住友ゴムとNEC、AI活用で材料配合予測と新材料探索を実施…開発期間を大幅短縮

疑似量子アニーリング技術を用いたタイヤ材料の配合予測
疑似量子アニーリング技術を用いたタイヤ材料の配合予測全 2 枚

住友ゴム工業と日本電気(NEC)は11月26日、2025年7月に発表した戦略的パートナーシップに基づき、世界で競争力のある研究開発基盤の構築に向けた活動を加速すると発表した。

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両社は2030年までに変革すべき注力テーマを定め、NECが有するAIをはじめとした先端技術や研究者の高度な技術知見と、住友ゴムの研究開発力を組み合わせることで、世界的に競争力のある研究開発基盤の構築とビジネスの早期実現を目指す。

今回、研究開発基盤の高度化に向けた先行的な取り組みとして、タイヤ材料分野に関する2つの実証を実施した。実証の結果、タイヤ材料分野へのAI活用が開発プロセスの高度化・効率化を加速する可能性を確認した。

最初に、疑似量子アニーリング技術を用いたタイヤ材料の配合予測を実施。高度な性能が求められるプレミアムタイヤ用ゴム配合の開発には、多種多様な素材の配合比率を最適化することが不可欠である。

本実証ではまず、住友ゴムの有する過去の実験データから、素材の種類と配合量が材料特性に与える傾向を分析・抽出した。次に、抽出した本傾向をもとに、膨大かつ複雑な組み合わせの中から高速に最適解を導くことが可能なNECの疑似量子アニーリング技術を活用して、目標とする特性を満たす素材の種類と配合候補を網羅的に探索した。

その結果、住友ゴムが過去に開発したプレミアムタイヤ用ゴム配合と、本探索で予測した複数の配合案の特性を比較したところ、目標とする特性項目の90%以上を満たすゴム配合案を導出できることを確認した。また、非熟練者が同等の配合案を導出する際に要する時間と比較して、約95%短縮できることを確認した。

本技術を活用することで、通常タイヤからプレミアムタイヤまで、すべてのカテゴリーのタイヤ用ゴムの配合開発を、熟練度に関わらず効率化できることが期待される。

次に、AIエージェントと材料探索ソリューションを用いた新材料の探索に取り組んだ。先進的な新材料の探索には、複数分野にまたがる膨大な文献の調査が求められるが、異なる分野から有益な材料やその組み合わせを発見することは非常に困難である。

本実証では、高度な性能が求められるプレミアムタイヤの新たな材料探索を目的に、AIに関する知見が豊富なNECの研究者が住友ゴムの材料開発者と共創し、材料探索における思考プロセスや暗黙知を抽出して、それらを学習させたAIエージェントを構築した。そして、本AIエージェントが、生成AIとグラフベースAIを組み合わせた材料探索ソリューションを活用し、材料候補の絞り込みを行った。

具体的には、従来の知見だけでは開発が困難な、「水に触れるとタイヤ表面のゴムが軟らかくなるプレミアムタイヤのゴム材料」をモデルとして検証を行った。実証の結果、AIエージェントが様々な言語の公開文献から材料開発の知見を集約・解析するとともに、関連情報などの深い情報も自律的に収集し、候補材料の探索範囲を拡大した。また、重要要件の未反映や探索範囲の限定により手戻りが発生していた人手での作業に対し、探索にかかる期間を60~70%削減できた。これにより、精度と網羅性を向上させ、従来の手法では発見が困難だった新しい材料候補を効率的に見出せることを確認した。

両社は戦略的パートナーシップに基づき、2件の先行実証や他の技術も含めて活動を発展させる。2030年までにAIで高度化された研究開発スタイルを構築するとともに、社会課題の解決につながる新たな事業やイノベーション創出も目指す。

住友ゴムは長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」のもと、「ゴムから生み出す"新たな体験価値"をすべての人に提供し続ける」事を目指している。この戦略の一環として、新たな領域への挑戦を進めており、今回のNECとの戦略的パートナーシップ活動の中から当該領域におけるイノベーションを創出し、同社の使命「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる」を実践していく。

NECの新規事業開発は、「仕掛けよう、未来。」をキーメッセージに、スタートアップやパートナー企業との多彩な共創を通じた「NEC Open Innovation」を推進している。住友ゴムとの戦略的パートナーシップにおいては、研究開発部門が取り組む経営課題を起点に、研究開発と事業がつながる業務をAIによってデータ主導型に革新するソリューションの創出を目指す。

《森脇稔》

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