【BYD シーライオン6 新型試乗】この性能、装備で400万円。今年のDセグPHEV SUV市場は一波乱ありそう…中村孝仁

BYD シーライオン6
BYD シーライオン6全 59 枚

EVメーカーとして日本上陸を果たしたBYDが、満を持して日本市場に投入したPHEVモデルがこの『シーライオン6』である。

【画像】BYD シーライオン6

お初のPHEVと誤解されやすいかもしれないが、実はBYD、2008年に世界初のPHEVを市場投入したメーカーである。そんなわけだから、PHEVの制御などについても長い歴史を持ち、元々バッテリーメーカーでもある強みを生かし、ICE(内燃機関)とモーターの最適制御にかけては十分な実績があると言ってよいだろう。

そもそもBYDという自動車メーカーが操業を始めたのは2003年のこと。昨年はついにテスラを上回り世界最大のEVメーカーとなった。つまり創業からわずか20年ちょっとで世界一に上り詰めたともいえる。しかも2020年からたったの4年で販売台数は10倍に増えているというから、その拡大は日本のみならず、世界でも脅威と受け止められている。

すでに日本市場には4種のEVが投入されているが、いずれのモデルも洗練度も高く、性能的にも、質的にも、そして何より価格的に満足度が高いモデルが揃えられた。そんなわけだから、新しいPHEVであるシーライオン6も当然ながら高い期待値を持って市場から迎えられることになる。

◆航続可能距離1200kmを実現するスーパーハイブリッド

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世界的にはDセグメントのサイズ感を持つモデルで、3サイズは全長4775×全幅1890×全高1670mmと、幅広な全幅が目立つ。搭載するエンジンは1.5リットル直4DOHCの98ps。驚くことにこのエンジンのエネルギー効率は43%を超えるという。

といってもエンジンは終始黒子に徹し、走行の大部分はモーターによるEV走行である。搭載するバッテリーは18.3kwhのリン酸鉄バッテリー。この搭載量は似たようなサイズ感を持つ我が国の三菱『アウトランダー』よりも少ない。そしてあちらはより効率の良い三元系のバッテリーを搭載しているにもかかわらず、EV走行の航続距離はどちらも100kmを謳う。そして、PHEV車としての可能走行距離は1200kmを誇るのだから、少なくとも航続距離に関しては文句のつけようがない。

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実際クルマを借り出した時、その可能走行距離は1140kmを指していたから、やはり看板に偽り無しなのだろう。すでに『シール』や『シーライオン7』などで体験したインテリアの質感も上々である。少なくとも手の触れる周辺にハードプラスチックむき出しのパネルは見つからず、ステッチ模様をあしらったソフトパッドに覆われているし、触れる部分全てに高い質感を感じる。

「スーパーハイブリッド」と名付けられているPHEVは、基本的にシリーズハイブリッド、すなわちガソリンエンジンで発電し、モーターが駆動を司るが、より高いパフォーマンスを求めた場合はエンジンも駆動に加勢するパラレルハイブリッドとなる。いずれにしても、そのマネージメントが非常に優れているという印象で、だからこそリン酸鉄バッテリーで18.3kwhしか搭載していないにもかかわらず、100kmのEV走行を可能にするのだと思う。もっとも、今回試した限りでは100kmには届かず、バッテリーのみの走行はおおよそ70kmにとどまっていた。

◆静粛性の高さが売り、特別パワフルさは感じないが

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静粛性の高さもこのクルマの売りだろう。基本EV走行だから、静かなのはあたり前といえば当たり前なのだが、たとえエンジンがかかってもそれが唸りをあげるような状況には一度も遭遇しなかった。アクセルを目いっぱい踏みつけると、当然ながらエンジン音もそれなりに上がるのだが、それとて非常に軽微である。またこのクルマは遮音ガラスという、間にラミネート材を貼り込んだいわゆるダブルグラスをサイドウィンドーに使用しており、それも静粛性向上に寄与している。

パフォーマンスは決してパワフルという印象ではない。しかし、必要な時に必要なだけのパフォーマンスを発揮してくれるから、これ以上のパフォーマンスが必要だとは感じなかった。試乗中、前車を追い越す時に高速上でアクセルをぐっと踏み込んだ瞬間、隣のパッセンジャーシートから小さく「速っ!」という声が聞こえた。やはりEV車独特のトルク感あふれる加速がそう感じさせるのだと思う。因みに0-100km/h加速は5.9秒だというから、十分だ。

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さすがに1890mmも車幅があるので、室内は快適かつ広々としている。リアシートはリクライニングするので、後席の快適性も十分担保されていると思う。シートは合皮だそうだが、質感は高くホールド感も十分だった。しかもシートヒーター/ベンチレーターを完備し、ステアリングヒーターまで付く。

ACC(インテリジェント・クルーズコントロールと呼ぶ)も試してみたが、基本動作は問題ない。ただ、極めて細かくスピードをコントロールしているようで、前のいない状態で定常スピードでも、クルマが常にアクセルのオンオフを繰り返していることが明確に伝わってしまい、敏感なドライバーだと、常に前後に体の揺れを感じるかもしれない。

狙っているユーザー層による違いなのか、ステアリングフィールは正直凡庸である。日常的なドライブでは気にならないステアフィールだが、少しコーナーの多い道路で頻繁にステアリングを左右に振るような状況では、中央付近のルーズさを感じる。敢えてシャープにしていない設定という気もするが、クルマ好きにはもう少しシャープさがあって欲しいと思うレベルだろう。

◆国産同クラスと比較しても100万円近く安い

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それにしてもこれだけの性能と質感、それに充実した装備を持ちながら、FWD版の価格は398万2000円と、国産の同クラスと比較しても100万円近く安い。2026年のDセグメントPHEV SUV市場は、間違いなく一波乱ありそうだ。今回500kmを走っても可能走行距離が400kmを切らなかったところを見ると、うまくやれば1200kmとはいかないまでも1000kmは無休油、無充電で行きそうである。

残念なのは家庭用の200V充電ケーブルがオプションということで、車載されていなかったこと。このため、自宅での充電作業はできなかった。ただ、エネルギー管理の画面で、SOCを50%に定めていたことから、バッテリー残量がゼロになることはなく、仮に燃料切れとなっても30kmほどはバッテリーで走行できる安心感があった。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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