部品」が林業を通して地域に根付いた新規事業を2年前にスタートさせた取り組みも紹介された。

矢崎としてはワイヤーハーネスの生産を通して発展してきた会社だが、その生産拠点を国内から海外に移した際、それまで国内で働いていた人たちの職を確保することがこの事業をスタートさせるきっかけになったという。すでに日本全国で介護や食品といった事業も展開しているが、今回の出展ではその中から林業を通したビジネスについて解説した。

矢崎総業の林業に関する取り組みを紹介矢崎総業の林業に関する取り組みを紹介

具体的には、木のおが粉と樹脂を混ぜたペレットを自動車部品に利用する取り組みや、木の苗を保護するためのネットの開発について展示を行った。ペレットについてはトヨタ車体の「TABWD(タブウッド)」を用いて、ともに取り組んでいる自動車用部品への活用方法を説明。ペレットに樹脂材を混ぜて複合材とすることで、植物の構造や性質、成分を学びつつ、工業材料として使いこなすことで環境負荷低減を目指すとした。

木のおが粉を樹脂と混ぜたペレット「TABWD(タブウッド)」を自動車部品に利用木のおが粉を樹脂と混ぜたペレット「TABWD(タブウッド)」を自動車部品に利用

また、林業に力を入れている高知県梼原町を中心とした「梼原令和の森林づくり事業」とするコンソーシアムを立ち上げたことについても触れ、トヨタ車体や矢崎総業をはじめとする12社が林業を通して様々な取り組みを続けてくこともアピールした。

矢崎総業の「人とくるまのテクノロジー展2025」特設ページはこちら

《会田肇》

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