現場起点のフィジカルAI・独自シミュレーション基盤とは? 燈がセミナーで解説

現場起点のフィジカルAI・独自シミュレーション基盤の詳細を燈が公表【セミナーレポート】
現場起点のフィジカルAI・独自シミュレーション基盤の詳細を燈が公表【セミナーレポート】全 2 枚

燈株式会社は2026年6月18日(木)にプレスセミナーを開催し、フィジカルAIの取り組みと今後の展望について説明した。セミナーには、燈株式会社 執行役員 DX Solution事業本部 VPoEの丸尾恭四郎氏、同事業本部 General Managerの武田亮太氏、Physical AI Consultantの石本幸暉氏が登壇。

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本記事では、同社の登壇内容をもとに、現場とAIの融合を軸とした戦略と技術の実態をレポートする。

現場起点で進化するフィジカルAI

石本氏は、まず自身のバックグラウンドとして東京大学でロボティクスや機械学習の研究に従事し、ロボット競技世界大会で準優勝した経験を紹介した。そのうえで、「人の生活に寄り添うロボットを社会実装する」という思想のもと、フィジカルAIの開発に取り組んでいると語った。

フィジカルAIの本質について「現場データと現場ノウハウの融合」であると強調する。AI単体では現場課題は解決できず、施工や生産の実態に深く入り込むことが不可欠であるとし、同社が建設業から出発し、製造業へと展開してきた背景を説明した。

実際のプロジェクトでは、現場担当者との対話を重ねながら課題の本質を抽出し、半年から1年程度かけてAIモデルの開発と改善を進める。こうした取り組みを通じ、画像認識や点群処理(3次元空間データの解析技術)、最適化アルゴリズムなどのAIモジュールが蓄積されてきた。

デジタルツイン基盤「Melchior」の役割

続いて石本氏は、同社の中核技術であるシミュレーション基盤「Melchior(メルキオール)」について説明した。これは、現実空間を高精度な3Dデータとして再現するデジタルツイン基盤であり、仮想空間上でロボットの動作や作業プロセスを検証できる。

この基盤の特徴は、シミュレーションと実世界を一体化している点にある。仮想空間で最適化した動作を、そのまま実機ロボットに適用できるため、現場での試行錯誤を大幅に削減できる。加えて、スマートフォンなどで取得した点群データを活用し、現場の3D化を迅速に行える点も特徴である。

また、独自開発の背景として、既存のゲームエンジンでは現場用途に最適化しきれなかったことが挙げられ、必要な機能を自社で高速に開発できる体制を構築していると説明した。

ロボットを選ばない統合制御という発想

武田氏は、事業戦略の観点から、同社が目指すポジショニングについて語った。

特に「特定のロボットやハードウェアに依存しない」ことを大きな特徴として挙げている。従来のロボット導入では、メーカーごとの仕様差が壁となり、複数機種の統合が難しかった。一方、同社のシステムは共通ソフトウェア基盤によって異なるロボットを横断的に制御できるため、既存設備を活かしながらの導入が可能となる。

このアプローチにより、企業は新たな設備投資を抑えつつ段階的に自動化を進めることができる。特に日本の製造・建設現場に多く残る既存資産を考慮すると、実装面でのメリットは大きいと言える。

実装力と最先端技術の両立

丸尾氏は、質疑応答の中で「実装力」の重要性を強調した。

AIやロボティクス技術が急速に進展する一方、現場に適用するには安全性や精度、運用設計といった多面的な要素が求められると指摘する。そのため同社では、最先端技術を単に導入するのではなく、現場で機能するレベルまで落とし込む工程を重視している。

また、導入成功のカギとして「データの質」にも言及した。現場で取得されるデータの精度や網羅性がAI性能を大きく左右するため、シミュレーションと実データを組み合わせた検証が不可欠だと語る。

事例:道路点検を変えるAI

発表では具体事例として、インフロニア・ホールディングスとの取り組みも紹介された。これは走行しながら道路の異常を検知するAIシステムであり、画像認識と点群データを組み合わせて道路状況を解析するものだ。

従来は人による目視点検に依存していたため、品質のばらつきや膨大な作業時間が課題だった。本システムではスマートフォンを用いて走行するだけでデータ取得が可能となり、点検結果を即日デジタル化できる。さらに必要箇所のみを3D化することで、データ管理コストの大幅削減も実現した。

フィジカルAIが浸透する未来へ

最後に登壇者らは、今後の展望として「現場に浸透するフィジカルAI」の実現を掲げた。これは単なる自動化ではなく、現場の知見や熟練技能をAIとして蓄積し、再利用可能な形で社会に広げていく構想である。

現場データの収集、蓄積、学習、ロボット活用という循環を確立することで、日本のものづくり産業全体の競争力向上につなげる狙いがある。

"現場実装"に踏み込んだ数少ないAI企業

ロボット業界では、汎用AIやロボット基盤の研究開発が活発化しているが、実際の現場で稼働するレベルまで落とし込めている企業はまだ限られている。

その中で燈株式会社は、建設・製造といったリアルな現場に深く入り込み、課題解決を積み重ねながら技術を磨いている点が特徴的である。シミュレーションと実機をつなぐ基盤、ロボット非依存の制御思想、そして現場データへのこだわりは、フィジカルAIの実用化に向けた重要な要素と言えるだろう。


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《ロボスタ編集部》

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