マフラー交換はチューニングの第一歩として人気が高い。排気音や見た目を変えられるだけでなく、エンジンレスポンスや出力特性にも影響する。ただし現在は騒音規制が厳しく、車両の年式や適合するマフラーを正しく確認することが重要だ。
◆マフラー交換で何が変わる? 純正とストレート構造の違い
マフラーの大きな役割のひとつが排気音を抑えることだ。そのため純正マフラーでは隔壁構造などを用いて消音しているケースが多い。一方、スポーツマフラーをはじめとするアフターパーツではストレート構造が多く採用されている。
マフラーの内部構造は排気音だけでなく排気効率やエンジン特性にも影響する。
隔壁構造は内部を複数の部屋に仕切り、排気ガスを迂回させながら音を抑える方式だ。静粛性を確保しやすい反面、構造によっては排気抵抗が大きくなりやすい。
対するストレート構造はパンチング加工されたパイプの周囲にグラスウールなどの吸音材を配置し、できるだけ排気ガスの流れを妨げずに消音する方式だ。排気抵抗を抑えやすくスポーティな音質を作りやすい一方、設計によっては音量が大きくなりやすい。
市販されている車検対応のスポーツマフラーは、こうした構造を用いながら法規で定められた騒音基準を満たすように設計されている。
ただし排気抵抗は低ければ低いほど良いわけではない。エンジン特性に対してパイプ径が太すぎるなど仕様が合っていないと、低回転域のトルク感やレスポンスが損なわれる場合もある。単純に太いマフラーを選ぶのではなく、エンジンや過給機の特性に合わせた製品選びが重要だ。
◆マフラー交換で注意したい車検と騒音規制
マフラー交換でもっとも注意したいのが法律と車検だ。かつては「近接排気騒音が99dB以下ならOK」「96dBまでなら大丈夫」といった音量の数字がマフラー選びの目安として語られることが多かった。しかし現在は車両の製作時期やカテゴリーによって適用される基準が異なり、単純に音量だけで車検適合を判断することはできない。
大きな節目となったのが2010年4月1日だ。2010年4月1日以降に製作された対象車両では交換用マフラーに対する規制が強化され、従来の近接排気騒音に加えて加速走行騒音の防止性能も求められるようになった。
対象となる交換用マフラーでは登録性能等確認機関による性能確認を受けた製品など、法規上認められた仕様であることが重要になる。適合製品には「性能等確認済表示」などが設けられているため、中古品を購入する場合もプレートや刻印の有無、対応車種や型式まで確認したい。
さらに2018年11月からは一部の車両で、新車時の近接排気騒音値を基準とする相対値規制も導入されている。このため「○○dB以下ならすべての車種で車検OK」という考え方は現在では通用しない。
マフラーを購入する際には車種だけでなく、型式やエンジン、駆動方式、トランスミッションなどを含めて適合を確認するのが確実だ。
◆2010年3月以前のクルマならワンオフマフラーも選択肢
2010年3月31日以前に製作されたクルマでは適用される規制が異なり、保安基準を満たしていればワンオフマフラーなどを使用できる可能性がある。ただし古いクルマなら何を装着しても良いわけではない。
車両の年式などに応じた近接排気騒音をはじめ、排気管の取り付け状態や最低地上高、触媒を含む排出ガス関連の基準などを満たす必要がある。
DIYで製作したマフラーやショップによるワンオフ品を装着する場合には、完成後に音量を確認するだけでなく製作前から車検や保安基準への適合をショップと相談しておく方が安心だ。
◆リアマフラーとセンターパイプは認証された組み合わせを確認
交換用マフラーの事前認証制度で注意したいポイントのひとつが、リアマフラーとセンターパイプなど排気系パーツの組み合わせだ。
例えば純正センターパイプと組み合わせることを前提として性能確認を受けたリアマフラーの場合、後からセンターパイプを社外品に変更すると性能確認を受けた仕様から外れる可能性がある。
逆にリアマフラーとセンターパイプをセットにした状態で性能確認を受けている製品なら、その指定された組み合わせで使用することが基本となる。
実際の排気音量が基準内だったとしても、性能等確認を受けた仕様と異なれば車検時に適合を確認できないケースがあるので注意したい。
「まずリアマフラーだけ交換して、そのうちセンターパイプも交換したい」と考えているなら、購入前に将来的なシステムアップまで含めてメーカーや販売店に確認しておくことをおすすめする。
◆チタンマフラーなら軽量化も可能 ただし価格は大幅アップ
マフラー交換には軽量化というメリットもある。以前は大型で重量のある純正マフラーも多く、社外マフラーへ交換するだけで10kg前後、車種によってはそれ以上の軽量化につながるケースもあった。
しかし近年は自動車メーカーも軽量化を進めており、純正マフラー自体が軽くなっている。そのためステンレス製のアフターマフラーに交換しても重量差が小さい場合がある。
そこで軽さを優先するなら選択肢となるのがチタン製マフラーだ。チタンは軽量で耐食性にも優れ、製品や車種によっては純正マフラーに対して大幅な軽量化が可能になる。またステンレスとは異なる独特の排気音や焼き色を含む質感も魅力で、ドレスアップパーツとしての存在感も大きい。
一方で最大のデメリットは価格だ。フルチタンのマフラーでは数十万円クラスになる製品も珍しくなく、車種や構造によっては50万円を超えることもある。
軽量化による走行性能を重視するのか、サウンドやデザインを楽しみたいのか。予算と目的を明確にした上で選びたい。
◆現代のマフラー交換は最高出力よりレスポンスの変化に注目
近年のクルマでは、ひと昔前のようにマフラー交換だけで最高出力が数十馬力アップするケースは多くない。
純正状態でもエンジンや排気系が高いレベルで最適化されているためだ。
それでもマフラー交換による効果がなくなったわけではない。注目したいのは最高出力の数字よりもアクセル操作に対するレスポンスやエンジンの吹け上がりだ。
排気抵抗が適正化されればアクセル操作に対してエンジンが素早く反応し、ドライバーが「クルマが軽くなった」「機敏になった」と感じることもある。
特にターボ車では排気系の仕様変更によってタービン前後の排気条件が変化するため、エンジンや車種によってはブーストの立ち上がりやレスポンスの変化を感じやすい。
アクセルに対する反応が良くなれば、コーナリング中の荷重移動や車体姿勢もアクセル操作で調整しやすくなる。マフラー交換は単なる「音を大きくするチューニング」ではなく、クルマとの一体感にも関わるチューニングなのだ。
ただし音量が大きくなれば高速道路での巡航時にこもり音が気になったり、長距離移動で疲れやすくなったりすることもある。吸音材の経年劣化などによって新品時より音量が増える可能性にも注意したい。
マフラーを選ぶ際には最高出力や音量だけでなく、低回転域のトルク、アクセルレスポンス、車内へのこもり音、重量、価格、そして車検への適合まで含めて比較することが大切だ。
自分のクルマで何を変えたいのか。それを明確にして選べば、現在でもマフラー交換はサウンド、走り、スタイルをまとめて楽しめる魅力的なチューニングのひとつなのである。




