中国EVメーカー、驚異の“マイナスCCC”経営…矢野経済研究所 西村玄 氏[インタビュー]

中国EVメーカー、驚異の“マイナスCCC”経営…矢野経済研究所 西村玄 氏[インタビュー]
中国EVメーカー、驚異の“マイナスCCC”経営…矢野経済研究所 西村玄 氏[インタビュー]全 4 枚

来たる11月27日、オンラインセミナー「中国主要自動車メーカー10社の財務分析と今後のシナリオ」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社矢野経済研究所 インダストリアルテクノロジーユニット エネルギー&モビリティグループ 研究員である西村玄氏。

今回のセミナーでは、以下のテーマを取り上げる予定だ。

1. 2025年の中国自動車業界
2. 主要自動車メーカーの財務基礎データ比較
3. 主要自動車メーカーの収益性比較
4. 主要自動車メーカーの財務健全性比較
5. 異業種からの参入、Huawei・Xiaomiの戦略
6. 財務分析を踏まえた今後のシナリオ
7. 質疑応答

世界が息をのむスピードでEVシフトを加速している中国。EVの販売台数や技術革新のニュースが日々メディアを賑わしているが、その急成長を支える自動車メーカーの財務状況はどうなっているのか。

株式会社矢野経済研究所 インダストリアルテクノロジーユニット エネルギー&モビリティグループ 研究員の西村玄氏は、中国主要自動車メーカーの財務分析を通して、中国自動車メーカーの特異な経営実態が浮かび上がってくると指摘する。

財務健全性から見る攻めの姿勢

西村氏は、中国の主要自動車メーカー10社(民営、国有、EV新興メーカー)の財務諸表を分析し、比較対象としてトヨタ自動車をベンチマークに置いた。そこで見えてきたのは、特に新興メーカーにおける特徴的な指標だった。

「今回の分析では、財務健全性を測る代表的な指標を10個ほどピックアップし、一定の目安を超えて好ましくない、あるいは危ない水準のものを抽出しました」

そこでリスクが目立つのが、新興EVメーカーであるNIOだ。

「NIOに関しては、投資がかなり嵩んでいる状況です。短期の財務健全性を示す流動比率や、長期の固定比率を見ても、全般的に非常に低い。さらに自己資本比率も1割台と、かなり自己資本が少なく、バランスシートが健全とは言えない状況です」

NIOは独自の電池交換式ステーション網の構築や、高級車路線、さらには欧州市場への早期進出といった戦略を推し進めてきた。だがその先行投資が財務を圧迫し、足元では「販売台数も他の新興メーカーに比べて伸び悩んでいる」という厳しい現実に直面している。

一方で、飛ぶ鳥を落とす勢いのBYDはどうだろうか。西村氏は、BYDもまたNIOとは違った形でリスクを取っていると指摘する。

「BYDはかなり「攻めの経営」をしています。ウズベキスタンやタイ、ハンガリーにも海外工場を建設し、すでに大きな会社でありながら、さらにアクセルを踏んで拡大していくという投資を続けています」

またBYDは、2025年3月に株式市場から約1兆円という大規模な資金調達も実施している。NIOのような逼迫した水準とは質が異なるが、BYDもまた、成長のためにリスクをとった経営に挑んでいることがわかる。

中国OEMにおけるマイナスのCCCとは

西村氏は、中国OEMの特徴のひとつに特異なキャッシュフロー構造があると語る。

「中国のOEMの経営を分析すると『入銭は早く、出銭は遅く』という、ひとつの特徴があることがわかります」

「入銭」とは現金が入ってくる早さ、すなわち販売代金の回収のことだ。彼らの現金回収はものすごく早い。そして「出銭」とはサプライヤーへの部品代金支払いのこと。これが非常に遅いという。

この現金の「入」と「出」のサイクルを示すのが、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)である。CCCが短いほど運転資金の効率が良いとされる。一般的な製造業であれば、今回ベンチマークとしたトヨタの106日という数字でも十分に優秀なのだが…、

「驚くべきことに、今回分析した中国メーカー10社とも、このCCCが全部マイナスになっています。これは、商品を販売する前にお金が現金として入っているという状態を示しています」

「また「出」についても、トヨタは約52日でサプライヤーに代金を支払っているのに対し、中国のOEMは100日、あるいは200日というのがざらにある」

200日といえば実に半年以上だ。「それでキャッシュの出る速度を遅めている。レバレッジを効かせた経営ができるひとつの理由です」

このような長い支払いサイトは、裏を返せば「OEMがサプライヤーに対してバイイングパワーを持っている」ということであり、商慣習のひとつということもできるだろう。

支払いサイト「60日ルール」の波紋

しかしながらこのような商慣習は、サプライチェーンの末端へと負担が及んでいる。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

+ 続きを読む

アクセスランキング

  1. 次期トヨタ『GRスープラ』はハンマーヘッド顔に!? 450ps級ハイブリッドで2027年登場の可能性
  2. 【トヨタ RAV4 新型試乗】おそろしくスムーズなハイブリッド、まさに「至れり尽くせり」…中村孝仁
  3. スズキ『カプチーノ』復活の可能性!…軽規格を維持、FRレイアウトも継承か
  4. トヨタ『エスティマ』が“走りのミニバン”として復活か…アルファードと棲み分けは
  5. ホンダ23車種、ガソリンが漏れるおそれ…6月掲載のリコール記事まとめ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. ETASとエレクトロビット、ADAS向け統合ソフトウェア基盤を発表…人とくるまのテクノロジー展 2026
  2. ボッシュがなぜ「しろくまくん」を買収したのか? “熱とAI”が変える、SDV時代の勝算
  3. BMW工場にヒューマノイド「Figure 03」導入…フィジカルAIで全身協調制御
  4. BYD12万人の技術力と日本市場への本気度、補助金逆風下「ラッコ」の戦略とは…BYD Auto Japan 東福寺厚樹 代表取締役社長[インタビュー]
  5. バックミラーは「銀座4丁目」だった…電子ミラー最大手「ジェンテックス」が握る車内センシングの主導権
ランキングをもっと見る