三菱リコール問題を一気読み

エコカー 燃費

■メンツを潰された国交省の心中

三菱自動車は事件後、ハブの自主点検を開始した。捜査中だった横浜の事故原因は説明しなかったが、同年2月以降に発生したタイヤ脱落事故については「増し締めしていなかったり、ナットの締め付けすぎなど整備不良が原因」と説明していた。

国交省のリコール対策室は「脱落はハブの設計に問題があったのではないか」と同社を再三にわたって問いつめたが、三菱はかたくなに「設計に問題はない」と言い張った。その結果があくまでも自主的な点検と交換となったわけだ。当時の自動車交通局長は02年2月、「適切な対応をされたと考えている」とさえコメントしている。

「一件落着」と思っていた国交省に激震が走ったのは警察の立件方針が伝わった03年秋。結果的にリコール隠しを見抜けなかった国交省の幹部は「何を言ってもグチにしか聞こえないだろうが、当時は三菱に自主的にでも対応させた。これが結果的に道路交通の安全確保につながっていると思う」と話す。

それでも、三菱に“煮え湯”を飲まされたことに変わりなく、国交省はこれを機にリコール対応を大幅に強化する方針。メーカーに嘘をつかれても見抜けるよう、自前の技術検討会などを設置し、必要に応じて再現実験も行っていくという。

■出るわ出るわ、100万台近く

今年3月24日、観念した三菱ふそうトラック・バスは、ついに横浜の事故を引き起こしたハブのリコールを届け出た。当然ながら「他にもあるだろ」という疑問がわく。

国交省の指示もあり、三菱ふそうと三菱自動車は過去の不具合を再調査することを表明。結局、ふそうは47件・58万台、三菱自は36件・37万台分の不具合が見つかった(一部は過去に改修済み)。

台数の多さは前代未聞だが、これに対する罰則はというと、ハブの件で道路交通法違反(業務上過失致死)と道路運送車両法違反(虚偽報告)で当時の幹部7人が逮捕されたほかは、国交省がリコール隠しを東京地裁に通知し、過料(行政上の罰金)を求めるだけだ。もっとも、相次ぐ不正報道でスリーダイヤの威光は地に落ち、市場からは厳しい“処分”を受けているのだが…。

■変わらなかった企業体質

2000年のリコール隠し事件を契機に、再生を誓ったはずの三菱自動車。しかし、結果的に隠ぺい体質は温存され、再び悲劇を招いてしまった。ふそうのポート社長にしても、三菱自の岡崎洋一郎会長にしても、“事件後の人”で、こうした質問には言葉少なだ。

関係者の話を総合すると、三菱自動車にはグループに甘え、社内では学閥や役所顔負けの“事なかれ主義”が跋扈(ばっこ)する風土があったようだ。「三菱系列の企業や下請け先が好不況にかかわらず新車販売を強力にバックアップしてくれる」(関係者)。こうした結果、社員の目はユーザーより上司に向きがちになり、歴代の社長のなかには“天皇”とささやかれる独裁者も君臨するようになる。

ちなみに先月、三菱ふそうでクラッチハウジングの破断事故を50歳代の部長級幹部が「直感的にまずいと判断した」と隠匿していたことが判明。この幹部は懲戒解雇されたが、企業風土変革の難しさを象徴している。

■きっかけは、ふそうの脱輪事故
■メンツを潰された国交省の心中
■出るわ出るわ、100万台近く
■変わらなかった企業体質
■ダイムラークライスラーも見切り、残ったのは三菱グループと再生ファンド
■系列ディーラーの苦悩、引き抜き合戦も
■バッシングも過熱…三菱側にも問題あり?
■再生シナリオは大丈夫か
■リコール隠し問題が突きつけたもの

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《編集部》

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