プジョー『307』は、ヨーロッパではフォルクスワーゲン『ゴルフ』に代表される「プレミアム・コンパクト」と呼ばれるセグメントに属するクルマで、日本でもヒットした『306』の後継モデルにあたる。307では全高を高くして、2ボックスとミニバンを融合したようなパッケージになっているところが、外観上の大きな特徴だ。
実車を見ると、306よりかなり大きくなったように見える。が、ボディサイズは全長x全幅x全高=4210x1760x1530mmと、全高以外はゴルフ並であり、街中でも取りまわしは悪くはない。もちろん、立体式駐車場にもちゃんと入る。
306と比べると、内装など質感がよくなっていて見た目の高級感や高品質感が高まった。室内は、高い全高が幸いして同クラスの他車より空間に余裕がある。とくにゆったりとした頭上は、気分的に広い感じを与えることに役立っている。
走り出してみると、品質感の向上は見た目だけではないことがわかり、ボディの剛性感はドイツ車並に高い。サスペンションも306よりはだいぶ引き締まったが、プジョーらしいしなやかさは健在。座り心地のよい大ぶりのシートとともに、乗り心地の良さは相変わらずだ。
エンジンは2リットルの直列4気筒DOHC(137ps)のみの設定だが、1200kg台のボディに必要なだけのパワーは充分得ている。ATはマニュアルモード付だが、運転を楽しみたいなら輸入車としては貴重な設定である「MT」を選んだほうがいいと思う。右ハンドルモデルでも、かつての306のようなペダル配置に違和感はない。
今回、大きく変わったのはハンドリングだ。これまでのプジョーといえば、アクセルのオン/オフで姿勢を積極的に変化させたが、307はどこまでも4輪ががっちりと路面をつかみ続けかなりのレベルまでニュートラルステアが維持される。この味つけには好みの問題もあろうが、一般的には安心感が高く好まれるだろう。
結論としては、307は品質感でも走りでも、ゴルフとまっこうから勝負ができるクルマになったと感じた。日本に導入されているモデルでは、グレードの違いはほぼ豪華装備の差だけなので、筆者としてはもっとも安い「307XTのMT(239万円)」がベストチョイスだと思う。
《陶山拓》