【放談会2002 Vol. 5】ホンダ・北米大攻勢の真意

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【放談会2002 Vol. 5】ホンダ・北米大攻勢の真意
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三浦 今年、北米でのホンダは、『シビック・クーペ』に始まって新SUVの『パイロット』の投入、秋には『アコード』のモデルチェンジ、年末にまたまた新SUV『エレメント』の投入と、かつてない大攻勢です。その真意はどこにあるのでしょう。

牧野 アメリカがこけたらホンダは終わり。連結ベースでの利益は北米が全体の9割といわれます。だから、アメリカでとにかくシェアを取る。クライスラーを蹴落としてビッグスリーの一角を占める。トヨタも突き放したい。

安田 一時期、ホンダが窮地に立たされたときは、RVを持っていなかったんですね。

牧野 日本国内もそうですが、とりわけアメリカで盛り上がるSUVとミニバンの市場に何もタマを持っていなかったのが痛かった。90年代後半のホンダ快進撃は、オデッセイ、CR-V、ステップワゴンといったいわゆるRV、アメリカで言うところのライトトラック系が引っ張っりました。まだほんの5年くらい前の話しなんです。商品でいえば、まだ第2世代に入ったばかりのモノが多い。CR-Vがそうだし、日本ではラグレイトの名前で売っているアメリカ版オデッセイも通算で2代目です。ホンダという会社からすれば、このあたりで基盤をしっかりさせておきたいわけです。

三浦 もっと数を売りたい、と。

牧野 シビックのモデルチェンジでは、北米からは「デザインを変えるな」という声があがった。売れているクルマを変えないでくれ、ということです。お客さんの期待は売れ切れない、と。SUVのパイロットとエレメントについても、北米の営業サイドからは02年の導入という線を強く要望されていた。売れているマーケットからの要望に応えるのは当たり前ですが、とにかくホンダは北米市場を重視しますね。

三浦 アメリカでのSUVは台数的に大きなマーケットですからね。日本市場の商品計画と北米の商品計画ははっきりと切り離して考えられているのが最近のホンダの特徴ですね。

牧野 パイロットはフォード・エクスプローラーに対抗する本格的SUVであり、待望のクルマです。それより小さいクラスでは、保守的なCR-Vと独創的で若者向けのエレメントの2台でしっかり売る。かといってクーペ市場も手を抜かない。コンパクトなアキュラRS-Xの6速MTもあるし、豪華なアキュラCLもある。ホンダ/アキュラの両チャネルで、ことしはほぼ完璧なラインナップがそろうわけです。足りないとすれば、レクサスLS430およびセルシオに対抗できる高級セダンですね。

三浦 レジェンドはどこへ行っちゃったんですか?

安田 いちばん利益を出せるジャンルじゃないですか。

牧野 当初の予定なら、V8搭載FRのレジェンドがもう登場しているはずなのですが、まだ出てきません。開発中止ではなく、プロジェクトのスピードが落ちただけだと思いますが、真相はわかりません。

安田 川本社長の時代に、「ホンダがRVを作れば売れるのに、なぜ出さない」などと言われていたのは、もう昔の話だ。しかし、高級車を何とかしないと、トヨタとまともに対決できるだけの車種構成にはならない。いまのままの規模でホンダは終わりになってしまう。「これでいいや」と思っているのか、それとも高額商品を今後はそろえてゆくのか。そこは見えてきませんね。とにかく現在は、当面の仕事をこなすので精一杯なんだな。ここにホンダの危うさを感じます。

牧野 おそらく高級FRセダンまで手が回らないんですよ。ここ2年ほどでも、新しいプラットホームはシビック/ストリーム系とフィット/モビリオがあるし、アメリカ向けにはアキュラMD-X/パイロットがある。一気に商品ラインナップが拡大した。ホンダでは開発も実験も生産技術も、それはもう大変な仕事量ですよ。セルシオのようなベンチマークがあると、生半可な高級セダンは出せない。出してコケたら立ち直れない。慎重になるのはわかります。しかし、この市場に打って出ないと、日本国内だって「ウチがナンバー2です」とは言えない。

三浦 おそらく、回りがもてはやすほど、ホンダ自身は“国内二強”だなんて思ってはいませんよね。

牧野 いや、そうは思わない。

安田 少なくとも、ホンダが日産のシェアを上回ったとき、ホンダ側からマスコミに対して「ウチは2番手になりました」と盛んに告知するわけです。ただ、自動車工業会会長をトヨタ/日産の持ち回りじゃなくホンダもやるべきだと言われると、その2番手のポジションを否定する、みたいな話になる。

牧野 そこは日産さんにやっていただかないと、とね。

三浦 断るという選択もあったのですか?

牧野 いままでは断り続けて来たよ。

安田 今回は仕方なく引き受けたという事情はあるかもしれないが、僕が「ホンダは覚悟ができていない!」と感じるのは、吉野社長ではなく宗国さんが自工会会長になることなんです。吉野さんは経団連副会長ですよ。経団連副会長と言えば、その業界の代表者だ。ならば当然、自工会会長も吉野さんがやるべきなんです。しかしホンダはあえて宗国さんを選んだ。かかわりかたがものすごく中途半端です。ホンダの“顔”や覚悟が見えてこない。

牧野 そういう部分に組織の弱さが見えますね。ホンダほどの規模なら、社長がプレイング・マネジャーである必要はないのですが、本田技研と本田技術研究所の両方を吉野社長が監督しなければならないから、自工会会長なんてとんでもないわけです。話を北米に戻すと、日産はアメリカに新しい工場を建ててフルサイズ・ピックアップと大型SUVを作る。ホンダも負けてはいられないわけですよ。しかも日産は去年、新型アルティマを出してアコードを脅かしにかかった。今年は大攻勢をかけて、浮上中の日産を追い落とす。その陣頭指揮を吉野社長が取る。それが全社員の期待であり、社員はそれが当然と思っているのでしょう。そういう空気を感じるから、吉野社長も堂々と出られないのではないでしょうか。

《レスポンス編集部》

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