毎年恒例、夏の怪談シリーズ。いったいどうやってこの話は伝わったのでしょう。。。
ある深夜、都内を流していたタクシー運転手のCさんは、終電を逃したらしい女性を乗せた。白いワンピースに、少し濡れた髪。どこか陰のある顔立ちだったが、礼儀正しく、静かな人だった。
「○○霊園の近くまで、お願いします」
Cさんはその地名に少しだけ違和感を覚えた。こんな時間にお墓参りはしない。が、霊園の近くに住んでいる人もいるだろう。Cさんはすぐに出発した。
走り出してしばらく、ぽつぽつと女性が話しかけてきた。
「こういう時間、怖くないですか? 私は昔、車を運転してて不思議な体験をしたんです」
その女性が、ある山道で、夜、車を走らせていたら、誰もいないはずの後部座席から声がした。振り返ると知らない人が座っていた。慌てて車を止めようとしたが、そのはずみにハンドルを誤って崖下へ転落。遠くで聞こえていた救急車のサイレンがだんだん小さくなって……。それが自分の“最期”だったという。
Cさんは、静かに相づちを打ちながら聞いていた。だが、ある疑問が浮かぶ。
「……でも、もし亡くなったのなら、その話、どうして知ってるんです? どうして話せるんですか? おかしい、ですよね」
しばらくの沈黙。そして、後席の女性は言った。
「だって私、死んでるんです。それに……。あなたももう、死んでいるんですよ」
Cさんの背筋に冷たいものが走る。後席を見ると、そこには誰もいなかった。ハッとしてブレーキを踏んだが車は止まらない。気がつけば、自分が運転しているタクシーは、道路ではなく、霧のかかった、見たことのないトンネルの中を走っていた。
それからCさんのタクシーが、Cさんを乗せず、運転手なしで夜道を走っていたという目撃談が相次ぐようになった。後席には、白い服の女性が乗っていたという……。
【怪談】最後のひとり
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