【フェラーリ アマルフィ 新型試乗】瓜のつるに茄子はならぬ…優雅さと獰猛さを併せ持つ走りに触れたフェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【試乗記】
フェラーリの最新ラグジュアリークーペ「アマルフィ」に試乗。2+2のシートレイアウトを持つ優雅な一台は、その姿にたがわぬ快適な乗り心地を備える一方で、スーパースポーツにも比肩する高いパフォーマンスも秘めたマシンとなっていた。
伝統の“V8フェラーリ”の変遷
アマルフィはV8エンジンをフロントに積むフェラーリの最新モデルである。1973年に発表された「ディーノ308GT4」に端を発するフェラーリの市販車用V8は、30年以上の長きにわたり、リアミドシップのレイアウトとともに進化してきた。1975年にデビューした「308GTB」をはじめ、「F355」や「360モデナ」、さらに「288GTO」や「F40」といったスペチアーレモデルなど、これまで数多くのミドシップ・フェラーリの心臓部としての役割を担ってきたのである。
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その流れに新たな息吹を吹き込んだのが、2008年にデビューした「カリフォルニア」だ。フェラーリの新しいエントリーモデル――とはいっても日本メーカーのどの車種よりも高級かつ高額だったが(笑)――として設定された、開閉式ハードトップを持つ2ドアクーペである。
ボンネット下にはマセラティと共同開発した「F430」と同じ4.3リッターV8自然吸気ユニットを、前軸よりも後ろ、つまりフロントミドシップに搭載。駆動方式はFRで、変速機のデュアルクラッチ式7段自動MT(DCT)は、重量配分を最適化するためにトランスアクスル、つまりリアデファレンシャルの前に配されていた。
その後、このフロントV8フェラーリはエンジンを自然吸気からツインターボへと時代の変化に合わせ込みつつも、開閉式ハードトップ付きクーペというコンセプトは変えずに、「カリフォルニアT」「ポルトフィーノ」「ポルトフィーノM」へと進化していく。
ところが、ポルトフィーノMに進化する1年ほど前の2019年、ポルトフィーノが存在するにもかかわらず、同じV8をフロントに積んだ新しい2ドアクーペがラインナップに加わった。「ローマ」である。これにより、ポルトフィーノがMに移行したのち後継車がないまま終えんを迎えるまでの数年間、フェラーリには2つのV8・FRクーペが存在した。まさにFRクーペ好きにとっては夢のようなひとときが訪れたのである。
今回紹介するアマルフィは、そんなローマの後を受け継ぐモデルとして2025年7月にデビュー。2026年3月には、ローマ同様、ソフトトップを備えたオープンボディーのスパイダーがラインナップに加わっている。

よりフェラーリらしい装いに進化
古くは「348GTB」とF355、近年では「SF90」と「849テスタロッサ」といったように、フェラーリは伝統的に、内外装に大きく手は加えるものの、骨格やパワートレインなどの主要部位を2世代以上にわたって使い続けることが多い。アマルフィも同様で、アルミ製のボディー骨格をはじめ、3.9リッターV8ツインターボにトランスアクスル配置の8段DCTを組み合わせたパワートレイン、前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションなど、走りをつかさどるところはローマから継承している。もちろんそのまま使い回すわけではなく、改良がしっかりと施されているのは言うまでもない。
外観はフォルムにこそローマの香りを色濃く残すものの、多くの外板を新しくしたことでイメージを大きく変えている。そのなかでも変化の著しいのがフロントまわりだ。特徴的だったボディー同色グリルを廃した代わりに、左右のヘッドランプを薄いダーク系のガーニッシュでつなぎ、その下には大きめのバンパーグリルを備えるといった「プロサングエ」に似たデザインを採用。また、ボンネットの抑揚を抑えることでエンジンを収めるフロント部分の存在感を強調している。リアまわりも4灯式テールランプにローマの面影を残すものの、丸みを帯びたローマに対して、幅広さと安定感を強調した意匠へと刷新。さらに、ボディーサイドにキャラクターラインを追加するなど、前後まわりを含め、全体的にエッジの利いたシャープな印象へと改められた。近年のフェラーリとしては異例とも思えるほどエレガントなたたずまいを有していたローマに対し、アマルフィはいろんな意味でフェラーリらしいデザインへと生まれ変わったと言えるだろう。なお、リアエンドの中央部分には最大で250km/h時に110kgのダウンフォースを生む3段階切り替えの可変スポイラーを備える。
ローマの内装は、センターコンソールを高い位置に配することで運転席だけでなく助手席側の囲まれ感も強調したデザインだった。それに対してアマルフィは、デュアルコックピットと呼ばれる運転席側、助手席側ともに似たような形状を持つインパネと、左右の仕切りが低いセンターコンソールを組み合わせた、「12チリンドリ」風のデザインを採用している。メーターはローマ同様、15.6インチのディスプレイにすべての機能を集約。ほかの最新型フェラーリ同様、指針式のメーターは一切ない。一方インパネ中央のタッチパネル式のインフォテインメント用ディスプレイはサイズを10.25インチへと拡大しつつ、一般的な横長タイプとなった。またエンジンスタートスイッチをはじめ、ステアリングまわりを中心にスイッチ類はあまり操作性のよくなかったタッチ式から機械式に戻されている。これは歓迎すべき改良と言っていいだろう。

快適な乗り味と強烈な蹴り足
640PSの最高出力、3.3秒の0-100km/h加速タイム、320km/hの最高速といったように、スーパースポーツカーと肩を並べるほどの高い走行性能を有するアマルフィだが、まるで実用車のように乗りやすいことに驚く。操作感や乗り味は、フェラーリ独特のちょっと重みをともなうカチッとしたものだが、すべてがスムーズというか滑らか。ローマは優雅な見た目とは裏腹に、かなり硬派な乗り味だったが、アマルフィの振る舞いはそれよりもけっこう穏やかだ。走行モード切り替え機構の「マネッティーノ」で「コンフォート」を選んでいるときはもちろんだが、「スポーツ」や「レース」でもスプリングやダンパーは硬くなるけれど、ガツンとかドスンといった体に応える入力は皆無。高速道路で速度を上げたときなど、車体を安定させるために硬めの設定を選んでも我慢を強いられることはない。思わず「お見事」と手放しで褒めたくなるほどのバランスのよさを有している。スプリングの硬さやステアリングのギア比を考えると、どのシチュエーションでも「レース」で走っているのが一番バランスが取れているように感じた。
3.9リッターV8ツインターボは「F154」型を搭載。初出となったカリフォルニアTから連綿と受け継いできた名機だ。アマルフィに搭載するにあたり、回転数を個別で制御できるようにしつつ、最大回転数を17万1000rpmまで引き上げることでレスポンスを向上させたターボチャージャーを採用。最大トルクは760N・mのローマと同値だが、最高出力は640PSへと20PSの向上を実現した。また従来のものより1.3kg軽い新しいカムシャフトを採用し、エンジンブロックも再設計して1kg軽くするなど、さらなる軽量化も行っている。
試乗の往路はあいにくの雨模様で、路面は終始ウエットだったのだが、マネッティーノを「ウエット」にしていても、右足に込める力をほんの少し強めただけでお尻がムズムズとする。派手に滑り出しこそしないものの、けっこう神経を使う。そのくらい2000-4000rpmのトルクが分厚いのだ。ドライになった帰路でその真価を試してみたが、エレガントなクーペが痛快なドラッグマシンにひょう変。不用意にアクセルペダルを操作すると3速でもホイールスピンするほどの鋭い加速を見せた。しかも魅力は加速だけにとどまらない。4000rpmあたりからローマよりも100rpm高くなった7600rpmのレッドラインまでの吹け上がりの気持ちよさがハンパではない。まるでよくできた自然吸気の高回転型エンジンのように、強烈なパワー感を維持しながら一気に駆け上がっていく。アマルフィのV8は中回転域の強じんなトルクと高回転域での極上の回転フィールを併せ持った、とても欲張りなエンジンだ。

雨の日はご用心
「296GTB」から導入された、進化版の電動パワーステアリングを備えた操舵系はけっこうクイックで、ウエットでのレーンチェンジではちょっと気を遣うものの、曲がりくねったドライのワインディング路で鼻の向きを変えるのに絶大なる効果を発揮する。シャシーは最新の6.1にバージョンアップされた車体運動制御「サイドスリップコントロール(SSC)」を備えるが、シャシーそのものの能力が高すぎて、公道ではその真価を発揮する領域まで持っていくのは不可能。2+2のアマルフィでも、フェラーリのテクノロジーを味わうにはサーキットが必要だ。またバイ・ワイヤに最新の「ABSエヴォ」を組み合わせたブレーキも、強い制動を掛けたときの性能やフィーリングは抜群。ただ、踏み始めから割としっかり制動力が立ち上がるため、車両の姿勢を整えるために少しだけ制動力を掛けるといった微細な踏み分けはちょっと苦手なようだった。
ローマとはまた違った色気を持つスタイリングが魅力のアマルフィ。大人のためのエレガントな2ドアクーペで、乗り心地もその期待に応えるだけの高い性能を有している。しかし、ひとたびムチを入れれば、その走りはスーパースポーツカーのそれ。瓜のつるになすはならぬ。フェラーリはラグジュアリーな装いのモデルでもフェラーリなのだと、あらためて感心した。ただ、ウエットとの相性はあまりよくないので、雨の日に乗るときは十分にお気をつけください。
(文=新井一樹/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=フェラーリ・ジャパン)

テスト車のデータ
フェラーリ・アマルフィ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1974×1301mm
ホイールベース:2670mm
車重:1470kg(乾燥重量)
駆動方式:FR
エンジン:3.9リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:640PS(471kW)/7500rpm
最大トルク:760N・m(77.5kgf・m)/3000-5750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 91Y/(後)285/35ZR20 100Y(ブリヂストン・ポテンザ スポーツ)
燃費:11.2リッター/100km(約8.9km/リッター、WLTP複合モード)
価格:3418万円/テスト車=--円
オプション装備:スペシャルカラー<VERDE COSTIERA>/鍛造20インチペインテッドホイール/グロスブラックブレーキキャリパー/ブリヂストンタイヤ/ACC付きフロントレーダー/リアレーダー/アクティブマトリックスLEDヘッドライト/カーボンファイバーアンダードアカバー/スクーデリア・フェラーリ フェンダーエンブレム<エアブラシ>/マグネライドサスペンション リフター付き/カーボンファイバーリアディフューザー/カーボンファイバーフロントスポイラー/ブラックテールパイプ/フルプロテクションフィルム/インテリアカラー<TORTORA>カラーインテリア アルカンターラディテール TORTORA ALCANTARA2243/ロゴ入りカラーオーバーマット/フル電動シート/アルカンターラ センターシートストライプ:TORTORA ALCANTARA2243/ヘッドレスト跳馬刺しゅう:VERDE BELLAGIO1652/カラードアッパーダッシュボード:TORTORA130426/INTCレザー製シートセンター/アルカンターラ製インテリアカーペット:BLACK9441/カーボンファイバーステアリングホイール+LED/カーボンファイバーインストゥルメンタルメーターパネル/折りたたみ式リアシート背もたれ/自動防眩(ぼうげん)ミラー/STC1特注糸:VERDE BELLAGIO359/カーボンファイバーセンターコンソールリッド/パッセンジャーディスプレイ/日本語デジタル取扱説明書
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1663km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:306.0km
使用燃料:52.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.9km/リッター(満タン法)
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