初代日産『リーフ』が世に姿を現したのは、2009年のことである。でもその時、筆者は電気自動車のトラウマに襲われた。
もちろんその時初めて電気自動車に乗ったわけではない。記憶の中では1997年に乗ったGM 『EV1』が最初である。世界で初めて、専用のボディとシャシーを持った電気自動車だった。元々“インパクト”という名前で開発されていたが、さすがにその加速感にはインパクトがあった。ただし、その加速ばかり楽しんでいると、あっという間に電池がなくなる。という風に原稿を書いた。
そして、2009年だったか2010年に初代リーフに乗った。今でも鮮明に覚えているが、横浜の日産本社を出発し、横浜横須賀道路の横須賀PAでチャージし、その後鎌倉の市庁舎前で再度チャージして本社に戻るという設定のコース。当時24kwhのリチウムイオンバッテリーを搭載して、航続距離は200km(JC08モード)と言われていたが、実際には160km程度の航続距離しかもっていなかった。
日産 リーフ 初代(2009年発表)
そしていざ本社を出発、みなとみらいの首都高速料金所を通過して、本線に合流するのにフル加速して、加速感には十分満足したものの、その時、燃料計ならぬ残航続距離が「90km」となっているのを見て唖然とした。当時90kmの走行距離といえば、ガソリン車の燃料計に、燃料がなくなったことを示すランプがつく一歩手前を意味した。これがトラウマで、以後電気自動車に否定的見解を持つようになった。
しかし、あれから15~6年経って、今の電気自動車は航続距離も伸び、インフラも都市部に関して言えば、かなり充実してきた結果、当時持っていたトラウマはほぼ消え去っていたのだが、そのトラウマを完全に消し去るために、敢えて再びリーフの試乗してみたというわけである。
余談ながら、2代目リーフも試乗会では試乗したものの、あえて借りようという気にはならなかったので、長時間の試乗はしていない。
◆航続距離は685km、初代とは隔世の感がある
日産 リーフ B7 Gでは最新のリーフがどうであるか。
まず航続距離は、今回試乗した「B7 G」グレードでWLTCモードで685kmだそうである。それにバッテリーの搭載量も78kwhであるから、初代とは隔世の感がある。それだけではない。SOC(State of Cahrge)と、それによる航続距離の表示が正確で、初代モデルのように、いきなり50kmも可能走行距離が減るなどということはなくなっている。
借り出した時は、SOC100%。可能走行距離は685kmどころか、550kmほどを指していた。まあ、WLTC並みは無理としても550km走ってくれればまあ、御の字である。問題は次、30分の充電で果たしてどこまで回復するか。確かリーフの場合は90kwの急速充電気に対応しているはずで、30分も入れれば十分に回復するはずなので、充電スポットの位置さえしっかりと把握していれば、好きなところに赴くことができると思う。
日産 リーフ B7 G今回は4日ほどの試乗だったのだが、基本的には一般道がほどんどで、走行距離も130km程度だったので、残念なことに充電を体験することができなかった。でも、1日40kmほどを3日こなして、返却した時も70%近い容量を残していて、可能走行距離もおよそ390kmが残っていたから、普通に使うに支障はないと断定できる。
問題は充電設備である。筆者は比較的伊豆半島の最南端まで遊びに行くことが多いのだが、東伊豆を国道135号線を通って行くにしても、中央の伊豆縦貫道を通るにしても、充電設備が充実しているとは思えない。まして、西伊豆だとほぼ絶望的で、そういう地域がまだ日本中に存在している点が、EVの普及を阻害している点のように思えてならない。
少なくとも新しいリーフについては、かつてのトラウマを晴らしてくれるに十分なBEVとしての性能を持ち合わせていることが分かった。
◆「高級車?」と言いたくなるほどの出来具合(と価格)
日産 リーフ B7 GBEVでフル加速をしたことはあまりない。これもEV1のトラウマで、あのクルマは鉛電池を積んでいたこともあってか、フル加速をすると、電池の量が目に見えて減るのがわかるほどだった。だから、フル加速は試乗会などで乗る時だけ。借りた試乗車でフル加速はあまりやらないけれど、今回はやってみた。
いやー胸のすくような加速感を味わえたし、航続距離はほとんど減らないし、これならば、ワインディングを気持ちよく、アクセル開度多めで走っても大丈夫そうである。
乗り心地、ハンドリングもはっきり言って上質。以前ならメカニカルなことを述べたうえで、こうした話をするのだが、BEVは普通のガソリン車に比べて、そのパーツ点数が3分の1ほどに減っているし、モーターとバッテリーに関しては、まだまだ公表されていない謎めいたところが多くて、メカニズムがこうだからこういう乗り味とか、ハンドリングという言い方をしにくい。
日産 リーフ B7 GCセグメントサイズのモデルなのに、車両重量は1920kgもある。十分なパワーを持っているから、重くても十分に快走する。それに重いからどっしり感のある乗り心地は当然で、ここまでくると「高級車?」と言いたくなるほどの出来具合である。
もっとも値段的には昔の高級車の領域で、車両本体価格は599万9400円。これに試乗車は79万2000円のメーカーオプションと、9万7240円のディーラーオプションが載るから、ほとんど700万円近い。補助金がなければ、ヨーロッパ製Cセグメントをしのぐプライスといっても過言ではないのだ。
『ノート』や『アリア』にも通じるコロンとしたデザインは、メルセデスのセダンのように、上から下まで同じデザインで統一した手法に似るが、個人的にはもう少し一目でリーフとわかるような捻りが欲しいところだ。それでも新しいリーフは良く出来ていると思う。
日産 リーフ B7 G■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




