一般社団法人OPHISは10月、神奈川県川崎市在住の一般市民を対象に、救急車利用および民間救急サービスに関する市民意識・実態調査を実施し、その結果を「川崎市における医療搬送サービスに関する実態調査 市民アンケート調査レポート」として12月25日に公表した。
調査では、市民の約6割が近年の救急要請件数の増加を認識しており、救急車利用経験者の約2割が「本当に呼んでよかったか迷った」と回答した。いっぽう、民間救急サービスの認知度は28.5%にとどまるものの、約8割が肯定的に評価していることが明らかになった。
◆調査の背景
日本では超高齢化を背景に、119番通報による救急出動件数が継続的に増加しており、今後も増加が見込まれている。救急車の現場滞在時間の長期化や搬送困難事案の増加により、真に緊急性の高い事案への対応に支障をきたすケースが発生している。
高齢者の増加に伴い、病院間搬送など比較的緊急性の低い搬送需要が増加しているが、これらにも消防の救急車が出動せざるを得ない状況だ。その結果、心肺停止や重篤な外傷など、迅速な対応が求められる事案への影響が懸念されている。
いっぽう、救急車や救急隊員の増員には予算や人材確保の制約があり、従来の施策のみでは抜本的な解決が難しい。海外では、公的救急車と民間救急車を緊急度に応じて使い分ける仕組みが定着しており、日本でも同様の選択肢の検討が求められている。
川崎市は第3期実施計画で「消防機関の救急車に代わる転院搬送手段の調査検討」を掲げており、市民の意識や利用実態の把握が重要となっている。本調査は、その基礎データを得ることを目的として実施された。



