バイクチューニングの定番「パフォーマンスダンパー」が意外な活躍、チェアスキー採用で「集中力上がった」

ヤマハ発動機の制振装置「パフォーマンスダンパー」(手前)と同装置を搭載したチェアスキーのフレーム
ヤマハ発動機の制振装置「パフォーマンスダンパー」(手前)と同装置を搭載したチェアスキーのフレーム全 5 枚

ヤマハ発動機が開発した制振装置「パフォーマンスダンパー(PD)」。クルマやバイクに装着することで、乗り心地の上質さを向上させるこのPDが、意外な場所で活躍している。雪山の急斜面を滑り降りスピードやテクニックを競うアルペンスキーだ。

【画像】パラアルペンスキー・座位クラスで活躍する鈴木猛史選手

下肢に障害のある選手が取り組むパラアルペンスキー・座位クラスでは、座席にスキー板が固定された補装用具「チェアスキー」が競技で用いられている。そのチェアスキーの部品にヤマハが開発したPDを取り入れ、世界の強豪たちとコンマ1秒を争う戦いに挑んでいるパラアスリートがいる。世界を舞台に活躍する鈴木猛史選手だ。

鈴木選手は2006年のトリノパラリンピック以降、アルペンスキーで6大会連続日本代表として出場。2026年3月に開催されたミラノ・コルティナパラリンピックでは回転種目で世界の強豪たちを抑え銅メダルを獲得した。

パラアルペンスキーワールド杯でパフォーマンスダンパーを搭載したチェアスキーで滑走する鈴木猛史選手パラアルペンスキーワールド杯でパフォーマンスダンパーを搭載したチェアスキーで滑走する鈴木猛史選手

ヤマハが開発したオイルとガスを使ったPDは、業界初の制振装置技術として高く評価されている。走行中の車体のごくわずかな変形や振動を穏やかに整え吸収するための装置で操縦安定性や快適性の向上に寄与する。ヤマハの二輪車向けには定番のチューニングとなっているだけでなく、トヨタやレクサス、ホンダ、三菱などの四輪車にも純正採用。2004年から量産を開始し、累計売上本数は300万本以上、現在14社142種(2025年9月時点)で採用されている。

チェアスキーへのPD採用に目を付けたのは、鈴木選手の出身地福島県の企業で自動車や航空、競技用バイクの精密部品を手掛ける金属加工メーカーの「エヌ・ティー・エス」社。同社では2023年から鈴木選手とチェアスキー改良に取り組んでいる。MotoGP Moto2クラスのコンストラクター経験などを持つ同社生田目將弘社長が、乗り物の制振性向上にPDが有効なことを把握していたことから、アルペンスキーの高速系「滑降」「スーパー大回転」種目で使うチェアスキー部品として採用が決定。二輪車向けに開発していた細径PDが搭載されたという。

パフォーマンスダンパーを持つ鈴木猛史選手(左)とエヌ・ティー・エス社の生田目將弘社長(右)パフォーマンスダンパーを持つ鈴木猛史選手(左)とエヌ・ティー・エス社の生田目將弘社長(右)

高速系種目は競技中の速度が100km以上出ることから、ライン取りの判断や安定した走行のためのリズム感などを保つ上でかなりの集中力が必要な種目。競技中の微細な振動が滑走時の恐怖心につながり、近年順位がなかなか振るわなかったという鈴木選手だが「PDを搭載してから細かい振動を取り去ることができ、集中力も上がり結果につながっている」と明かす。PD搭載後に挑んだ2026年1月開催のオーストリアでのワールド杯では、見事2位入賞を果たした。

鈴木選手は「PDを搭載したチェアスキーのフレームを使うようになったことで、若いころの競技への“攻め”の姿勢が再燃してきました。今は高速系種目で抱いていた恐怖心が無くなり、滑走時に楽しさすら感じています」と今後への意欲を語っている。

《レスポンス編集部》

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