【日産 キックス 新型試乗】まるでEVのように走る様は「見事」、あとは乗り心地だが…中村孝仁

日産 キックス G 2WD
日産 キックス G 2WD全 35 枚

先代日産『キックス』、型式でいうとP15が市場に投入されたのは、2016年。そして新しいP16が投入されたのは2026年だから、先代は10年の長きにわたって作られたことになる。

【詳細画像】日産 キックス G 2WD

その間に日産には大激震が走り、業績低迷、ホンダとの提携話などを経て、本社を売却し、主力の追浜工場の閉鎖など、大きな痛みを伴う改革を断行中である。その閉鎖される予定の追浜工場で生産されるのが、今回試乗したP16型のキックスである。追浜閉鎖後は、生産を九州に移管することになっている。

◆サイズ、質感、性能、走りのすべてに及ぶ「成熟感」

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

普通車両として誕生したキックスは、今回が2世代目。先代から見たら随分と成熟したものである。その成熟感はサイズ、質感、性能、走りのすべてに及ぶ。まあ、これだけのことをやったわけだから、値段が高くなるのも当たり前で、今回試乗したFWDの最上級車種Gの場合、本体価格が389万8400円。これにメーカーオプション、ディーラーオプションを含めた試乗車の価格は、446万0940円となり、乗り出しはほぼ500万円の大台である。

先代が最後にマイナーチェンジされた時の車両本体価格が、90周年の特別限定車でも325万7100円であったから、単純比較の車両本体価格でも、ほぼ2割アップしたことになる。

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

成熟感について話をしよう。まずサイズ感であるが3サイズは全長4365×全幅1800×全高1615mm。先代に対して全長で75mm、全幅で40mm、全高10mm拡大し、ホイールベースも35mm延長されている。まさに一クラス上に移行した感がある。全長はともかくとして、幅に関して言えば、初代日産『エクストレイル』よりも大きいから立派なものだ。

質感も大きく向上した。そもそもフロントフェイスが、ここ数年日産が使ってきたV字型のアクセントが消え、『セレナ』や、日本でも発売される最新の『ムラーノ』同様、グリル(枠)を意識させないデザインに変わった。インテリアは時代を反映してか、メーターパネルなどが、完全なディスプレイスタイルになり、ファブリックを使った暖かみのあるダッシュボード上面と合わせ、その演出はなかなか好感が持てた。

◆フラット感のある乗り心地に仕上げられれば

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

性能のハイライトは、第3世代「e‑POWER」である。エンジンが従来の1.2リットルから1.4リットルに拡大されて、出力、トルクともに向上している。もっともエンジンは黒子で、走りには関与していないものの、大きなゆとりを得たことで、エンジンの回る機会を減少させて、結果として静粛性の向上などに寄与している。

そして最後の走り。プラットフォーム自体が従来のVプラットフォームから、新しいCMF-B HSに変更された。因みに末尾のHSはハイスペックを意味する。もっとも、日本では発売されなかったイギリス生産の2代目『ジューク』には、このCMF-B HSが使われている。日本ではジュークの後継車として誕生したキックスだが、これで言わば兄弟関係になったようなものである。

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

タイヤは225/45R19。試乗車の場合ダンロップのSPスポーツマックスだが、先代が17インチであったことを考えると、これもまさに車格違いを示す一例か。そんなわけもあってか、こと、乗り心地という点に関して言えば、スムーズでフラットは言い難く、やや暴れるそぶりを見せる。

一方で運動性能的には文句なし。元々先代からステアフィールは好感の持てるもので、特にターンインの時のライントレース性能と、その切れ込みの鋭さは車体剛性がきちっと出ている証左。まあ、運動性能と乗り心地は、ある意味トレードオフ関係にあるから、それなりに理解はできるが、これでフラット感のある乗り心地に仕上げられればパーフェクトだ。 

◆まるでEVのように走る様は、見事

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

新しい第3世代というe‑POWERである。エンジン排気量が大きくなり、性能が向上したことは前述したが、モーターも性能も向上している。このため、初期の蹴り出しなども顕著な力強さを感じさせてくれる。何よりも高速域でも軽快に走れて燃費への影響がない点が大きいように感じる。

かつてe‑POWERは、日本よりも速度域の高いヨーロッパでは普及しないといわれ、同じプラットフォームを持つ2代目ジュークにも採用されていない。しかし、今回のキックスはアメリカで先行発売されているモデルであり、南米にも展開されたグローバルモデル。それでもヨーロッパに展開される可能性は低いようだ。

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

気になる燃費は、満タン~満タンで測定して19.1km/リットル。先代キックスが筆者の個人的測定で14.0km/リットルであったことを考えると、大進歩である。

最後になったが、新しいキックス最大の美点は、状況を問わず保つ静粛性の高さである。エンジンのかかる確立を減らし、かかったとしてもその存在を気付かせるほどうなることもなく、まるでEVのように走る様は、見事である。それだけに少し荒々しさの目立つ乗り心地を改善すれば、最良の一台になるのだが…。

日産 キックス G 2WD日産 キックス G 2WD

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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