この4月に参議院で可決された道路交通法改正案は、現在、衆議院での審議入りを待っている。大きな影響を与える同法改正案は、衆議院ではどのように審議されるのか。その問題点と注目ポイントを民主党・市村浩一郎内閣委員に直撃した。
──参議院では民主党が、唯一、道路交通法改正案に反対でした。賛成に回っていた民主党が法案反対の立場に移られた理由は?
「道路交通法の改正案のいちばん大きな問題点は、放置車両の使用者に放置違反金を課す点です。法律でいう使用者とは、車検証の使用者欄に記載された人のことで、車両を運転して駐車した人のことではありません。改正案で警察は、駐車違反に実際に運転した人と実質的な所有者の両方に責任を課すことにしました」
──警察庁の意見では、駐車違反を摘発しても出頭しない違反者が多いための措置と聞いています。
「ところが、この改正は、よりいっそう違反者を特定しにくくする改悪でしかない。よりいっそう違反者が出頭しなくなる制度なのです」
──どういうことですか?
「駐車違反の摘発を受けて違反を名乗り出た違反者には、従来どおり反則金と違反点数がつきます。しかし、改正案どおり車両の持ち主に反則金と同額の放置違反金を課すということになれば、車両の持ち主が肩代わりするのは違反金だけ。違反点数はつきません。本当の違反者は、黙って車両の持ち主に放置違反金の支払い命令が来るのを待てばいい。違反点数はカウントされずにすむわけから、私が本当の違反者ですと、駐車違反を名乗り出る必要はないことになる尻抜け法案なのです」
──正直、駐車違反で反則金を取られるより、違反点数の累積で免許停止になるほうが運転者にとっては影響が大きいですからね。
「もちろん警察は、こういう脱法行為に厳しく対処するとは言うでしょうが、現状では違反した運転者を特定しにくく反則金を逃れようとする違反者が多いので、車両の持ち主にその責任を肩代わりさせるのだというのが、改正の動機でした」
──法改正で別の違反者が増えますね。
「もともと違反者が名乗りでないから法律を変えようとしているのに、改正でより悪い状況が予測されるような改正案で、警察は何を期待しているのか。よりたくさんの悪質な違反者を作り出すことが改正案の目的なのでしょうか。この一点をとっても、道路交通法改正案がおかしな改正であることがわかります」