BEV一本槍の終焉と日本企業に訪れる新たな機会…KPMGコンサルティング プリンシパル 轟木光氏[インタビュー]

BEV一本槍の終焉と日本企業に訪れる新たな機会…KPMGコンサルティング プリンシパル 轟木光氏[インタビュー]
BEV一本槍の終焉と日本企業に訪れる新たな機会…KPMGコンサルティング プリンシパル 轟木光氏[インタビュー]全 3 枚

来たる2月4日、オンラインセミナー「カーボンニュートラル再設計2026:BEV一本槍の終焉と“新世界戦略マップ”~2030年に向けた処方箋~」が開催される。セミナーに登壇するのは、KPMGコンサルティング株式会社 プリンシパルの轟木光氏。

ここ数年、BEV一本槍で進んできた自動車産業は、現実の壁に突き当たり、調整が起きている。轟木氏はこの状況を「グローバルからグローカルへの転換点」と定義する。そしてこの変化こそが“遅れている”と揶揄されてきた日本の自動車産業にとっての好機をもたらしているという。

BEV一本槍の終焉

気候変動対策は、企業の最優先課題として絶対視されてきた。しかし2025年の現在、その潮目は変わりつつある。轟木氏はこう説明する。

「自動車産業における「持続性」、つまり経営のサステナビリティが問われている局面だと言えます。これまでは環境課題の解決、すなわちCO2削減が優先されてきました。1990年代の京都議定書からパリ協定へと続く流れの中で、世界中が気候変動対応に傾注してきました。しかし今、その方向転換が進みつつあります」

轟木氏は、欧州や米国で顕著になっている4つの変化を指摘する。それは 1. 気候目標維持の困難化 2. 経済合理性の優先 3.技術的中立性への回帰、そして4. 消費者の選択肢の確保、である。

「設定された高いCO2削減目標に対応するため、企業経営の難易度が高まっています。例えば、一定割合のBEV販売や内燃機関の禁止を義務付ける厳格な規制が求められた結果、欧州や米国の自動車メーカー自身の利益創出力が低下し、経営の持続性が損なわれています。その結果、環境への配慮も重要である一方、まずは経済も大事という方向に物事は流れています」

事実、2025年11月にブラジルで開催されたCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)では、その変化が見て取れる。

「COP30において、新興国は先進国に対し、年間1.3兆ドルもの気候資金拠出を求めました。会議自体が、気候変動対策だけでなく巨大な資金のやり取りや、駆け引きの場としての側面が強くなっているように感じます」

「こうした状況下で、企業経営においては、まずは規制とコストを見極めながら、確実に利益を確保するという、ビジネスの基本に立ち返りつつあります」

世界はグローカルを目指す

轟木氏が提唱する「グローカル」とは、グローバルな視点を持ちつつ、地域ごとの最適解を組み合わせる戦略だ。このグローカルの視点で世界の主要市場を見ると、2025年末現在の状況は極めてコントラストに富んでいる。

最も変化が激しいのはアメリカだ。トランプ政権下で、環境規制は事実上骨抜きにされている。

「米国の現状を端的に示すなら「脱・環境規制」です。象徴的なのが、One Big Beautiful Bill Actなど一連の施策で、BEVへの税控除が廃止される一方で、内燃機関を含めたCAFE(企業別平均燃費基準)の罰金は実質ゼロとなり、達成しなくても罰則がない状態になりました」

「さらに、カリフォルニア州などが独自に環境規制を設定できる権限(ZEV販売比率義務など)を無効化する法律も施行されました。今や米国では、強制力のあるCO2規制はほとんど存在しない状況です。その結果、補助金に依存していたBEVの販売は大幅に減速しています」

BEV推進を強力に進めていた欧州でも、状況は変化している。2035年に内燃機関車の新車販売を禁止するというあの方針はどうなったのか。轟木氏は、欧州委員会の軌道修正を説明する。

「2025年12月16日は、欧州委員会が2035年のCO2削減目標に関して実質的な方針転換を行った重要な転換点となりました。表向きはCO2の100%削減を維持していますが、その内訳が変わりました。テールパイプからの排出削減は90%とし、残りの10%をe-Fuelやバイオ燃料などのカーボンニュートラル燃料と低炭素鋼材の使用で相殺することを認める合算方式が提案されました。この方針転換により、2035年以降も、内燃機関が存続する可能性が高まっています」

さらに欧州では、新たな動きとして「M1E」という新カテゴリーの創設が提案されているという。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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