【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その1

自動車 社会 社会
【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その1
【伊東大厚のトラフィック計量学】後席シートベルトと法規制 その1 全 2 枚 拡大写真

“おじいちゃん、うしろの席でもシートベルトしようね”

これは、9月に実施された、秋の全国交通安全運動のキャッチフレーズである。(図1)後席シートベルトの着用推進が安全運動のメインテーマとなったのは、政府が今春、交通安全対策の重点のひとつに位置づけたためだ。

◆低水準の後席シートベルト着用率

我が国のシートベルト着用率は90%以上であり、欧米諸国と比べて遜色ない水準にある。ただし残念ながら、運転席と助手席(80%以上)に限った話だ。チャイルドシートは50%前後、後席にいたっては8%に留まり、低水準なのが現状だ。

図2に、日本のシートベルト着用率の推移を示した。前席は、普及・定着したと見てよい。チャイルドシートも、2000年のドライバー(=保護者)に対する罰則導入がきっかけになり、50%程度まで向上してきた。しかし後席は、現在でも「運転者の努力義務」と、法規制が緩やかなこともあって、相変わらず低水準が続いている。

◆後席なら安全?

法規制が緩やかなことに加え、“後席なら安全”、と誤解している人も少なくない。JAFは2002年、ユーザー調査の中で、ドライバーが後席シートベルトをしない理由を調査した。(いずれも複数回答)

回答の上位には、「装着しづらい」(42%)、「面倒」(37%)、「窮屈」(34%)が挙がっているが、「違反点数がつかない」(30%)、さらに「事故時の危険性が低い」(18%)を挙げた人も少なくない。 また“後席なら安全”と考えている人は、60歳以上では25%になる。高齢者層の4人にひとりが、誤解しているのだ。冒頭紹介したキャッチフレーズは、こうしたことが背景になっていると思う。

後席シートベルトをしていなかった場合の事故例や衝突実験では、後席の乗員が前席を飛び越え車外に投げ出される、前席の乗員にぶつかって危害を加えるなど、“後席なら安全”は、誤解に過ぎない。

◆継続的なキャンペーンが必要

英国では、ベルトをせず後席に座った息子が前に投げ出され、ドライバーである母親も
大怪我をするという、いささかショッキングなテレビCMを放映したことがある。後席シートベルトをしないと、同乗者にも危害を加えること、保護者のモラルに訴えることを狙いとしたものだ。後席シートベルト着用普及のためには、まず継続的かつ効果的なキャンペーンを打つ必要がある。

  1. 1
  2. 2
  3. 続きを読む

《伊東大厚》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  2. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  3. 【マツダ CX-60 XD SP 新型試乗】やっぱり素のディーゼルが一番…中村孝仁
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】スライドドア採用にカスタム廃止、大胆進化のムーヴ「四角く見せたくなかった」動きのデザインとは
  5. 「内装は100点満点」フランス生まれの新型プレミアムハッチ『DS N°4』にSNS注目!「いい、凄くいい」の声
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る