【スズキ GSX-R1000R 試乗】190psのリッターSSが一般道で面白いわけがない! と思っていたら…青木タカオ

スズキ GSX-R1000R
スズキ GSX-R1000R全 50 枚

◆走り出して印象激変!?

面白くないに決まっている。正直なところ、最初はそう思っていた。SS(スーパースポーツ)、それも1000ccクラスの超本格派、スズキ「GSX-Rシリーズ」のフラッグシップである新型『GSX-R1000R』を一般道で試乗することになった。

【詳細画像】スズキ GSX-R1000R 新型

最近2シーズンは、趣味の範疇としてサンデーロードレースに参戦するため、サーキットライセンスを所持している筆者(青木タカオ)。「SSの最新型に乗れる」と聞いて、それならばと「ぜひ、サーキットで乗ってみたい!」と編集者に提案したところ、「今回はまず公道で…」と却下されてしまった。

しかも試乗した当日は、雨が降ったり止んだり。最高出力190psを発揮するリッタークラスのSSに乗るには、できれば避けたいコンディションだ。

気が乗らないまま走り出したのだが、すぐにその印象が変わった。低回転域からしっかりとトルクが出ていて、街中でも扱いやすい。

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

またがった瞬間から足つき性がよく、サスペンションを押したり引いたりすると、しなやかに動くことも察していた。サーキットを想定したライディングポジションでも、身体を無理に折りたたむような窮屈さはない。公道でも意外なほどリラックスして乗っていられる。

クルマの流れに合わせてチンタラと走っても、まさかここまでストレスがなく、フレンドリーに感じさせるとは。驚きを隠せない。

そして、コーナーへ。アプローチでブレーキレバーに入力しつつ、フロントに荷重をかけてイン側を意識すると、車体がイメージどおりに寝ていき、ノーズから素直に向きを変えていく。

手こずることなく車体が出口を向いてくれるから、立ち上がりでスロットルを開けていきやすい。さすがにレスポンスはシャープで、強烈な加速を見せるが、エンジンは滑らかに回っていく。荒れた一般道、そして濡れた路面でも車体の挙動が乱れない。

これは、面白いぞ!

◆40周年の節目に新型へ

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

2022年モデルを最後に、日本国内のラインナップから姿を消していたGSX-R1000Rが、新型となって帰ってきた。GSX-Rブランド誕生40周年という節目を迎えた2025年に発表され、翌26年7月に新発売された。

そのルーツは、1985年に登場した『GSX-R750』まで遡る。世界耐久選手権などで活躍したレーシングマシンの技術を市販車へフィードバックし、ナナハンのレーサーレプリカという新たなジャンルを切り拓いた、スズキのフラッグシップだ。

徹底した軽量化と高回転型エンジン。その思想を受け継ぎ、2001年にはGSX-R1000が登場する。当時はホンダ『CBR900RR』やヤマハ『YZF-R1』など、1000cc級スーパースポーツが激しい競争を繰り広げていた。GSX-R1000はGSX-R750の車体をベースに998ccエンジンを搭載するという大胆な発想で、その勢力図を一気に塗り替えた。

驚異的だった160psの最高出力に加え、ライバルより軽い車体を実現。しかも特徴的だったのが、低中速域の力強さだ。

スズキ GSX-R750(1985年)スズキ GSX-R750(1985年)

排気量を拡大しながらエンジン幅を抑えるため、ボアを大きく広げず、ストロークを伸ばしたロングストローク設計を採用。その結果、高回転まで一気に吹け上がるだけではなく、低中速域でも豊かなトルクを発揮した。

速いのに扱いやすい。これがGSX-R1000の大きな魅力になった。レースでは高い戦闘力を発揮し、ストリートでも扱いやすい。しかも価格面でも魅力的だった。新世紀のGSX-Rは、まさにスズキの黄金期を象徴する存在となったのである。

そして新型に乗りながら、2017年にスズキがGSX-R1000R(L7型)のメディア向け試乗会をサーキットで開催したときのことを思い出した。

サーキットでは、こんなにも扱いやすい。では、一般道ではどうなのだろう? あのとき感じたセカンダリーロードでの乗りやすさ。その答え合わせが、ようやく新型でできたのかもしれない。

2017年、サーキットで試乗したスズキ GSX-R1000R(L7型)2017年、サーキットで試乗したスズキ GSX-R1000R(L7型)

◆太いトルクで右手だけで操れる

2022年に惜しまれつつもラインナップから姿を消すまで、もちろん何度もL7型を一般道で乗ってきた。しかし新型は、より安心感が高い。特に印象的なのが、低中速域のトルクフィールだ。

遠心式可変バルブタイミング機構「SR-VVT」は、エンジン回転数に応じてスチールボールが遠心力で移動し、吸気バルブが閉じるタイミングを変化させる。低中速域のトルクを確保しながら、高回転域ではしっかりとパワーを引き出すための機構だ。

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

圧縮比は従来の13.2から13.8へ引き上げられ、大径化された排気バルブに合わせてピストンヘッドの形状も最適化されている。そして、スズキが長年培ってきたメッキシリンダー技術「SCEM」も健在だ。

こうした技術が積み重なった結果、スロットルを開けた瞬間から、エンジンの力が素直に後輪へ伝わっていく。最大トルクは108Nm。数値だけでは表現しきれない力強さがあり、シフトチェンジを頻繁に繰り返さなくても、右手だけで速度をコントロールできる。このイージーライディングが、じつに心地いい。

◆乗って納得、究極のベスト性能

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

2026年7月に都内で開かれたメディア向け発表会で、チーフエンジニアの東郷隼也氏(スズキ二輪事業本部 二輪商品企画部)は「走る・曲がる・止まるの究極のベスト性能をすべて詰め込んでいます」と胸を張った。

スロットルを開ければ力強く加速し、ブレーキを使えば狙ったラインへ素直に車体を導き、荒れた路面でもタイヤの接地感を失わない。ひとつひとつの性能が高いだけでなく、それらがひとつの車体として違和感なくつながっている。

開発テストライダーの大城光氏も、静岡県にあるスズキの竜洋テストコースをはじめ、国内外のサーキット、さらには欧州の公道まで、ありとあらゆる環境で新旧モデルを乗り比べたという。

「スズキは開発の中で車両を実走させる距離、時間というのは、より長いと自負しております」

その言葉を聞いたうえで、こうして実際に公道を走ると、新型もまた、単なるスペック競争だけで生まれたものではないことがよく分かる。速さを追求しながら、その速さをどんな道でも引き出せる。そこにGSX-R1000Rの強さがある。

◆意外なほど自然体

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

GSX-R 40周年を記念したグラフィックは、歴代レーシングマシンをモチーフにしたもの。いかにもスーパースポーツらしい凄みを漂わせている。

一方で、実際にまたがってみると身構えるようなところはない。足つき性は良好で、ライディングポジションも身体に無理を強いるものではない。見た目から想像するよりも、ずっと親しみやすい。

もうひとつ大きな進化を感じたのが、電子制御だ。新型ではトラクションコントロール、リフトリミッター、ロールトルクコントロールという3つの機能を統合した「スマートT.L.R.コントロール」を新採用。それぞれの要素を個別に制御するのではなく、車体の状態を総合的に判断して介入することで、より一体感のある制御を実現している。

これが一般道では非常に効いてくる。雨上がりの路面、ギャップ、路面の継ぎ目。そんな不確定要素が次々と現れるワインディングでも、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けていける。電子制御が「介入します」と主張してくる感じがない。ライダーが操作した分だけ車体が自然に動き、その裏側で電子制御が必要なところだけをさりげなく支えている。

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

アルミツインスパーフレームやAstemo(SHOWA)製サスペンション、ブレンボ製ブレーキキャリパーなど、車体の基本骨格は先代から受け継がれた。SDMS(スズキドライブモードセレクター)、クイックシフター、ローンチコントロールといった電子デバイス群も、基本的な考え方は踏襲されている。

大きく見た目を変えて「新型」をアピールするのではなく、必要なところを磨き上げていく。この実力主義ともいえるアプローチは、いかにもスズキらしい。

特にサスペンションは、しなやかな作動と優れた衝撃吸収性を両立している。作動初期はスムーズに動き、フォークが深く沈み込むにつれて減衰力が高まる特性とされており、一般道の細かなギャップをしっかり吸収してくれる。

それでいて、コーナーへ進入すればフロントの接地感がしっかりと伝わってくる。スポーティなハンドリングと街乗りでの快適性。一見すると相反する要素だが、その両方を狙っていることが、走らせてみると分かる。

◆190psはやはり凄かった

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

とはいえ、スズキ・スポーツバイクの最高峰であることを忘れてはいけない。スロットルを大きく開けた瞬間、その表情は一変する。

前方に広がっていた景色が、一瞬のうちに後方へ置き去りにされるような強烈な加速。最高出力は190ps/13200rpm。一般道で、その能力をすべて引き出せるはずもない。

それでも、アクセルを開けた瞬間に「まだ先がある」と分かる。その余裕が、とてつもない。

低回転域では扱いやすく、中回転域では太いトルクを感じさせ、さらにアクセルを開ければ高回転域へ向かって一気に加速していく。どの回転域からスロットルを開けても力強く応えてくれる。

◆「続き」はサーキットで

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

正直に言えば、試乗前は「なぜサーキットで乗らせてくれないんだ」と思っていた。190psを誇るGSX-R1000Rなら、なおさらだ。ところが、雨が降ったり止んだりする一般道を走り終えてみると、その考えは少し変わった。

低回転域から豊かなトルクを発揮するエンジン。スロットルを開けることを躊躇させない自然な電子制御。路面の荒れを受け止めながら、しっかりと接地感を伝えるサスペンション。そして、その先に控えている190psの圧倒的なパワー。この懐の深さは、サーキットだけを走っていたら気づかなかったかもしれない。

もちろん、本領を発揮する場所はクローズドコースだ。限界までブレーキングし、コーナーへ飛び込み、クリップから一気にスロットルを開けていく。そのとき、新型GSX-R1000Rがどんな表情を見せるのか!?

それは、また今度。そう編集者と約束して、今回の試乗を終えた。車体本体価格(消費税10%込み)は237万6000円。新型もやっぱり速い。でも、扱える。そして、もっとアグレッシブに走ってみたくなるのだった。

スズキ GSX-R1000Rスズキ GSX-R1000R

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『スカイライン』新型が12月公開へ! 開発期間を半減、“日産復活の象徴”はどうなる?
  2. 【ホンダ スーパーワン】CMFで“刺激”表現、『N-ONE e:』との同時開発だからこそできた差別化とは
  3. ボルボ『XC40』が表情一新、AIアシスタント「Gemini」搭載と安全技術を強化…欧州発表
  4. ホンダ『WR-V』が2027年に大幅改良か? 新顔デザイン採用、待望のハイブリッド追加も!
  5. 【フェラーリ アマルフィ 新型試乗】瓜のつるに茄子はならぬ…優雅さと獰猛さを併せ持つ走りに触れた
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【全文PDFプレカン】日産自動車 長期ビジョン発表会
  2. タイ矢崎電線のアルミ新工場がタイに完成、生産量3倍に増強…送配電網・自動車向けに対応
  3. ボッシュ、大型商用車事業の売上倍増へ…IAA TRANSPORTATION 2026
  4. スカニア、中国で新事業開発組織「VNBC」設立…電動・自動運転輸送を加速へ
  5. 全ての体格に対応する後席用新型シートベルト、ZFが2025年央発売へ
ランキングをもっと見る