来たる12月19日、オンラインセミナー「【独り大喜利】どうなる!? 2026年の自動車業界~本格的な体験ベース価値への移行~」が開催される。セミナーに登壇するのは、スズキマンジ事務所 代表(株式会社デンソー 技術企画部 CX)の鈴木万治氏。
今回のセミナーは以下のテーマで進められる。
1.ファクトでふりかえる2025年の自動車業界
2.BEVで進化したところ、変わらないところ
3.2026年の注目トピック(家電とクルマの融合、イマーシブ)
4.2026年の自動車業界動向予測
5.質疑応答
セミナーの開催に先立ち、セミナーの見どころを鈴木氏に聞いた。
スマートフォンメーカーのクルマづくりとは
中国のEV市場では、シャオミやファーウェイといったIT企業が主導するEVが急速に台頭している。シャオミは車両製造を北京汽車に委託し、ファーウェイは既存の自動車メーカーに対し、自社の先進運転支援システム(ADS)やOS(HarmonyOS)の供給とともに、車両全体のプロデュースを提供し、共同で新たなブランド(AITOなど)を立ち上げている。

ここで注目すべきは、シャオミもファーウェイもスマートフォンのメーカーであり、スマートフォンと車載OSを共通化し、双方を緊密に連携できるような仕組みを取り入れている点だ。
「『スマホがファーウェイだから、車もAITOがいいな』というように、家電のように自動車が選ばれるようになる可能性があります。生活の中で最も長く触れるタッチポイントはスマホなので。そこを押さえているいる家電企業は立場が強いですよね」

「特にデジタルネイティブな若い世代は、車に乗ったからといって、日常的に使っているスマホと異なる操作体験(UI/UX)を望んでいません 。スマホと車内のUI/UXが同じであることを望むはずです」
車内(インカー)と車外(アウトカー)の体験の壁を取り払い、シームレスなデジタルカーライフを提供することこそが、このようなIT企業の戦略である。AppleがCarPlayの機能を拡張したCar Play Ultraを発表し、GoogleがGoogleビルトインの普及を図る動きも、この文脈上にある。そしてファーウェイはHarmonyOSによって、スマートフォンからウェアラブルデバイス、そしてEVまでを連携させるエコシステムを構築しようとしている 。
「この勝負に勝てるのは、AppleかGoogleか、あるいは独自OSを持つファーウェイか、という話には現実味があると言えるでしょう」
EVのコモディティ化と「イマーシブ体験」という新価値
このようにIT業界から自動車産業へのアプローチが強まる一方で、EV化は製品そのものの「コモディティ化」という、自動車メーカーにとっての別の課題も浮き彫りにしている。
「エンジンの時代には燃費や排ガス、ハイブリッド技術など開発項目がたくさんあったのに対し、バッテリーEVでは、モーターもインバーターも大きく差別化できる要素ではなく、実質的に電池くらいしか技術開発競争の場所がなくなってしまいました」
「バッテリーEVは、従来のようにエンジン音やフィーリングによって走行性能を差別化することが難しくなっています。目隠しをしてEVに試乗したら、どのメーカーの車か判別できないでしょう。つまり、すでに大きくコモディティ化が進んでいると言えます」
ではどこで差別化するのか。新たな差別化の軸として浮上しているのが、走行性能以外の「体験価値」であると鈴木氏は示唆する。
「従来のような『走る・曲がる・止まる』ではなく、0-100km/h加速に要する時間や航続距離でもない。運転者も同乗者も、その車に乗っている間にどんな体験を得られるかが、とても大事になってきています」
この『乗車体験』へのアプローチとして目立っているのが、中国系メーカーが進める「車室内エンターテインメント」の進化だ。車内に大型ディスプレイやプロジェクターを搭載したり、イマーシブオーディオのドルビーアトモスや高画質映像のドルビービジョンを積極的に採用したりする動きがそれにあたる 。
「いずれにしろ、車は今までの『走る・曲がる・止まる』から、『イマーシブ(没入)体験』の方向に変わっていくというひとつのトレンドがあるのではないでしょうか」
日本メーカーの課題
この新しい価値軸である「イマーシブ体験」の追求において、特に音響体験(ドルビーアトモスなど)への対応という点で、欧米や中国のメーカーに学ぶところがあるのではないかという指摘がある。
「欧州メーカーや中国メーカーは、乗車体験の一環として積極的に取り入れています。ただ現状では、日本では、そのような取り組みがみられないように感じます。カーオーディオを未だに車内アクセサリーとして捉えているからなのか、そこは危機感を感じるところですね」
事実、中国市場では、車両価格20万元(約400万円)程度以上のクラスでは、イマーシブオーディオの代表のひとつであるドルビーアトモスへの対応が一般的になりつつある 。欧米勢も、メルセデス・ベンツ、アウディ、ボルボ、キャデラックなど採用競争と言ってもよい取り組みを広げている 。日本では、ソニー・ホンダ・モビリティのAFEELAが対応を表明している。

しかし、日本でドルビーアトモスを標準採用している車種はほとんどない。先日開催されたJapan Mobility Showでも、会場内で「Dolby Atmos対応」を積極的にアピールしていた企業はなかったように感じる。なぜ、これほど日本メーカーの関心が少ないのか。コストや技術的な問題が理由ではないはずだと鈴木氏は説明する。

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