2年ぶりにマツダ『ロードスター』に乗った。といっても「RS」というグレードを街中に連れ出すのは、これが初めてのことである。
試乗会の時には、素のロードスターが一番好みだった。それは何故かというと、リアにスタビライザーが付かず、オープンデフを装備することで、リアサスの動きがしなやかで、その分限界は低いものの、のんびりとワインディングを走らせながら、立ち上がりで少しアクセルを踏み込んでいった時のリアの沈み込みが体感出来て、まるでクラシックスポーツに乗っているような感覚を覚えたからである。
オープン2シーターは、自動車好きなら憧れる車種の1台だと思う。それも、できればクラシックカーが良いと思うのは、たぶん筆者だけではない。でも、クラシックスポーツの場合、正直、何時止まってもおかしくないリスクを抱える。それに走りは実に好感が持てても、例えばエアコンなどは望みにくい(最近電動エアコンなるものを装備するお仲間が増えているが)し、耐候性が低いから、強風や大雨のケースで、雨漏りの心配があったりすることは否定できない。
そこへ行くとロードスターは、そうしたクラシックスポーツ有る有るの心配事を、すべて片づけてくれて、かつクラシックスポーツのような乗り味と爽やかさを提供してくれた。
◆ロードスターは高いか、安いか
マツダ ロードスターRS
今回敢えて、というか、ある意味これまで拒否してきた、スタビライザーをリアに装備してディファレンシャルにもLSDを装備したRSがどんなものであるか、改めて試してみたという次第である。
試乗車は車両本体価格374万5500円(税込み)に加え、メーカーオプションが33万円上乗せされて、総額407万5500円となった。近年クルマの値段が爆上がりして(個人的感想)、おいそれと新車を買えるご時世ではないと感じている中で、たった二人しか乗れず、しかも室内はグローブボックスもつかず、さらに言えばサイドミラーは電動で畳むことができず、まあストイックこの上ないロードスターの値段がこれだと、多くのクルマファンはこれを高いと感じるかもしれない。余談ながら、33万円かけて装備されるのは、ブレンボのブレーキだったり、レイズの鍛造アルミホイールだったりする。
しかし個人的には、最上級のロードスターでこの値段である(因みにRSが最上級グレードだ)。ベースグレードの「S」ならば、300万円を切る。その値段、まさに軽自動車の領域なのだから、個人的にはすごく安いと思うわけである。
◆LSD&スタビも「有りだな」
マツダ ロードスターRSで、件のLSD&スタビ有りの乗り味であるが、表現としては色々とあると思う。単刀直入型なら、たった一言「硬い」かもしれないし、「ひらり感が減った」なのかもしれないが、それはスタビレス・オープンデフ擁護派の意見であって、端っからLSD装備派としてはそれが当たり前、何が悪いという話なのだと思う。擁護派であるはずの筆者が乗ったら…であったわけだが、今回10日ほど乗り回してみて感じたことは、たった一言「有りだな」である。
一般道であるし、箱根のワインディングでもない、マンホールがたくさんあって、路面の凹凸もそれなりにたくさんある一般道でも、「硬い」と感じさせることはなかった。これがRSに装備されるビルシュタイン・ダンパーのマジックなのか?もちろん、乗り比べをすれば別な印象になるのかもしれないが、やはり安定感を考慮すれば、こちらに軍配が上がると思う。
もう少し簡単に言うと、使い勝手の幅が広がっているともいえそう。つまり、オープンデフの、しなやかさが少し影を潜めたけれど、相変わらずひらりひらりを楽しみたければそれも十分可能。そしていざこれをサーキットに持ち込んでも、「おっとっと」になる可能性が減少して、安全にサーキット走行まで可能になるという寸法である。
◆相変わらず抜群のステア&シフトフィール
マツダ ロードスターRS相変わらず、ステアフィールとシフトフィールは抜群だ。手首の操作だけでコクっと次のギアに入ってくれる操作フィールは、ロードスターならではのもの。最近の2シータースポーツを見渡しても、これに匹敵するシフトフィールを持つクルマを思い浮かべることができないほど素晴らしい。
それを裏付けているわけではないが、ソフトトップ付き(つまりRFではない)のロードスターのマニュアル比率は、限りなく8割に近い79%を誇るそうだ。ここまでマニュアル比率の高い日本のクルマはたぶん無い。それに稀少車ともいえるAT装備のソフトトップ・ロードスターは、中古車市場においても遥かにその価値が下がるのだそうである。
マツダ ロードスターRS要するにマツダ・ロードスターというクルマは、運転を楽しむためのクルマであって、その楽しみ方は人それぞれ。このクルマはオーナー一人一人の夢や愉しみを運んでいるのであって、決して人や荷物を運ぶためのクルマではない(当たり前だが)。その上で、どちらを選ぶか…という選択肢なのだと思う。
今、季節はまさにロードスター日和である。返却の時は、爽やかな風と太陽が満喫できる素晴らしい天気だったから、本当に返したくない…という気分でいっぱいだった。だからと言っておいそれと買えないのは、クルマ好きにとって本当に大きな悩みだ。
そういえば、このNDをベースにロードスターの究極を極めたといわれる、2リットルエンジンを搭載し、あらゆる部分を研ぎ澄ましたという、「マツダスピリットレーシング・ロードスター12R」と少し大人しめの「マツダスピリットレーシング」が登場した。それがいかなるものかは7月に試乗するので改めて報告をする。
マツダ ロードスターRS■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




