日産と大阪大、次世代自動車開発へ新技術研究…高速3Dプリンティング「AFSD」を実用化

日産と大阪大学接合科学研究所が共同研究部門を設立
日産と大阪大学接合科学研究所が共同研究部門を設立全 2 枚

日産自動車は2月3日、大阪大学接合科学研究所と「日産自動車 溶接・接合共同研究部門」を設立したと発表した。

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次世代の自動車開発で求められる高度な3Dプリンティング技術と接合技術の開発を加速させ、従来の開発工程や製造工程を効率化することを目的としている。

自動車産業において、使用される素材や材料の性能が向上し、多様化・複雑化も急速に進んでいる。こうした材料を効率的に高い品質で接合するためには、新たな接合技術の開発と実用化が不可欠だ。日産は、最先端の研究開発を推進することで、技術基盤の強化と競争力の向上を図っていく。

この研究部門では、主に二つの革新的な技術の開発と応用を進めていく。一つは、大阪大学接合科学研究所から生まれた高速3Dプリンティング技術「AFSD」の研究と実用化。もう一つは、同じく大阪大学接合科学研究所発の「高輝度X線透過型溶接・接合機構4次元可視化システム」を活用した接合技術開発の高度化だ。

AFSD技術は、金属の材料を溶かさずに摩擦熱を利用して固体のまま積層造形を行う固相積層技術の一種だ。従来の3Dプリンティング技術には高品質と高速加工の両立が難しいという課題があった。金属粉末にレーザーを照射して積層造形を行う3Dプリンティングは高い品質を得られるものの積層速度が遅いため社会実装が進んでいない。

一方、摩擦肉盛法は、基材に対して供給材を回転させながら加圧し、基材と供給材との間で発生した摩擦熱により供給材を基材の上に積み重ねていく技術で、従来の3Dプリンティング技術と比較して加工を10倍以上高速化できる。供給材も摩擦熱で温められるものの溶融しない温度で積層造形されるため、材料そのものが持つ強度や伸びも損なわれない。しかし、供給材の回転と加圧だけで積層造形を行うと、造形されない無駄なバリが発生したり、積層部内部に空洞や欠陥が発生したりするため、積層部の性能低下が課題となっていた。

今回研究開発する「AFSD」は摩擦肉盛法の一種で、供給材の周りにリング状の重りを設けることで供給材のバリや空洞の発生を抑え、高品質かつ高速での加工を可能とする世界初の技術だ。新型車の開発では試作のために型を準備して部品を製作するが、AFSD技術を活用することで大幅な開発期間の短縮が期待できる。少量多品種な部品でも、金型を作らずに製造できるため、従来のコスト構造を大きく変える可能性を秘めている。

もう一つの革新的技術、「高輝度X線透過型溶接・接合機構4次元可視化システム」は、2組のX線撮影システムを用いて1秒間に1000フレームの高速撮影を行うことで溶接中の材料内部の動きを高速度・高精度で観察できる最先端の画像診断技術だ。

自動車の製造工程において、鉄やアルミの溶接や接合は欠かすことのできない重要な工程である。しかし、これまで溶接中の金属の内部は直接目で確認することはできなかった。そのため、溶接や接合の原理の理解や、品質や工程の最適化には、多くの経験と試行錯誤が欠かせなかった。

一方で、カーボンニュートラルの実現や、クルマの運転性能、安全性の向上のために、車体で使われる材料の性能が日々向上しており、溶接や接合の難易度は飛躍的に高まっている。それだけではなく、高性能化した鉄、表面状態や内部品質の異なるアルミ板などに加え、電動化に伴い使用量が増える見込みの銅など、取り扱う材料の種類は増え続けている。日産はこのX線撮影システムを用いた画像診断技術を活用することで開発を効率化し、より短期間で新型車を世に出し、グローバルに競争力を高めていきたいと考えている。

このシステムを活用して様々な接合工法を観察することで、溶接中の材料内部で何が起きているかを直接理解できるようになり、材料の組み合わせ毎に最適な接合条件や、様々な接合方法の利点や使い方を論理的に評価できる。

日産自動車は、大阪大学との連携を通じて、これらの技術を実用化し、自動車の設計・製造工程の効率化と高品質化を実現することに注力していく。AFSDの高速・高品質な積層技術と、X線可視化システムによる溶接・接合工程の現象観察は、今後の自動車産業において、設計・開発の革新を促すだけでなく、コスト削減や環境負荷の低減、安全性の向上にも寄与し、自動車の構造設計や材料選定の新たな基準を生み出し、次世代の自動車技術の発展を牽引していくことも期待されている。

この研究開発は、自動車産業全体の競争力向上だけでなく、持続可能な社会の実現にも貢献するものである。電動化の推進や環境負荷低減の観点からも、軽量化や高効率な材料利用、そして高品質な接合技術は不可欠だ。日産自動車は、今後も革新的な技術の追求と産学連携を深化させながら、グローバルな競争の中でリーダーシップを発揮し、より安全・高性能・環境に優しい自動車の実現を目指していく。

《森脇稔》

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