スズキの人気トールワゴン『ソリオ』開発責任者が語る、「顔だけじゃない」マイナーチェンジの真価

スズキ ソリオバンディット(左)とソリオ(右)
スズキ ソリオバンディット(左)とソリオ(右)全 12 枚

スズキのトールワゴン『ソリオ』と『ソリオバンディット』。1月におこなわれたマイナーチェンジでは、フロントフェイスを大幅に変更するとともに、パワートレイン系も刷新。商品力を大幅にアップさせている。

競合ひしめくコンパクトカー市場ながら国内販売トップ20(2025年1-6月で2万9000台を販売)と、安定した人気のソリオとソリオバンディット。その魅力はどんなところにあるのだろうか。

開発責任者に話を聞いた。

◆ソリオとソリオバンディットの「距離感」

スズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括部チーフエンジニアの飯田茂さんスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括部チーフエンジニアの飯田茂さん

開発責任者のスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括部チーフエンジニアの飯田茂さんは、入社時から13年程エンジン設計で主にエンジンマウント等の開発に携わり、その後商品企画で様々な車種を担当してきた。

現行ソリオは2020年の販売開始以来、計画台数は達成してきた。そこで、「コンパクトなハイトワゴンの王道として、しっかりとお客様に満足度や安心感を与えることに軸に置きながらも、市場からの要望を確実に克服する」ことが今回の改良においての大きな意図だったという。

ユーザーの満足度や要望について飯田さんは、「コンパクトハイトワゴンの競合と比較すると、パッケージはほぼ同列ですが、燃費や安全性能、快適性の評価は高いので、今回その長所はさらに伸ばしました」と話す。

スズキソリオスズキソリオ

一方の要望はソリオとバンディットの“距離感”が近いことにあった。

「バンディットは迫力が少ないとか、高級感が足りない、もう少しカスタム感が欲しいというご意見をいただきました」(飯田さん)

そこでバンディットに関してはソリオとは大きく異なって見えるデザインを採用した。これはユーザー層にも関係する。バンディットはミニバンからのダウンサイザーのほか、若いユーザーも多い。「これはおそらくデザインの効果でしょう」と飯田さんは分析する。

一方ソリオは「ある程度標準のデザインですが、しっかりとした形をしていますので、幅広い層に支持していただいています」とのこと。そこでより距離感を持たせるようにしたのだ。

また飯田さんは、新型のソリオとソリオバンディットのデザインを見た時に、「世の中の流れとしてもダウンサイザーは多くなることは理解していましたので、多分(バンディットは)このくらいやらないと受け入れられてもらえないだろうなと思いました。また、バンディットだとちょっと厳しいという方には、スタイリッシュなソリオがありまので、絶妙なバランスで両方が機能してると思っています」と高く評価していた。

◆エンジン変更、乗り心地もさらにアップ

スズキソリオスズキソリオ

今回の商品改良で飯田さんがこだわったもののひとつに安全性と快適性があり、これは長所を伸ばすポイントでもあった。

特に安全性では、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせ、検知対象を車両や歩行者、自転車、自動二輪車とし、交差点での検知にも対応した衝突被害軽減ブレーキ、“デュアルセンサーブレーキサポートII”を搭載。そのほかブラインドスポットモニターや電動パーキングブレーキ(EPB)も採用した。

飯田さんは、「ユーザーの年齢層が高めであったり、運転に不慣れな方もいらっしゃったりしますので、こういった運転支援から快適装備はかなり充実させました」と話す。

スズキソリオスズキソリオ

また、今回パワートレイン系の変更においては、『スイフト』に搭載されているZ12E型エンジンとCVTを採用したことで、NVHに関しても新たに手が加えられた。飯田さんは、「4気筒から3気筒に変わりましたので、音、振動に関しては、入力側がかなり大きくなりました。そこをお客様が感じないように、必要な制振・防振、遮音は関係各所としっかりすり合わせをすることで、お客様が3気筒だとわからないようなクルマに仕上げています」と、開発時代のノウハウが生かされたようだ。

さらに、乗り心地も向上している。EPBを搭載することで車重が変わったため、ショックアブソーバーとコイルスプリングに手を入れ、バネ下のチューニングをする際に足回りの適合をおこなったという。実は、「少しふわふわしている乗り心地があまり高い評価を得ていない部分でもありました」と飯田さん。そこで足回り以外にも、「構造用減衰接着剤などをプラットフォームや各ドアの開口部などに使うことで剛性が高まり、より足がしっかりと落ち着いて動くようにしています」と語った。

今回の改良ではどうしてもバンディットのフロントマスクに目が行きがちだが、パワートレイン変更に伴うチューニングをしっかりと行うことで、より高い快適性も手に入れた。

スズキ ソリオバンディットスズキ ソリオバンディット

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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