野村総合研究所は、今年8月から9月にかけて「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」を実施してその結果をまとめた。
対象は、海外3か国以上に事業展開し、かつそのうち1か国以上が新興国である日本の製造業。
結果、日本企業にとって新興国は、開拓余地の大きい市場ではあるものの、販売網整備、価格競争力強化、戦略策定が課題となる市場であり、現地人材を活用するためには、給与だけでなく、将来のキャリアパスを示すことが重要であるとしている。
連結の海外売上高に占める新興国での売上高比率を聞いたところ、84.8%の企業は、その比率が30%未満だった。新興国市場での自社製品・サービスのブランド力については「現地市場に参入したばかりであり、製品・サービスが浸透していない」をあげる企業が47.6%だった。日本企業にとって新興国は、今後の開拓余地が大きい市場であると分析。
企業が最重点と位置づける新興国市場での事業展開の問題点を聞いたところ「販売網が構築できない」や「現地市場における価格競争力がない」、「現地市場をどのように攻めるか、戦略が明確でない」などの意見が多かった。販売網を構築できないのは、販売する製品・サービスの知名度が低いことを理由にあげる企業が最も多く、また、製品・サービスの価格競争力が弱い理由は、製造コストの高さや、製品・サービスの仕様のレベルが現地のニーズに比べて高いことが主な理由だ。
人材については、経営幹部人材の採用に苦労している企業が87.1%と多い。理由としては、現地人材の将来のキャリアパスが描けないことが一番多く、次に期待する能力を持つ人材が見つからないことがある。
一方で、現地拠点で最も定着率が悪いのは、現場ラインの人材と回答した企業が67.9%だった。その理由として、給料が他社より安いことや経営幹部人材と同様に、将来のキャリアパスを描けないというケースが多い。
現地人材のジョブホッピングは、働く側だけの問題ではなく、現地拠点の抱える問題と推察されるとしている。