強豪ひしめく市場に果敢に挑む
スズキがロシアへの工場進出を決めた。日本企業ではトヨタ自動車、日産自動車に次ぐ3社目と決断は早かった。
スズキの海外展開は、上位メーカーとの競合を避け、インドに代表される独自の市場開拓を進めるのが要諦だった。ロシア進出は、強豪がひしめく市場に果敢に挑むことになるが、新興国で実績のある同社のオペレーションが注目されることになろう。
トヨタや日産と同じサンクトペテルブルグに建設するロシア工場は伊藤忠商事との折半出資で、投資額は140億円。2009年後半から、同社のグローバルカーとしての存在感を高めている『グランド・ビターラ』(日本名『エスクード』)と『SX4』を初年度5000台の生産でスタートする。
急成長が続くロシアの乗用車市場は、昨年約180万台に達し、BRICsの中では中国に次ぐ規模に拡大した。米フォードモーターがすでに現地生産を開始したほか、今年から08年にかけて独VW(フォルクスワーゲン)、トヨタ、米GM(ゼネラルモーターズ)も順次、工場を稼動させる。
◆歩いてきた「裏道」は今や「表街道」に
自社を「中小企業」と任ずる鈴木修会長が「大手さん」と呼ぶ強豪各社と肩を並べて現地進出することになる。スズキの4輪海外工場は、83年に生産開始したインド(マルチ・ウドヨグ社)、93年に進出したハンガリー(マジャールスズキ社)が主力となっている。
進出した当時には同業他社が目もくれなかった国々だが、「大手さんが先進国に出られたので、ウチは『裏道』を歩いてきた」(鈴木会長)。しかし、今や両国とも拡大する内需や西欧への供給拠点として自動車産業が集積する表街道となってきた。
◆5万台から始めて今日がある…
乗用車系ではスズキのシェアがほぼ5割のインドは、年60万台を超える大工場に育った。鈴木会長は「種を蒔いて実を結ぶには10年から15年かかる。インドも83年に5万台から始めたから今日がある」と、新興国での成功には忍耐が欠かせないと説く。
ロシアも5000台からのスタートで、近い将来の目標も3万台と控えめ。今回は進出一番乗りとはいかず、強豪ひしめくなかでの工場立ち上げとなるが、新興国での成功のノウハウは他社にない大きなアドバンテージになるはずだ。