名古屋市の名鉄バスセンターは、ビルの3・4階にバスが発着する、変わり種のバスターミナルビルだ。いちど地区再開発計画が発表されてそこに含まれていたが、計画は再検証されることになった。工事期間中の仮設乗り場も発表されていたが、差し当たって現状維持だ。
道路を走るバスゆえに、ビルの3階、4階に発着するバスターミナルあるいはバス停は全国でも珍しい。3階にあるバスターミナルは東から広島バスセンター(広島市)、博多バスターミナル(福岡市)、西鉄天神バスターミナル(福岡県)。3・4階の2フロアを使うのが、東京のバスタ新宿と名古屋の名鉄バスセンターだ。
名鉄バスセンターは、名鉄名古屋駅の上階にあたる名鉄バスターミナルビル3・4階に入居する屋内・多層型バスターミナルだ。1967年、日本初の本格的なバスターミナルとして開業し、「東洋一」の規模と呼ばれた。
現在は乗り場、降り場、合わせて28バースを持ち、名鉄バスおよび共同運行の都市間高速バスおよび近距離高速バスと、県内の名鉄バスや三重交通等の路線バスが発着する大型バスターミナルだ。また空港アクセスに便利な中部国際空港直行「セントレアリムジン」、名古屋空港/あいち航空ミュージアム直行「県営名古屋空港線」(名鉄バス)も発着する。
渋谷マークシティ
4階1フロアのバスターミナルは見つからなかった。さらに上、5階となると、東京の渋谷マークシティのバス乗り場と、大阪市の南海難波駅上にあるなんば高速バスターミナルの2例で、6階以上の例はないようだ。渋谷マークシティは傾斜地に建つ複合商業施設で、バスターミナルの位置は東側からは5階になるが、バスの出入り口は西側にあり、4階の高さにある道路から5階へスロープでアクセスする形だ。なんば高速バスターミナルは、掛け値なしの5階だ。
ちなみに地下の例は極めて少なく、名古屋市の栄バスセンターが半地下、2022年に部分開業した東京のバスターミナル東京八重洲が地下2階だ。
南海なんば高速バスターミナル◆関連:名鉄名古屋駅再開発、人材不足で計画再検証へ
名古屋鉄道は12月12日、名古屋駅地区再開発計画および関連計画について、現行スケジュールを変更し、計画内容の再検証と見直しに着手すると発表した。
同社は2025年5月26日に事業化決定を公表し、解体・新築工事の施工予定者選定を進めてきた。しかし応募参加者から、人材確保が困難で現計画による施工体制の構築が難しいとして、2025年11月26日付で入札辞退届が提出された。これにより、解体工事の着手が大幅に遅延することが確実となった。
このため、解体着工時期は当初予定の2026年度から未定に変更された。また、2期本工事の竣工時期も2040年代前半から未定とされた。名古屋鉄道は、ただちに現計画の再検証および見直し検討に入る。
5月26日に発表された再開発計画は、リニア新幹線関連プロジェクトとの整合を図りつつ、名鉄名古屋駅の拡張による空港アクセス利便性の向上や、名駅南地区、ささしまライブ、栄など都心部への賑わいの波及をめざすものだ。
対象地は名古屋市中村区名駅1丁目2番他で、敷地面積は約3万2700平方メートル。計画建物は延床面積約52万平方メートル、地上31階・地下2階、最高高さ約172mとされ、商業、オフィス、ホテル、鉄道駅、バスターミナルなどの機能を備える構想である。
名古屋駅前を「スーパーターミナル・ナゴヤ」と位置付け、次世代モビリティへの対応や高速路線バスの集約に対応したバスターミナル整備も計画されており、今後の計画見直しの方向性が注目される。




