ハーレーは“生き方”を売っている…創業家4代目ビル・ダビッドソンが語った「120年愛される理由」

ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏
ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏全 20 枚

ハーレーダビッドソンは、オートバイを製造するだけのメーカーではないのかもしれない。彼らが本当に売っているのは“生き方”だ。1903年、ダビッドソン兄弟とウィリアム・S・ハーレーによって始まったこのブランドは、120年を超えた今もなお、独自の存在感を放ち続けている。

【画像】ハーレーダビッドソンシティ西東京でファンや販売店と交流するビル

そう言うと、大袈裟に聞こえるかもしれない。だが、創業家4代目にあたるビル・ダビッドソン氏(以下、敬称略)の言葉を追っていくと、それが決して誇張ではないと気づかされる。

今回、ビルは13年ぶりに来日し、ハーレーダビッドソンシティ西東京(東京都西東京市)を訪問、ファンたちとの交流を楽しんだ。カスタマー、そして販売店からの意見に耳を傾けた。そんなビルに「なぜハーレーが120年もの間、支持され続けているのか」、そしてその根源とは何なのかを聞いた。

ビルは、設計を担ったアーサー・ダビッドソンのひ孫にあたり、1984年に入社。マーケティングやブランド戦略、コミュニティ活動の中核を担い、現在もCEOアドバイザー兼ブランドアンバサダーという重要な役職に就いている。

◆「RIDE」はスローガンじゃない、原点そのものだ

ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏

ハーレーが新たに打ち出したグローバルプラットフォームが『RIDE』だ。ローンチに合わせて公開されたビジュアルでは、バー&シールドのロゴが力強く前面に打ち出され、プロモーションビデオにはウィリー・ネルソンの名曲『On the Road Again』が流れる。老若男女が自由に走る姿が、じつにハーレーらしい空気をまとっていて、見ているだけでワクワクしてくる。

「これまでのメッセージは短命で、方向もバラバラだった。だから“私たちは何者なのか”をもう一度定義したかった。その答えが“RIDE”です」

ビルは迷いなくそう言い切り、さらにこう続けた。

「ハーレーダビッドソンが最も大切にしてきたのは、ライディングの楽しさ。その姿勢はこれからも変わりません。“RIDE”はそれを最もシンプルに、力強く表現できる言葉なのです」

オートバイに乗ることに、どれだけの意味や価値を見出せるのか。そんな問いを、ブランド自ら突きつけてきたのだ。

◆“Life”は生命ではなく人生だ

ハーレーダビッドソンの新グローバルプラットフォーム「RIDE」のキービジュアルハーレーダビッドソンの新グローバルプラットフォーム「RIDE」のキービジュアル

インタビュールームに掲げられていた『RIDE』のビジュアル。そこにあるのが、この一文だ。

“Life, liberty, and the pursuit of happiness”

トーマス・ジェファーソンによるアメリカ独立宣言の一節として知られる言葉だが、ハーレーはこの“Life”を「生命」ではなく「人生」や「生き方」と解釈している。

「いろいろなところへ行くと、私に“ハーレーに乗って人生が変わった”とか“ハーレーこそ我が人生”と言ってくれる人が本当に多い。私たちにとって嬉しいことで、“Life”とはそういう意味なのです」

ハーレーダビッドソン CVO ストリートグライド リミテッドハーレーダビッドソン CVO ストリートグライド リミテッド

自由に走る。気の向くままに旅に出る。カスタムに没頭し、仲間と語り合う。そのすべてが“人生”そのものだというわけだ。

これまでも、ハーレーを象徴するキーワードとして「We ride with you」があり、ファンの間ではよく知られている。これはビルの父であるウィリーG・ダビッドソンの言葉だ。

「直訳すれば“共に走る”ですが、実際は“いつでもあなたのそばにいる”という意味です」

バイクを売って終わりではない。その後の人生に寄り添い続ける存在でありたい。この思想こそが、ハーレーを単なる製品ブランドではなく、強固なコミュニティへと押し上げている。

◆120年続く理由は性能重視ではないこと

ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏

「なぜ、ハーレーはここまで長く支持されてきたのか?」とビルに聞くと、こう答えた。

「Look(ルック)、Sound(サウンド)、Feel(フィール)。この3つを徹底して大切にしてきたからです」

スペックでは語りきれない領域。しかし、ライダーにとっては最も重要な部分なのかもしれない。さらにビルはこう続ける。

「私たちは常にお客様の夢や望みに耳を傾け、それを形にしてきました」

ハーレーダビッドソンシティ西東京でファンや販売店と交流するビルハーレーダビッドソンシティ西東京でファンや販売店と交流するビル

水冷化や電動化が進む時代においても、その軸は揺るがない。

「技術は変わる。しかし“ハーレーらしさ”であったり、お客様の夢を叶えるという使命は変わりません」

将来に向けても、迷いは一切ない。

◆すべての原点は、1903年のファーストバイク

ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏ハーレーダビッドソン創業家の4代目にあたるビル・ダビッドソン氏

「好きなモデルは?」という問いには、こう答えた。

「それが一番難しい……。でも、あえて言うなら、1903年の最初の1台ですね」

すべては、そこから始まった。「RIDE」は原点回帰か、それとも挑発か。今回のインタビューで見えてきたのは、「RIDE」という言葉の二面性だ。

原点への回帰でありながら、同時に現代への問いかけでもある。効率や合理性が優先される時代において、「ただ走る」という行為にどれだけの価値があるのか。

ハーレーダビッドソン ナイトスターハーレーダビッドソン ナイトスター

ハーレーダビッドソンは、その答えは人それぞれにあると考えている。そして、こう問いかけてくる。

「それでも、あなたは走るか?」

「RIDE」という4文字はシンプルだからこそ、ライダーの心に強烈に響く。もし惹かれてしまうなら、自分の人生にハーレーが必要なのか否か、試さない手はない。

ハーレーダビッドソンシティ西東京でファンや販売店と交流するビルハーレーダビッドソンシティ西東京でファンや販売店と交流するビル

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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