前回は3Dプリンターなどを使った最新のインストール技術を見られることを紹介した東京都のモービルサウンドテクノロジーのデモカーであるアウディ『S5』。後編の今回は、音楽プレイヤーやDSPなどデジタルシステムの構築についてチェックすることとした。
◆インターフェイスを介して純正システムから
デジタルデータを取り出し音源の質をアップ
MSTのショップデモカーからインストールのヒントを引き出している今回のcar audio newcomer!は、これから愛車にカーオーディオインストールを施そうとしているユーザーにも参考になるデモカーになっているので、各部に注目してみた。前編ではフロントスピーカーの取り付けに3Dプリンターを用いたり、レーザー加工機を用いたバッフル処理を施すなど、最新のインストール技術を投入した点に注目したが、今回の後編ではシステムデザインに着目する。
このカーオーディオシステムで注目なのはデジタルデータの扱いだ。音源としてはアウネのデジタルプレイヤーGTS2を用いているが、手軽に使える純正オーディオからの音源データも活用している。その場合、近年の純正オーディオシステムはデジタルデータを取り出しにくくなっている点に注意が必要だ。しかしデモカーでは、ありがちなハイレベル出力を利用するのではなく、インターフェイスを介してデジタルデータを取り出しているのが特徴となる。また車両やオーディオシステムによっては、コーディングを施した上でデジタルデータを取り出すことも行う。
このように質の高い音源データをデジタルのまま取り出してDSPに送り込むのが、同ショップでは定番の手法になっている。使い勝手の良い純正オーディオシステムを使いたいが、デジタルデータを直接取り出してDSPにインプットすることで高音質化したいというユーザーも多い。そんなニーズに対応できるように、モービルサウンドテクノロジーではデータ取り出しのアプローチを複数パターン用意している。
◆デジタル音源を試聴で体感することで
高音質化へのシステムアップの指標とする
デジタル音源による高音質化も、このデモカーの大きな聴きどころだ。近年は車載用のデジタルプレイヤーが普及しているが、デモカーではアウネのGTS2、さらにはクロックジェネレーターGTC2をシステムに組み込んでいる。エントリーユーザーがこのフルシステムを採り入れるのは費用面でも少々ハードルが高いものの、車載デジタルプレイヤーの効果やクロックジェネレーターの効果を体感するには、絶好の再生環境となった。
音楽プレイヤーには純正オーディオやカーナビ、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)、車載プレーヤーなどさまざまな選択肢があるものの、高品質な車載デジタルプレイヤーが音質面で大きなメリットを持つことを知るためには、デモカーで試聴しておくのが良いだろう。質の高いデジタルデータを音楽ソースに用いることの意味を理解することも、カーオーディオのスキルアップには欠かせない要素になっている。
MSTのデモカーでは、デジタルプレイヤーGTS2からの入力と純正オーディオからの入力をDSPでセレクトして利用するスタイルを採用。両方の音源再生を可能にすることで、日常の使い勝手と高音質再生を両立させている点もユーザーニーズにかなっている。
◆高機能DSPアンプを積極活用することで
システムのシンプル&高音質化を目指す
さらにこのデモカーは、DSPアンプを使ったシンプルなカーオーディオシステムを採用している点にも注目したい。近年はさまざまなチャンネル数やパワーアンプ出力を備えたDSPアンプが選べる環境が整ってきた。そこでデモカーに採用されたのがリゾルトのX8-DSPだ。
DSPに加えて8チャンネルパワーアンプを内蔵しているので、多彩なシステムにこれ一台で対応できるのが魅力となる。デモカーはフロント3ウェイをDSP内蔵アンプでドライブし、サブウーファーには別途パワーアンプを用意する比較的シンプルなシステム構成としている。将来的にシステムアップを考えているユーザーも、あらかじめ多チャンネルのDSPアンプを導入しておくことで、ムダなくステップアップすることができるだろう。
同ショップでもたびたび用いているというリゾルトX8-DSPは、音の良さとコントロール性の高さでも評価が高い。またDSPアンプであることから、単体DSPとパワーアンプを複数組み合わせてシステムが複雑化・大型化するのを回避できる点でも有効だ。シンプルなシステムで高音質を狙うなら、システム予算に合わせてお目当てのDSPアンプを選ぶのも賢い手だろう。
今回のMSTのデモカーはユニットのトータル金額が400万円オーバーになるが、これはあくまでデモカーとしての一例だ。ここまで見てきたように、システムやユニット選び、各部のインストールをどう構築していくかを考えるためのヒントが詰まった、オーディオカーになっている。自分にとって必要な部分を見極めて愛車をグレードアップさせるための指標になるので、一度試聴してみると良いだろう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後、出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務し、独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がける。カーオーディオ雑誌の編集長も請け負い、現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。

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