【マツダ CX-5 新型】後席はマツダ車トップクラスの快適性、研ぎ澄ませた「3つの価値」とは

マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)
マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)全 13 枚

マツダは3代目となる新型『CX-5』のプロトタイプを「ジャパンモビリティショー2025」に出展した。2026年には日本にも導入が予定されているが、その開発の狙いや特徴はどういうものか。開発責任者に話を聞いた。

【画像】マツダ CX-5 新型のプロトタイプ

◆後席の居心地の良さ

マツダ CX-5 新型(写真は欧州仕様)マツダ CX-5 新型(写真は欧州仕様)

3代目では特に後席の居住性向上も大きな目標としてあったようだ。実際に座ると2代目と比較し居心地の良さが格段に違っていた。解放感があるにもかかわらず、ある程度の包まれ感もあるのだ。

マツダ商品開発本部主査の山口浩一郎さんは「狙い通り」と満足した様子。「居心地が良いのは空間の作り方、例えば肘置きの位置から始まり光の当たり方まで含めて計算してたうえで、人にとって居心地の良い空間を目指しています」と話す。

さらに新型は、「後席がこれまで以上の特徴があります」とも。「HMIは音声認識ができますが通常は前席ですよね。実は子供が後ろから○○の曲をかけてといったらかかるんです。つまり、後席からでも音声操作ができるんです」。これを実現するためには、「後席の静粛性を作り込まないとできません。実はマツダ車の中でもトップクラスの静粛性です」と自信を見せる。

◆CX-60との違い

マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)

そうすると『CX-60』との差別化が気になるところ。山口さんは、「全長がCX-60よりも50mm短いんですがリア席は50mm広いんです。ではCX-60はその長さをどこに使っているのか。直列6気筒のFRですから、そこに空間とお金をかけているので、そこに価値を見出すお客様向けに。CX-5はファミリーで使う、後席もよく使うというお客様に向けています」と説明。

同時にコンセプトもはっきり分かれてるという。インテリアでは、「CX-60は本物の素材により、より上質、より高級にメッキを用いてきらびやかにというテイスト。CX-5はメッキはあまり使わないで、その分シンプルでクリーン、何となく居心地が良くて、操作も気軽にできるというイメージです。いい方を変えると取っ付きやすいという印象」とコメントし、ヒエラルキーではなく、横並びで好きな世界感を選べるような位置づけだ。

マツダ CX-5 新型のデザインスケッチマツダ CX-5 新型のデザインスケッチ

◆研ぎ澄ませた「3つの価値」

さて、開発にあたって山口さんは、「“エモーショナルデイリーコンフォート”というワードを設定しました。競合も含めてこのワードを突き詰めるとどうなるか、というところで出てきたのがパッケージの使いやすさです」という。

「現行も売れ続けて良いクルマですが、市場からもうちょっと後席が広い方がいいという声が大きくなってきており、それがグローバルだと数倍の量で、だから他車に乗り換えますという方が増えてきています。これはユーザーのライフスタイルが変わっただけではなく、競合が大きくなっているのでそちらに目移りをしてしまっているからなんです」とのこと。そこから見えたのは、「CX-5はC SUV市場のど真ん中だったところから、実は少し遅れてしまっていたこと。今回は再び真ん中に合わせていくというのがサイズアップに繋がっています」と説明。

マツダ CX-5 新型のデザインスケッチマツダ CX-5 新型のデザインスケッチ

そうすると、今回一番やりたかったことは、室内空間をより広く作りたいということだったのか。山口さんは、「パッケージの面ではそうです」としたうえで、「日常の使い勝手を良くする面でも進化させたいんです。端的には、HMIを含めたコックピット周りです。なので単に大きければ良いということではないのです」。

「まずは居心地の良い空間にしながら、リア席からでも音声認識で楽しく使えるということ。つまり3つの価値(新世代価値:HMI/コネクティビティ・ADAS、エモーショナル:魂動デザイン・人馬一体の走り、デイリーコンフォート:パッケージ・ライドコンフォート)を磨き上げたのがやりたかったことです」とコメントした。

◆人生の一部になるようなクルマに

新型CX-5の開発を取りまとめたマツダ商品開発本部主査の山口浩一郎さん新型CX-5の開発を取りまとめたマツダ商品開発本部主査の山口浩一郎さん

山口さんはCX-5の開発主査を務めるにあたり、CX-5に乗ることで、ユーザーにどう感じて欲しかったのだろうか。「日々の生活で使い続けて、愛着を持って長く乗ってもらいたい、それだけです」という。「それはスポーツカーでもいいのかもしれませんが、やはりライフスタイルの変化も含めてアフォーダブルに使い続けられて愛着を持てる。そういうクルマを目指しています」と述べる。

その思いに至るには原体験があったそうだ。「私は昔、『RX-8』のボンネットの設計をしていました。それが生産中止になった後にあるユーザーのからお手紙をいただいたんです」と明かす。

「その方が子供の頃、お父さまがグリーンの『カペラ』のロータリーに乗っていました。それが大好きで廃車するときに泣いちゃったんだそうです。その後、絶対にこれが欲しいとグリーンの『RX-8』を買ってくださった。それも14年経って廃車になった時に、ディーラーで、これまで守ってくれてありがとうという思いから泣いてしまったと書かれていました」

「これこそが使い続けて愛着を持ってもらい、人生の一部になっているということなんです。たまたまRX-8でしたが、一番のボリュームゾーンのある市場にいるCX-5が、そういった人生の一部になるようなクルマになるといい、そういうクルマを作りたいんです」と語る。つまりCX-5には愛がこもっているわけだ。

その愛が最も詰まっているのはどういうところか。山口さんは、「居心地の良さです。格好良いとか刺激があるとかそういうところではなく、使いやすさはありますがそれ以上に乗ってほっとして、自分とマッチした良い感じだとクルマ側も理解してくれているみたいな。そういうところはポリシーとして突き詰めています」とコメント。

走らせてみないとわからない部分が多そうが、山口さんは「キーワードは軽やかで安心感があって、気持ちよく走る。切れのいいハンドリングとか、大馬力でトルクがあるというよりも気持ちよく走れるというキャラクターにものすごく注力しました」という。

◆セダンユーザーも納得の走り

マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)

最後に山口さんが開発責任者に任命された時にどう思ったかを聞いてみた。なぜならポリシーが明確で、ブレがないと感じたからだ。

「正直にいって、大変な仕事が来たなと。僕はボディ設計でボディを作るという仕事がオリジンです。その後、開発の副主査、開発領域をまとめるリーダーになり今回に至ります。確かにプレッシャーは強かったです。なにしろSUVを所有したことがないんです」と山口さん。普段はロータリー車を2台所有されており、「1台は自己責任でRX-8。もう1台は『RX-7カブリオレ』です。SUVはロールを嫌って足を固めるので、乗り心地悪いと思いながらこれまでは開発をしていました」と正直に述べる。

マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)マツダ CX-5 新型(プロトタイプ)

しかしCX-5に関しては「自信を持って、セダンに乗っている方にもこれいいじゃんと感じてもらえる動きをするクルマができましたので、そこは期待してください。普通に乗って、なんだかすっきりした走りだね、なんでこんな気持ちいいんだろう、という感じの乗り味がすると思いますよ」と語った。

ボディ設計を長年続けてきた実績があったからこそSUVでもセダンと同様の走りが実現できたのだろうし、要求したハードルはかなり高かった印象だ。そうするとそれほど遠くない将来、山口さんのガレージに初めてのSUV、3代目のCX-5が並ぶことになりそうだ。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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