■結局は、得意の“先送り”
今回の政府・与党合意案をめぐって、与党道路族側は「ああいうモノになって良かった」(古賀誠道路調査会長)と喜ぶ。逆に民営化委では田中一昭委員長代理と松田昌士委員が抗議の辞任をする一方、猪瀬直樹委員らは一定の評価をするなど、意見が分かれている。
関係筋は、合意案について、「債務返済期限が民営化時点から45年間と明示されていること、さらに協議制(拒否権)を新会社に与えたことが評価できる」と解説する。
公団の償還主義でも一応、50年後に無料開放となっているが、問題は次々と新規路線が開通するたびに、50年のカウントをやりなおしてきたこと。しかも、赤字路線を黒字路線の収益で補填する「プール制」のため、本来の償還期間を過ぎた東名高速すら無料開放されていない。今回はスタート時点が「民営化時」で動かないため、2050年に無料開放の期待を持てる、というわけだ。
しかし、借金は借金だ。利用者増や新会社の収益力向上、金利水準など、最高の条件がそろわないと、45年以内で総額40兆円プラス7.5兆円の有利子負債を完済するのは難しいだろう。何せ、単純計算でも1年あたり1兆円。国内収益力ナンバーワンのトヨタの年間純利益に匹敵する額を毎年、返済し続けなければならない。
2年間、すったもんだの上に練り上げられた合意案だが、料金が1割下がっただけで、後の難しい問題は半世紀後に先送りされた印象は否めない。どうせ、先のことは現役政治家や官僚は知らんぷりなのだろうが……。
1/4■民営化形態は?
2/4■新たな道路の建設は?
3/4■で、通行料は?
4/4■結局は、得意の“先送り”