ストーカー殺人を防げなかった責任は警察に---2例目の認定

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別れ話がもつれたことでストーカーと化した元交差相手の男が故意に起こした交通事故で娘(当時20歳)を殺害された遺族が、「娘が殺されたのはストーカー行為に対する防止措置を警察が取らなかったから」として、兵庫県(県警)を相手に総額1億円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の判決が24日、神戸地裁で行われた。

裁判所は不手際を認め、県に対して660万円の慰謝料支払いを命じた。

問題の事故は1999年2月2日に発生している。同日朝、兵庫県太子町広坂付近の県道を走行していた20歳女性の運転するクルマに、対向車線から逸脱してきたクルマが正面衝突した。女性は胸などを強打して死亡。

衝突してきた側のクルマを運転していた27歳の男は、車内で自分の胸に包丁を突き刺すなどして自殺している。

この事故の裏には深刻な事件が隠されていた。死亡した2人は1997年12月ごろまで交際していた元恋人同士。しかし、交際中から男の暴力が徐々にエスカレート。身の危険を感じた女性が別れ話を切り出した。

しかし、男はこれに納得せずストーカー行為を開始。1998年6月には男が女性を殴打し、全治5日間のケガを負わせ、男は傷害容疑で逮捕されている。この際は双方で和解が成立。しばらく男のストーカー行為も収まったが、1カ月ほどで再開。以後、半年間に渡って待ち伏せや暴力などの行為が続いた。

女性はこれに耐えかね、1998年12月に警察へ告訴する意思を示した。だが、接遇した警察官は「そこまで話を大きくする必要はない。相手から誓約書を取るだけでで十分だ」と女性に言い聞かせた。結局、女性とその兄が立会いの下、交番内で男に「二度と暴力をふるわない」という誓約書を書かせた。

が、実際には誓約どおりにはいかず、男の行為はさらにエスカレート。最終的には故意に衝突事故を起こし、女性を殺害するに至った。

遺族は「警察が男に対して何の警告も行わず、事態を軽視した警察にも責任がある」として、2001年5月に兵庫県(兵庫県警)を相手に国賠請求訴訟を起こした。

女性の死から8カ月後に埼玉県桶川市でストーカー殺人事件が発生していたこともあり、ストーカーという行為を軽視する警察の対応を問うものとして注目されていた。

24日に神戸地裁で行われた判決で、上田昭典裁判長は女性からの訴えを軽視し、ストーカー行為を続ける男に何の警告もせず、防犯対策も取らなかった警察の対応を「著しく不合理で違法だ」と指摘した。

だが、警察が適切に警告を行っていた場合に女性が殺害されずに済んだかという点については、「男は自らも死ぬ覚悟で事故を起こしており、被害者の死亡を回避できたとは認められない」として、殺人に至る行為と警察の権限不行使には因果関係がないと認定した。

上田裁判長はその上で「それでも警察が被害者に対し、緊急事態発生時の連絡先を告知するなどしていれば、被害者が殺害される前に通報出来ていた可能性はある」と認め、県への賠償請求自体を有効として、県に660万円の支払いを命じた。

ストーカー殺人を巡り、警察の権限不行使を違法と認定したのは、桶川ストーカー殺人事件の一審判決に続く2例目となる。

県は判決を不服として、即日で控訴している。

《石田真一》

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