【ホンダ シビックe:HEV RS 新型試乗】いつもの道でこそ輝く、爽快な走りホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】
ホンダのCセグメントハッチバック「シビック」に、スポーティーな走りが身上の「e:HEV RS」が登場。ハイブリッドのパワートレインと専用チューニングのサスペンションが織りなす走りは、いつもの道でこそ輝くものに仕上げられていた。
十人十色のシビック像
ホンダ・シビックの誕生から半世紀以上の時が経つ。この間、モデルチェンジを積み重ねて現行は11代目だ。とあらば、世代ごとの“マイシビック”があっても不思議ではない。
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個人的には免許の取得年齢がちょうど3代目、通称「ワンダーシビック」のころと重なることもあって、DOHC 16バルブのZCを積んだ「Si」は憧れの対象だった。そこから「グランドシビック」を経て「スポーツシビック」こと5代目に至るころには、すっかりVTEC、つまり「SiR」の虜だったが、自分で手に入れたのは同じB16エンジンでもEG6ではなくなぜかEG2、つまり「CR-Xデルソル」の、しかも重たいトランストップ、そして中古車屋でつかまされた修復車だったことは墓場まで抱えていきたい若気の至りである。
そんな自分よりもう少し若い、40~50代のクルマ好きにとってのシビックは恐らくEK、EP、FD世代の「タイプR」に代表されるだろう。一方で、もう少し年配のSB、SL世代であれば、それは「CX」や、あるいは「RS」ということになるのかもしれない。
そのRSグレードは今、再びホンダのスポーティネスを示すグレードとして多くのモデルで展開中だ。復活の狼煙は2代目「フィット」であり、現在は小さな「N-ONE」から大きな「CR-V」にもRSが設定されている。これらのなかで、シビックの特異な点といえばタイプRもあることだが、そちらの戦闘域が公道ではシャレにならない狭所へと移行するなか、RSはそうではない日常のあらゆる場面で、シビックの気持ちいい走りを体現することを是としている。

大柄なボディーがかなえる優れたパッケージ
この分かりやすい棲み分けのなかで欠けていたのが、大きなボリュームが期待できるRSの2ペダル仕様だった。逆にいえばシビックの場合、RSは1.5リッターターボ+3ペダルのみであったにもかかわらず、一定の存在感を示せていたわけだ。発売当初は購入者が20代の若者中心という点も話題になったが、彼らの父母たちがF1第二期など、一番いい時代のホンダを知っている世代であることも、少なからず関係しているのだろう。でもホンダにとっては、この優性遺伝に頼れる時間は限られている。
かといって、既存の1.5リッターターボ+CVTをアレンジしてRSを名乗るのはチョロすぎるし、商品力にも乏しい。やるなら「e:HEV」、そして今後のパワートレイン電動化においてホンダらしさを支えるアクセントとして期待される「S+シフト」の搭載が必要……と、e:HEVのシビックRSはこういう経緯のもと、「プレリュード」での初出しを待って設定されたのだと思う。
2ドアも無理なら3ペダルも無理。家族との共有など、諸事情でそういう縛りを強いられる人はクルマ好きのなかでも大勢であって、そういう方々にとって、このクルマは青春のシビックを呼び起こしてくれるものなのだろうか。
……とまぁ、そういうことを期待したくなる割にはいいガタイすぎるんだよなあと、止まっている姿を見てあらためて思う。今に始まったことではないが、北米市場に軸足がある現行シビックの体躯は、ちょっとCセグメント離れしていて、全長でいえばプレリュードよりも長い。全幅1800mmのおかげでまだ救われているが、日本ではシビックという名前から抱く気軽さに対しては、本当にギリギリのサイズだと思う。
ただし、その全長とホイールベースがパッケージでは好因となっている。現行FL系の外寸を見ると、同系のプラットフォームとなる先代FK系よりも全高が20mmほど低く、ひいき目に見れば、ちょうど自分的など真ん中である3~5代目のロー&ワイドな時代と、わずかながらも容姿が重なって見えなくもない。それでいて、これだけの車格ゆえ居住性に不満はなく、181cmの大男をして、前席で寝そべるように座らされているような窮屈さもなければ、後席で頭上空間が足りないという圧迫感もない。
荷室容量も含めて、ファミリーカーとしては十分な使い勝手を備えているのだから、これ以上望むものもない。それでも、背高モノを知ってしまった多くの人にとっては、これでも気持ち的に小さい、狭いということになるのだろう。しかし、背の高いクルマに散々慣らされているからこそ、このパッケージだけでも走るぞ的な気分にさせられる。

いつもの道が気持ちいい
RSはベースモデルよりも横力耐性を高めたサスペンションを装備し、コンプライアンスブッシュなどには専用チューニングが施されるが、その走りはタウンスピードでもしっとりと滑らかだ。シビック タイプRやプレリュードのようにデュアルアクシスのフロントサスを用いているわけではないが、それに準ずるくらいステアリングフィールからも応答性のよさが伝わってくる。メカニズム自体の変更はないから、おそらくはサスセッティングによって操舵の手応えにも精度感が増しているようにうかがえた。
そもそも現世代のFL系は、日本のCセグメントにおいても動的質感やダイナミクスの高さはトップクラスと思っているが、このRSは高速域での乗り味もひときわすっきりしている。サーキットを走り込むようなスペックではない……というか、そのためにタイプRがあることを考えれば、ワインディングロードも気持ちよく走れるこのパフォーマンスは実に適切。これ以上速くある必要をまったく感じない。コーナーで頑張るよりもロングツーリングを淡々とこなせるフラットなライド感のほうが、よほど大事だ。その点において相当きれいにバランスが取れている。
S+シフトは変速ショックなどを伴う“仮想段”が設けられており、エンジン側の回転域や駆動の応答性、さらに疑似サウンドを走りにシンクロさせることで、さながら内燃機をパドルで操るかのようなドライブフィールを実現する。電気自動車の「スーパーONE」にも、同様の考え方を持つギミックが「ブースト」モードに搭載されている。
シビックRSのそれは、疑似サウンドの音質を見るとプレリュードよりやや中音域の成分が強く、それこそB16ユニットを思い出させるような野性味が感じられる。きっちり吹け切らせるようにシフトをつなぐことはできないが、中高回転域を多用しながらの疑似変速くらいでも、スポーツドライビングのライブ感を十分味わうことができ、そこにS+シフトの付加価値がある。目を三角にしてコーナーに飛び込んでいくような走りにも応えてくれなくはないが、それはあまり似合わない。操るにはそこから一歩退いた大人の尺度が求められるだろう。RSのコンセプトを汲むには、そういう腹八分の走り方がよく似合う。
(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資/車両協力=本田技研工業)

テスト車のデータ
ホンダ・シビックe:HEV RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y XL/(後)235/40R18 95Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック6)
燃費:24.0km/リッター(WLTCモード)
価格:465万9600円/テスト車=480万8100円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックグレー・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット<プレミアム>(5万2800円)/ドライブレコーダー<前後カメラセット>(5万7200円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2069km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:225.6km
使用燃料:11.05リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:20.4km/リッター(満タン法)/21.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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