「走りの良し悪しは、走り始めて5分もすればわかる」と、いわれる。ところが、この『A3スポーツバック』、都内の一般路で交差点をふたつほど通り過ぎただけで、「これは、タダモノではない!」と唸ってしまった。
東名高速に乗った。3.2リッターV6のパワー感をチェックするため、軽く加速、減速を繰り返した。車線変更を何度も繰り返してみた。箱根に赴き、それなりのペースで、ワインディングを攻めた…。そして、一日を通じて思ったことは、「全然、疲れない。だから、とっても楽しい」。走行スピードを問わず、ステアリングを握る手のヒラと、腰からお尻への路面からの反力がいつも一定に感じる。その感覚が、「マイルド」かつ「スポーティ」なのだ。
アウディのイメージというと、「ガッシリ」を連想するひとが多い。それも、少々足が硬め、という感じの。A3スポーツバックは、「ガッシリ」でなく、ある程度ロールはするが「カッチリ」している。しかも、ステアリングの切り出しは、市街地でも高速でも「マイルド(単純に柔らかい、ではない)」。
こうした現象は、まずはシャーシ剛性の高さに起因する。とかく、5ドア車はセダンに比べて剛性不足といわれるが、その傾向がまったくない。リアのマルチリンクサスの制御方法。リアが必要以上に「自分で曲がろう」とはしない。ご承知の通り、ゴルフVと基本構造は共通。が、(今回はクワトロ“AWD”ということもあるが)トーイン変化はゴルフVより少ないと思う。しかも、前後スタビの硬めのフィーリングと相まって、これらが、A3スポーツバックのキャッチフレーズ「オン・ザ・レール・ドライビング」につながっている。
また、最近のコンパクトカーの(居住性重視の)背高傾向と反する、ヒップポイント低めのスポーティフォルムが、低重心&空力効果を生んでいる。そうそう、それからブレーキ踏み込みの最初のタッチが、ダイレクトでしかもマイルドな感じがいい。言葉でどんなに表現しても、この素晴らしさは文章でお伝えするには限界がある。ぜひ一度、A3スポーツバックのハンドリングを、ご自身のウデで試してみて欲しい。(つづく)