大矢アキオ『喰いすぎ注意』…とろけるフィアット

自動車 社会 社会
大矢アキオ『喰いすぎ注意』…とろけるフィアット
大矢アキオ『喰いすぎ注意』…とろけるフィアット 全 8 枚 拡大写真
2
謎のチョコレート

ところでボク自身といえば、11年前イタリアに住み始めた当初から気になっていたFIAT商品があった。つまり一連のライセンス商品ブームよりずっと前である。何か? といえば、『FIAT』チョコだ。

横丁の何気ないお菓子屋さんで売られている。復活祭の時期には、ちゃんと当地の習慣にしたがって卵型バージョンも発売される。製造しているのは、マイヤーニ(Majani)という会社である。

だが包装には「フィアットのライセンスにより……」といったような表記は一切ない。なんとも不思議な一品だった。

今年春先のことである。トリノ市街でチョコを題材にしたお祭りがあった。すると、あのマイヤーニも出展していているではないか! ちゃんとFIATチョコシリーズも並んでいる。結構な人気だ。

客足が一瞬途切れたのを見計らって、ボクは恐る恐る店員さんに聞いてみた。「あのー、どうしてFIATなんですか?」すると、ダニーラさんというお姉さんは面倒くさがるどころか、誇らしげに教えてくれた。「うちは1796年創業。FIATチョコは20世紀のはじめに、新型車発表の景品として作ったのが始まりよ」

後日調べたマイヤーニ社の歴史で補足すると、1910年にフィアット『ティーポ4』発表の際の引き出物として誕生したそうだ。まあ、当時クルマを買える層は限られていて、発表会に来る人もそれなりの人だったろう。しかし、今でいえば週末試乗会の景品「じゃが玉カレーセット」「天然水」かもしれない。

ちなみに1910年は、フィアットが創業して僅か11年めだ。日本でいえば楽天くらいであり、事実当時の自動車産業もベンチャー企業だったに違いない。

ところでマイヤーニ社は、フィアットのお膝元トリノではなくボローニャの会社だ。「トリノとボローニャの間は340kmあるわ。今日アウトストラーダを使っても遠いのに、その昔トリノのフィアットから指名されたっていうのは、マイヤーニにとって最高の名誉よ」。ダニーラさんの顔は、誇らしげだった。
  1. «
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 続きを読む

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. トヨタ『ライズ』がカラフルに変身!? フルーツがテーマ『ハバナ フルーティーポップ』、キャルズモーターが発売
  2. 一人乗りマイクロEV「EQV-TREK」発売、355kgの軽量ボディで航続110km…107万8000円から
  3. 新型取締機「JMA-520/401」に対応、セルスターがコンパクトな一体型レーダー探知機を発売
  4. 「TWIN TURBOのロゴ懐かしい!」Z32ファン感涙、レトロ感あふれる新型『フェアレディZ』が話題に
  5. 世界初、個人所有できるレベル4自動運転「ロボカー」誕生、2026年に納車開始
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る