ダイハツが二酸化炭素(CO2)排出量の低減をめざしてハイブリッドカー(HV)の本格投入に踏み切った。その第1弾として登場したのが『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』だ。
HVは実用性、汎用性の高さから、クリーンエネルギー車の主役として、いまや世界から注目されるテクノロジーだ。が、『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』にはそのような華やかな装いはない。
見た目はまさに普通の1ボックス商用バンそのもので、派手なメッキのモール、フロントグリルも持たず、スチールホイールにはフルホイールキャップもつかない。ボンネットとバックドアに貼られた「Hybrid」の小さなロゴを見ない限り、ひと目でHVと識別することはまず不可能だ。ボディサイズはもちろん軽自動車枠そのままで、そのなかにモーター、バッテリーモジュール、エネルギーコントロールユニットなど、HV化にともなって増設された大型部品がパッケージされているのに驚かされる。
「地味といわれれば、たしかにその通りかもしれませんね。HVとわかるような外見上のデコレーションはほとんどありませんし、注目度の高い乗用モデルでもない」
『ハイゼット』シリーズ全体の開発を手がけた製品企画部の鈴鹿信之さんは語る。
「ダイハツにとってHVとは、まさに“縁の下の力持ち”。大切なのはハイブリッドであるか否かではなく、CO2削減にどれだけ役立つかどうかだと思っています。そこで、まずは商用車からハイブリッドを展開することにしたんです」
軽商用車の使用環境は、乗用車とは比べものにならないほど過酷である。1ボックスバンの最大積載量は2名乗車時で350kgだが、ビジネスユースでは満載状態での走行はざら。さらに“過積載”状態での使用も珍しくない。車両重量+フル積載、さらに燃料満タンともなると、総重量は1.4トンをゆうに超える。それだけの重量物を660ccエンジンで引っ張るためには、レブリミットまでの全域が常用ゾーンだ。
「軽商用車の燃費は、正直いって非常に悪い。10・15モード燃費はATでだいたい15km/h前後ですが、貨物を満載し、全開加速もしばしばといった運送業者の使用パターンではその半分、せいぜい8km/h程度がせいぜいです。商用車は年間走行距離がとても長いだけに、ハイブリッド化で燃費を改善できれば、CO2の削減効果もかなり大きいものになります」(つづく)